30年で二輪車用ABSは驚異的にコンパクトで高性能になった
実はボッシュの二輪部門である「モーターサイクル&パワースポーツ事業部」のグローバル本部は横浜に置かれていて、日本を拠点に最先端技術の開発が行われているのですが、今年でちょうど10周年。不幸な事故を抑止するための大事な機構・ABSもここ日本で進化し続けているのです。

ボッシュ株式会社の二輪部門・モーターサイクル&パワースポーツ事業部のプロジェクトマネージャーのお二人。左は中野良二さん、右はトーマス・マウラーさん。もちろんお二人とも大のバイク好き!
二輪車の事故で亡くなるライダーは世界で約550万人もいるそうですが、ボッシュの調べによると、ABSは二輪車事故の件数の約3分の1を防止してくれているのだそうです。最新のABSが大きく進化している、というのは想像がつくのですが、30年前に最初の二輪車用ABSと最新のABSでは何がどう違うのでしょうか? プロジェクトマネージャーのマウラーさんに聞きました。

これは第1世代のABSユニット。油圧ユニットが大きく、車体の別の場所にマウントしたコンピューター(コントロールユニット)とケーブルで接続されていた。
「一番違うのはやはりサイズですね。ボッシュが開発した二輪車用のABSを初めて搭載したのはカワサキのGPZ1100でしたが、当時はユニット自体を四輪用のものから転用していたため、ABSユニット自体がとても大きく、二輪車に搭載するのも大変でした。コントロールユニットの指示を受けてブレーキを駆動する油圧ユニットも非常に大きかったため、液圧を維持するために必要なブレーキフルードの量も非常に多く必要でした」

ARAS(先進ライダー支援システム)に対応する最新のABSユニット。油圧ユニットが驚異的にコンパクトになり、別体だったコントロールユニットは油圧ユニットと一体化されている(写真の黒い部分)。
「進化を重ねていくことで油圧ユニットも非常にコンパクトになりましたし、コントロールユニットのコンピューターも基板がとても小さくなったことで、このように油圧ユニットと一体化することが可能になり、システム自体を大幅に小型化できるようになったため、スペースの限られる二輪車への搭載もずっと容易になりました」
「もちろん、ABSの性能も飛躍的に向上しましたしが、ライダーが感じる作動フィーリングも全然違います。初期のものはブレーキのオン・オフがラフで、ABSが作動すると車体がガクガク動く感覚をライダーは感じていましたが、最新のユニットではABSが作動していること自体を感じさせない自然なフィーリングを実現できています」

二輪車用ABSユニットの第1世代とARAS対応の最新ユニットとの比較。圧倒的なサイズの違いがお分かりいただけるだろうか。
安全で快適な走りを支える先進のテクノロジー

ボッシュが誇る最新の二輪向け先進運転支援システムがARAS(Advanced rider assistance systems)。最近その名前をよく聞くようになったACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)がその代表例になりますが、ボッシュはそれ以外にもさまざまなアシスト機構を開発しています。

EBA(エマージェンシー・ブレーキ・アシスト)
緊急制動時にライダーのブレーキ入力が足りない場合に作動。バイクが走行状況を検知して、ブレーキユニットの液圧を上げ、必要な制動力を確保できるようライダーをサポート、同時にメーターでも警告を表示する。

RCW(リア・コリジョン・ワーニング)
写真:南 孝幸
緊急制動時にライダーのブレーキ入力をアシストしてくれる機構・EBA(エマージェンシー・ブレーキ・アシスト)や、後方から急接近する車両に接近を警告してくれる機能・RCW(リア・コリジョン・ワーニング)など、ライダーが安心して快適に走行できるためのデバイスを日夜開発しているのです。昨年私たちもそんなARASの先行体験試乗をしてきましたが、こうした安全運転支援技術は、これから登場する各社のニューモデルに順次投入されていくそうなので楽しみです。

レーダーセンサーやIMUなどを使ったセンシング技術を磨いていくことで、ライダーのスキルに関係なく、不幸な事故のリスクを下げ、快適にバイクを楽しめる技術を創り出してくれているボッシュ。日本を拠点に生まれる、ライダーを支える新技術にこれからも期待は膨らみます。
まとめ:松本正雅