「SHOWA サスペンション」の名前はバイク乗りなら一度は耳にしたことがあるだろう。世界のバイクメーカーが採用する純正サスペンションの半分以上に装着されている日本のブランドだ。現在はアステモのいちブランドとなっている。この記事ではそのSHOWAが展開する「バランスフリーサスペンション」について詳しく紹介しよう。
文:横田和彦/写真:関野 温

Astemo(アステモ)とは?

2021年に日立オートモティブシステムズ(株)と(株)KEIHIN、日信工業(株)、(株)昭和が合併し、2025年4月1日から社名が「Astemo株式会社」に変更された。四輪、二輪のOEMサスペンションからアフターマーケットパーツまで、幅広く生産している。

ショーワ バランスフリーフロントフォーク(BFF)

画像: リザーバータンクが特徴のフロントフォークは、チタンコートしたインナーパイプがスムーズに動くよう嵌合方式を変更。安定した作動性を実現するバランスフリー構造を採用している。 ■Z900RS用 33万円

リザーバータンクが特徴のフロントフォークは、チタンコートしたインナーパイプがスムーズに動くよう嵌合方式を変更。安定した作動性を実現するバランスフリー構造を採用している。
■Z900RS用 33万円

ショーワ バランスフリーリアクッション(BFRC-lite​)

画像: ロッドにチタンコーティングを採用。一般的なサスペンションとは異なり、内部のオイル経路を独立させてピストン径を拡大。動き始めの作動性が良好で、ボトムまで安定した動きを実現している。 ■Z900RS用 19万8000円

ロッドにチタンコーティングを採用。一般的なサスペンションとは異なり、内部のオイル経路を独立させてピストン径を拡大。動き始めの作動性が良好で、ボトムまで安定した動きを実現している。
■Z900RS用 19万8000円

バランスフリーサスペンション体験試乗レポート

画像: Astemoの開発者の方に話を伺いました! 尾池 亮 氏 (左) モーターサイクル事業部 グローバル設計統括本部 CS設計本部 SU・汎用設計部 第三サス設計課 レーシングマシンの電子制御サスペンションから、中小排気量の量産車まで幅広いモデルのサスペンションを開発してきている。 松島 徹 氏(右) モーターサイクル事業部 サスペンションビジネスユニット グローバル設計本部 サスペンション設計部 第二技術開発課 バランスフリー・サスペンションのコンセプトからセットアップ、フィーリングまで、こちらの質問にていねいに回答してくれた。

Astemoの開発者の方に話を伺いました!

尾池 亮 氏 (左)
モーターサイクル事業部 グローバル設計統括本部 CS設計本部 SU・汎用設計部 第三サス設計課

レーシングマシンの電子制御サスペンションから、中小排気量の量産車まで幅広いモデルのサスペンションを開発してきている。

松島 徹 氏(右)
モーターサイクル事業部 サスペンションビジネスユニット グローバル設計本部
サスペンション設計部 第二技術開発課

バランスフリー・サスペンションのコンセプトからセットアップ、フィーリングまで、こちらの質問にていねいに回答してくれた。

走りのクオリティが向上しキャラクターが明確に!

「こんなに違う動きになるんだ!」。郊外にあるような舗装が傷んだワインディングを再現したテストコースを走ったとき、ノーマルだとハンドルが大きく振られて緊張したのだが、ショーワ・バランスフリー・サスペンションに交換した車両だと軽くハンドルを支えているだけで不安なく通過できた。

実際にツーリング先の峠道で遭遇するとドキッとするシーンだけに、サスペンションのギャップ吸収力の差を明確に体感。これだけ車体の挙動が安定し、精神的な余裕が持てるのかと感動するレベルだ。

これほど大きな差が出る理由は、ノーマルとアフターパーツでは開発条件が異なるからだ。市販車は車体価格が決まっているので、サスペンションに割り振られるコストに限りがある。開発者はその枠の中で、できるだけ良いものを目指して作るのだが、アフターパーツの場合はコストと時間をさらにかけて開発できる。

画像: これぞストファイ! スポーティな挙動がGOOD 乗り心地が良くなっているだけじゃなく、グンッと深くブレーキをかけてスパンとバンクさせるという走りも可能に。ストリートファイターらしさが際立つ乗り味になっている。写真の試乗車はカワサキZ900。

これぞストファイ! スポーティな挙動がGOOD

乗り心地が良くなっているだけじゃなく、グンッと深くブレーキをかけてスパンとバンクさせるという走りも可能に。ストリートファイターらしさが際立つ乗り味になっている。写真の試乗車はカワサキZ900。

さらにショーワはレーシングシーンからフィードバックした技術を惜しみなく注ぎ込んで内部構造から作り込んでいるので、極上のストリート用サスペンションに仕上がっているのだ。決して安くはないパーツなのだが、走行フィーリングは激変。オーナーの満足度は相当高いはずだ。

また今回の試乗で奥深さを感じたのは、セッティングでバイクのキャラクターを大きく変化させられるということ。前後サスペンションキットを組み込んだZ900は、ノーマルよりもシャキッとしたスポーティな挙動で、入力した瞬間に機敏に反応。高速走行中にはクイックな進路変更ができ、コーナー入口ではスパッと鋭く寝かし込めるのだ。

クルージング時の乗り心地を損なうことなく、Z900がもつストリートファイターらしさが強調されている。どのようにしたのか聞いてみると、フロントのイニシャルを下げてリアのイニシャルを上げたのだという。作動性を追求したサスペンションだからこそ、わずかな調整に対して敏感に反応し、走りの性格を大きく変えることができるのだ。

画像: フルボトムするまで安心して握れる! ブレーキの握り始めた瞬間の初期作動からフルボトムまで、サスペンションの動きが安定。路面状況が的確に伝わってくるため、安心してハードブレーキをかけることができる。写真の試乗車はカワサキZ900RS。

フルボトムするまで安心して握れる!

ブレーキの握り始めた瞬間の初期作動からフルボトムまで、サスペンションの動きが安定。路面状況が的確に伝わってくるため、安心してハードブレーキをかけることができる。写真の試乗車はカワサキZ900RS。

これだけ高性能なサスペンションユニットだ。装着時のセットアップや性能の維持には気を使うのではないかと思い聞いてみると「車種専用にセッティング済みなので交換するだけで大丈夫です。メンテナンスや耐久性も純正フォークに準拠していますので、同じように使っていただけます」との返事。思わずマジですか!? と言いそうになった。

高性能パーツは頻繁に整備しないと性能が落ちるというイメージがあっただけに、ノーマルと同じという言葉に驚いてしまった。普段使いできる、ユーザーに優しいカスタムパーツである。

サスペンション交換と聞くと、走り屋向けのカスタムだと考える人が多いかも知れない。しかしショーワ・バランスフリー・サスペンションは街乗りのペースでも乗り心地の良さが体感でき、高速道路では優れた走行安定性を、さらにはハイレベルなスポーツ走行でも高性能を発揮。幅広いフィールドで満足感が得られるサスペンションユニットだといえよう。

文:横田和彦/写真:関野 温

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