先日お伝えしたとおり、KTMグループことピーラー モビリティは今月23日までに約6億ユーロ≒980億4,450万円を調達し、債権者への支払いにあてないといけませんでした。はたしてどのように資金を調達するのだろうか・・・と多くの人が心配していましたが、またまたインドのバジャジが資金を提供することとなり、KTMグループの事業はとりあえず継続が可能になりました。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2025年5月24日に公開されたものを一部編集し転載しています。

S.ピーラーは、6月にピーラー モビリティAG取締役会を辞任とのこと

去る2月25日、KTM AG、KTM コンポーネンツ GmbHなどのKTMグループ企業は、再建計画承認の対価として約6億ユーロを債権者に5月23日まで支払うことを約束しました。しかし再度の生産停止や、ボンバルディア(BRP)による買収のウワサなど、あまり好材料がなさそうなKTMグループのこれからを案じる声は多く、一体誰が救世主になるのかが話題になっていました。

支払い締切の前日である5月22日、ピーラー モビリティはバジャジが資金提供という救いの手を差し出してくれたことをリリースで公表しました。BAIHBV(バジャジ オート インターナショナル ホールディングスB.V.)はKTM AGに4億5,000万ユーロ、ピーラー モビリティAGに1億5,000万ユーロを追加融資するとのことで、なんとかKTMグループは支払いに必要な残高を口座に残すことができたわけです。

なおBAIHBVは、去る2月21日にバジャジ オートから1億5000万ユーロの投資の承認を受け、そのお金でKTM AGの株式を増やしています。BAIHBVがKTMグループの株式を最初に所得したのは2007年のことですが、それ以来バジャジは資金提供やKTM製モデルの開発、製造、販売など、深いパートナーシップをKTMグループと結んできました。

画像: バジャジはKTMグループのほか、トライアンフともパートナーシップを結ぶインドの大メーカーです。 www.bajajgroup.company

バジャジはKTMグループのほか、トライアンフともパートナーシップを結ぶインドの大メーカーです。

www.bajajgroup.company

かつてピーラー モビリティCEOだったステファン ピーラーは、今年6月にピーラー モビリティAG取締役会を辞任することも併せて公表されました。ちなみにS.ピーラーは、ピーラー インダストリーAG取締役でピーラー モビリティ監査役会議長のステファン ゼヒリング(マフラーメーカーのレムスCEO)と株式売却絡みのことで現在モメております。

1992年の"最初"の倒産後、KTMはフサベル、WPサスペンション、ハスクバーナ、ガスガス、MVアグスタなどの企業を傘下におさめ、ブランドの価値を倒産以前よりはるかに引き上げることに成功しました。S.ピーラーはその偉業の貢献者に他ならないですが、上述の紛争はKTMグループの再建が先行き不透明に感じさせる大きな要因になっています。今後のために、スッキリ解決してほしいですね。

とりあえず、ひとつの危機はクリアしましたが・・・

ともあれ、5月23日までの支払いの件をKTMグループは乗り越えましたが、再建の道は平坦なものではありません。サプライチェーンの問題による7月27日までの生産停止は、今年の売り上げに大きく影響するでしょう。また、KTMブランドのメインマーケットは欧州ですが、それに次ぐ北米市場についてはトランプ大統領による理不尽な関税問題が立ちはだかっています。もし関税問題が北米市場の売り上げの足を引っ張ることになると、それはKTMグループにとって致命的なダメージになる可能性があります。

画像: バジャジ オートのウェブサイトは、KTMとバジャジの結びつきを詳しく紹介するページを設けています。 www.bajajauto.com

バジャジ オートのウェブサイトは、KTMとバジャジの結びつきを詳しく紹介するページを設けています。

www.bajajauto.com

バジャジがここまでKTMグループに肩入れするのは、長年パートナーシップを結んできた相手に対する想いも当然あるでしょう。一方で、冷徹なビジネスの目線では、長年のKTMグループに対する資金投資を無駄にしたくないという、利益を追い求める企業として当たり前の判断もあると思います。

オフロード、オンロードのモータースポーツ発展に、多大な貢献を果たしたKTMブランドが今後も残り続けることができるかどうかの鍵は、おそらくインドのバジャジが握っているのかもしれません。今後の動向に注目したいです。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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