2024年型・新Scrambler1200シリーズは、水冷1200ccボンネビルエンジンを搭載し、正当なモダンクラシックスポーツモデルに対しバックヤードカスタムカルチャーを色濃く反映したかの様な「スクランブラー」スタイルを構築している。
 
エンジンは、ボア径50mmの新型スロットルボディと、新型エキゾーストヘッダーパイプを採用し、5000rpmからレッドゾーンの高回転域まで出力向上を図っている。90Psの最高出力を発生させる回転数は7500rpmに、また110Nmのピークトルクを4250rpmで発生させる設定とし、オーバーリッターサイズのクラシックスクランブラーモデルの個性にマッチさせたパワーマネジメントと演出となっている。
 
Scrambler1200シリーズは2モデルを用意。スクランブラーモデルとしてリアルに走破能力を高めたScrambler1200XEと、本格のスクランブラースタイルを彷彿させストリートでの扱いやすさや気軽さを追求したScrambler1200Xだ。どちらもどことなくクラシカルな雰囲気を纏うものの、造りは現代的パフォーマンスパーツで固められている意欲作だ。また、スタンダードのスポーツモデルから派生したモデルではなく、スクランブラーとしての個性を引き上げるためにフレームは専用設計となっている。
文:山口銀次郎/写真:岩瀬孝昌

トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

画像: TRIUMPH Scrambler 1200 XE 2024年モデル 総排気量:1197cc エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒 シート高:870mm 車両重量:231kg 税込価格:208万8000円~212万7600円

TRIUMPH
Scrambler 1200 XE
2024年モデル

総排気量:1197cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:870mm
車両重量:231kg

税込価格:208万8000円~212万7600円

リアルスクランブラーを具現化したXEは、以前の記事で紹介したTIGER900 Rally-Proと同じ採石場での試乗となった。どういったシチュエーションだったかはTIGER900 Rally-Proの試乗記をご覧いただきたい。

画像1: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

足回りはオフロードに特化したセットアップが施され、前後ともに250mmものホイールトラベルを確保したマルゾッキ製が採用される。フロントフォークはφ45mmのカートリッジ式倒立フォークをチョイス。リアショックは、ピギーバックリザーバータンク採用のツインタイプを装備。XEでは、前後共にプリロードからコンプレッション&リバウンドが調整可能となっている。

画像2: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

驚異のロングレッグスタイルは、オフロードでの走行性能を高めた本気度合いが伺える仕上がりに。とはいえ、かなりハードルの高い路面状況下なので、XEでの走行も輪をかけて慎重にならざるを得なかった。穏やかな水冷ツインの特性とはいえ、オーバーリッターの心臓を抱えるモンスターマシンであることは間違いなく、ラフなスロットル操作では、タイヤのグリップ力は簡単に破綻するといったパターンはTIGER900 Rally-Proと同じだ。

画像3: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

XEは、幅広いストローク量のリアホイールトラベルを誇るものの、リンク式のモノショックタイプと比べると一辺倒な衝撃吸収性(厳密には二次曲線的な反発力)となり、その反動で常に重量物であるエンジンの存在を強く感じるフィーリングとなっている。この如何にも大きなエンジンを抱え振り回している手応えは、ある意味不整地での乗りこなす醍醐味なのかもしれない。伝統的なツインショックのスタイルはXEを構成する上で大きなファクターとなっている。その拘りの構成によりクラシックバイクならではのフィーリングを生みながら、それぞれの現代的で高度な能力を発揮するパーツにより、走破能力を高めているといった、良い意味でのアンバランス感が絶妙である。

画像4: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

もちろん不安になる様な、バランスを崩した走破性や操安性は皆無であると強く言いたい。むしろハンドリングはとても素直で、高度なテクニックを必要とせずに不整地を進行出来るパッケージとなっている。そんな高い安心感を生むのは車体や足回りのお陰だけではなく、エンジン低回転域から湧き上がるコントローラブルな太いトルクの演出による影響も大きいことだろう。

画像5: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

スロットルをワイドに開ければ、クラシカルな空冷フィン付きエンジンの雰囲気に似つかわしい、エキサイティングかつ獰猛さを発揮する。無論、この採石場では虚しくスリップするだけだが、分厚く太いトルクは大ウエルカムである。エンジン5000回転あたりまでのツキは大変穏やかで、ふんわり微量なスロットル開度でも太いトルクが発生しリアタイヤのグリップ力を確保しながら推し進めてくれるのである。

画像6: トライアンフ新型「スクランブラー1200XE」インプレ

ただし、不整地を気持ち良く走行するためには、直進安定性重視のオフロードモデル寄りの車体姿勢故に、積極的なボディアクションや荷重コントロールが必要となっている。オフ車を扱う様な、また丁寧なライディングテクニックを要するトライアル車遊びにも似た充実感がこの上なく楽しかった。正直、もう少しハードルを下げた路面や、整備されたオフロードコースや林道に持ち込み、期待値の高い足回りを存分に堪能したくなっていた。 

トライアンフ新型「スクランブラー1200X」インプレ

画像: TRIUMPH Scrambler 1200 X 2024年モデル 総排気量:1197cc エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒 シート高:820mm 車両重量:229kg 税込価格:186万2000円~190万1600円 ※撮影車両はアクセサリー装着車

TRIUMPH
Scrambler 1200 X
2024年モデル

総排気量:1197cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:820mm
車両重量:229kg

税込価格:186万2000円~190万1600円

※撮影車両はアクセサリー装着車

ワイルドかつアクティブな印象の強いScrambler1200XEのイメージを投影しながら、ストリートモデルとして扱いやすくフレンドリーな仕様としたのがScrambler1200Xだ。ある意味振り切ったロングレッグ仕様のXEよりも、往年のスクランブラー仕様にバランス的には近い仕上がりかもしれない。

ワイヤースポーク仕様のホイールは、フロント21インチ、リア17インチの設定はXEと同仕様。大きな違いは、前後共に170mmのホイールトラベル設定の足回りだろう。他のトラディショナルストリートモデルと比べれば、十分にホイールトラベルを確保したロングレッグ仕様で、正々堂々「スクランブラー」を名乗れるスタイリングとなっている。だがXEがスクランブラーとして振り切りすぎているので、やたら落ち着き払ったストリートモデルの佇まいにも見えてしまった。

画像1: トライアンフ新型「スクランブラー1200X」インプレ

試乗は一般公道で行われたが、TIGER900GT−Pro同様に時間に限りがあり、じっくり仔細を把握するまでの走行が叶わなかった。とはいえ、採石場を走行した際の古き良きオフロード車の持つ車体姿勢や特性に気づいていたので、その特徴の違いに注目してみた。

XEと比べ、車高で約60mm低く、約80mmショート化された前後ホイールトラベルといった違いは、車体姿勢に大きく影響するものだ。車体に跨り走り始めるまでは全く別物の車体姿勢が構築されており、明らかなトラディショナルストリートモデルのフィーリングであると認識したのだった。だがしかし、走れば走るだけ、コーナーをひとつまたひとつクリアする度に、XEに感じた古き良きオフ車気質のイメージが強くなるではないか!

画像2: トライアンフ新型「スクランブラー1200X」インプレ

ストローク量は前後共にショート化されているものの、タンデムライダーや積載物、はたまた高速巡行を視野に入れた、コシの強いストリート仕様にセットアップされているのかもしれない。しかも、XE同様のワイルドな21インチフロントホイールを装備し、寝ているフォーク角が及ぼすおおらかなハンドリング特性と高い直進安定性は正に、舗装路上を疾走する往年のオフ車である。エンジンの存在感はとてつもなく大きいが。そうそう、そのエンジンとオフ車テイストのアンバランスさが……。デジャブの様に、また繰り返して記してしまうところだった。

ストリート仕様だからと乗りやすさや扱いやすさばかりを追わずに、しっかりスクランブラーとしての面白みのあるフィーリングをガッツリ活かし、また少々の不整地走行もいとわない懐の深さも備える、ある意味欲張りな仕上がりとなっていた。

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