文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ハーレーダビッドソン「X350」インプレ(太田安治)
素直で乗りやすく走りが楽しい! 魅力にあふれたストリートスポーツ
「ハーレー」と聞けば「大排気量Vツインエンジンを持つ、大きく高価なオートバイ」をイメージするライダーが多いだろう。ハーレーはこのブランドイメージによって約100年にも渡り大型バイクの代名詞となってきた。だがビジネスの規模拡大を考えるなら、アジア圏、中でもインドや中国といった巨大マーケットに切り込んでいく必要がある。そこで誕生したのが、ハーレーとしては新カテゴリーとなる「X」シリーズだ。
X350のエンジン排気量は353ccで、日本国内では普通二輪免許で乗れる。車両重量は195kgとミドルクラスとしては特段軽いわけではないが、777mmという低めのシート高で小柄なライダーでも不安のない足つき性を確保。「ハーレー」「普通二輪免許」「良好な足つき性」という魅力に加え、70万円切りという驚きのプライスも達成。注目のアピールポイントがずらりと並んでいる。
X350のルックスはアメリカのフラットトラックレースで大活躍したXR750をオマージュしたもので、ストリートトラッカーのイメージ。引き締まった「細マッチョ」なプロポーションはとても精悍なものだ。
ライディングポジションは独特で、自然な位置にあるハンドルに対してステップは後退気味。低めのシートと合わせ、膝の曲がりがやや強いので「腰で操る」感覚を得やすい反面、同じ姿勢を長時間保つ高速道路クルージングでは下半身に負担が掛かる。足つきの心配がないライダーならシートを30mmほど肉厚にするといいだろう。
エンジンはDOHC4バルブの並列2気筒。中国のQJモータースが生産し、イタリアンブランドのベネリにも搭載されている信頼性の高いユニットをベースに、ハーレー独自のセッティングを施してある。
最大トルクを7000回転で発生する高回転型特性と195kgの車重ゆえに、発進時のスロットル/クラッチ操作に気を使うかな…と乗る前は想像していたが、あっけないほどスルスルと動き出す。これは独自のECUセッティングに加え、低回転トルクを得やすい360度クランクの採用が効いている。フラットなパワー感と連続した排気音による、大排気量エンジン的なフィーリングは大きな魅力だ。しかも、引っ張れば1万1000回転あたりまで頭打ちせずに伸びていく小気味よさも備えている。
ハンドリングは日本ブランドの400ccネイキッドモデルよりもダイレクトで、ハンドル操作に素早く反応して向きを変える。しかも前後サスペンションの動きがしなやかで、加減速やコーナリングGによる車体姿勢変化が穏やかだから、ストリートライディングが楽しくて快適だ。高速道路レベルの速度域になると安定感が増し、路面ギャップや横風といった外乱の影響も受けにくく、やや硬めのシートの座り心地が気にならなければ長距離ツーリングも快適にこなせる。
設計はアメリカ、生産は中国、ということから日本ブランド車とは異質な乗り味を想像していたが、実際は素直で乗りやすいオートバイ。ビギナーにもベテランにも薦められる仕上がりになっている。
ハーレーダビッドソン「X350」カラーバリエーション
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