以下、文:ノア セレン/写真:関野 温
カワサキ「メグロ K3」VS ロイヤルエンフィールド「ショットガン650」|比較インプレ

Kawasaki
MEGURO K3
総排気量:773cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:790mm
車両重量:227kg
税込価格:140万8000円

ROYAL ENFIELD
SHOTGUN650
総排気量:648cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:795mm
車両重量:240kg
税込価格:97万4600円〜101万5300円
味付けは違うけれどシッカリ煮込まれた2台
同じ空冷バーチカルツインと言っても2台はかなり違う。見た目も乗り味も伝統的でありながら普遍的な魅力に溢れるメグロに対して、クルーザーテイストながらモダンで今風のショットガン。「正統派テイスト&高級感」VS「ちょっとヤンチャな活発さ」という対比もできそうだ。
さてストリートからスタートしよう。最初に乗ったのはショットガンで、これがストリートにとてもフィットしていた。650ccとはいえかなりコンパクトな構成で足つき性はバッチリだし、メグロに比べると排気量は少ないものの6速ミッションのおかげで瞬発力があって楽しい。
低回転域でラフにクラッチを繋いでもエンストの兆しも見せずにゴロロっと動き出し、そこからアクセルを開けた時のインジェクションのセッティングが素晴らしいのは、このエンフィールドの650ccユニットを搭載するシリーズに共通する魅力だ。
元気な走りを楽しんでいる時に、ナナメ上に突き出す2本マフラーから撒き散らされる「ズダダダダッ‼」という排気音もまた独特。270度クランクから発せられるこのサウンドは、まるで旧い戦争映画に出てくるマシンガンのようだった。
対するメグロはストリートでは良くも悪くも優等生だ。どこまでもスムーズで上品なのだが、個性的なショットガンに比べるとちょっと薄味に感じるかもしれない。車体がひと回り大きいし目線も高いからどこか大人びているというか。
自ずと背筋がシャンとして、「良きライダー像」を演じなければいけないような気がしてしまうのは兄弟車のWではなく、プレミアムなメグロブランドということもあるのだろう。ストリートでの常用域ではそれなりに振動もあるものの、それもカドがなくまろやかなものだし、クラッチの繋がり感やミッションのスムーズさなど全ての操作に節度があって高級感があるのは魅力的だ。

高速道路やワインディングといったツーリングシーンになると、2台の印象が逆転する場面もあった。ちょっと極端なポジションやキビキビとした6速ミッションなどが活発さを演出しストリートでは楽しかったショットガンが、長距離となるといくらかせわしない感じがしないでもないし、首や腰への負担も徐々に感じるようになった。
ストロークの短いサスペンションはドラッグマシン的なダイレクト感が楽しめて、バンク角さえ気を付ければコーナリングも楽しいものの、長距離走行の快適性ではメグロに一歩譲りそうだ。
対するメグロは淡々としたツーリングペースで360度クランクのフレキシビリティが活きていて上品だし、それでいてハイペースへと移行してもとても楽しい。高回転域へとタコメーターを進めると振動はピタッと止んで排気量に物を言わせたパワフルさを持ってるし、5速ミッションならではの息の長い加速もダイナミック。
旧車感が溢れて早い段階でユラユラしだす車体を、ワイドでタレ角のあるハンドルの端っこを小指でキュッと握って御する感じや、車体を股の間で遊ばせておくような旧車乗りを楽しむこともできるし、運動性も驚くほど高い。
この2台は直接的なライバルではないかもしれないが、それぞれ兄弟車があることを思えば確かに競合機種だろう。エンフィールドでは同じエンジンでカフェレーサーをはじめ、ロードスター、クルーザーもあり、そして最近はスクランブラーまで加わった。
メグロは中身がほぼ同じでよりリーズナブルなW800もある。そしてシンプルでテイスティ、かつ個性もあって実用性も兼ね備えるこれらモデルは「レトロ」で片づけてしまってはもったいない総合力があるのだということも発信しておきたい。
サイズ感や車両重量も苦にならないし、突出した高性能がないからこそ付き合いやすい。だから長く愛せるカテゴリーだと思うのだ。

ショットガン650|高剛性の倒立フォークと短いサスストローク、そして低重心による地面を這うようなダイレクトなスポーティさが魅力。走り出してすぐにそれが感じられるのがイイ。ただバンク角だけは注意しましょう!