MotoGP2024年シーズン開幕まで1カ月あまりとなった1月22日、ドゥカティのワークスチームであるDucati Lenovo Teamが2024年型マシン「デスモセディチGP24」を発表した。2年連続でライダー、チーム、コンストラクター部門全てを制し3冠達成。さらにWSBK(スーパーバイク世界選手権)やWSS(スーパースポーツ世界選手権)でもタイトルを獲得するなど、2023年はドゥカティにとって大きな成功を収めた年となった。3連覇を狙う王者が今年も強力なパッケージでシーズンを見据えている。

ライダーラインナップに変更なし! 磐石の体制でドゥカティ史上初の3連覇へ

画像: 新型デスモセディチGP24。

新型デスモセディチGP24。

ローンチイベントではニューマシン「デスモセディチGP24」がお披露目された。赤と黒のカラーリングに変更はなく、ライダーも昨年と同じくフランチェスコ・バニャイアとエネア・バスティアニーニの強力なラインナップを継続する。

ドゥカティに初の栄冠をもたらした偉大なチャンピオンであるケーシー・ストーナー以来、11年ぶりにゼッケン1を身につけたバニャイア。7勝を含む13度の表彰台を獲得し、昨年から導入されたスプリントレースでもトップ3でのフィニッシュが13回と、ディフェンディングチャンピオンらしい安定した成績を残した。圧倒的なスピードで最後の最後まで食らいついたホルヘ・マルティンを下し、2022年に続き2度目の最高峰クラスでチャンピオンに輝いた。

画像: 今季もゼッケン1をつけて走るバニャイア。

今季もゼッケン1をつけて走るバニャイア。

これまで速さはあるが転倒も多かったバニャイア。しかし、昨年は優勝を狙えない場合はターゲットをポディウムフィニッシュに切り替えるなどチャンピオンを見据えた走りが印象的だった。前半戦のノーポイントにより大きなアドバンテージを抱えながらも、中盤戦から後半戦にかけて勝ち星を重ね大逆転した2022年に比べて「戦い方」「勝ち方」を知った印象。

画像: 3年連続チャンピオンを狙うフランチェスコ・バニャイア。

3年連続チャンピオンを狙うフランチェスコ・バニャイア。

元々あった速さに加え、チャンピオンの「したたかさ」や「引く勇気」を身につけた王者は2024年もライバルの壁として立ちはだかるに違いない。

そんな現チャンピオンのチームメイトを務めるのが、2023年ワークス入りしたバスティアニーニだ。2022年、ドゥカティのサテライトチームであるグレシーニ・レーシングから参戦したバスティアニーニは開幕戦で初優勝を挙げると、この年4勝をマークしランキング3位を獲得。この活躍により、2023年からドゥカティワークスの一員となった。

大きな期待が寄せられていたバスティアニーニだったが、開幕戦で転倒に巻き込まれ肩甲骨を骨折し、長期離脱を強いられた。その後も怪我が続いた上に、23年型マシンとのマッチングがうまくいかなかったこともあり、ランキング15位と苦しいシーズンとなってしまった。

画像: ワークス2年目のエネア・バスティアニーニ。

ワークス2年目のエネア・バスティアニーニ。

それでもシーズン終盤の第18戦マレーシアGPで優勝を挙げ、持ち前の速さをアピール。苦しい中でも優勝できたことは残留に対して大きな後押しとなったことだろう。チャンピオン経験者とそうでないライダーの差は大きいが、バスティアニーニがバニャイアに劣っているかと言えば決してそうではない。1週間後に控えるマレーシアのセパン・サーキットで行われるシェイクダウンテストでセッティングを見つけ出し、怪我なく前半戦を乗り切ればチャンピオン争いも夢ではない。2015年のホルヘ・ロレンソとヴァレンティーノ・ロッシ以来、久しく見られない同門対決。もしかすると2024年はドゥカティワークスの2台が演じてくれるかもしれない。

ストップ・ザ・ドゥカティ!? 今季適応される制限はどのような影響を及ぼすのか

MotoGPでは勝利を挙げていないメーカーに与えられる優遇措置、コンセッションが存在するが、2024年から新たなコンセッションが導入されることになった。

新しいコンセッションは『シーズン最初のイベントから最後のイベントまで』、そして『サマーテスト禁止後の最初のイベントから、次シーズンのサマーテスト禁止前のイベントまで』の2つの期間内に得たポイント数によりAからDの4つにクラス分けされ、それぞれのクラスに応じた優遇措置が受けられるというもの。

最もポイントを稼いでいるドゥカティがAランクに該当し、テストタイヤの本数がライバル勢に比べ少なく、これまで3回許されていたワイルドカード参戦もできなくなっている。

一方、Dランクのホンダとヤマハはプライベートテストの実施回数に上限がなく、エアロアップデートの上限増加、エンジン開発も行うことができる。日本勢は優遇措置を使って巻き返しを図りたいところだ。

これまでホンダが保持していた年間最多勝利数を更新する圧倒的な強さを見せたドゥカティはライバルの接近を許してしまう制限を受けることになった。

しかし、発表会においてゼネラルマネージャーのジジ・ダリーニャはエンジンパフォーマンスの改善、そしてセパンテストでのこれまでとは一線を画すフェアリングを投入するとコメント。ライバルの接近を許さない構えだ。

また、ドゥカティは参戦するメーカーの中で最も多い8台ものマシンを送り込んでいる。ワイルドカード参戦ができなくなったが、ライバル勢に比べ得られるデータは非常に多いのもプラスに働くことだろう。

2月のオフィシャルテストではドゥカティの一新されたエアロパーツとそのパフォーマンスに注目が集まりそうだ。

ローンチイベントではWSBKで戦う「Aruba.it Racing」のチーム体制とドゥカティのモトクロッサーも公開

画像: Ducati Lenovo Teamと並ぶAruba.it Racing。

Ducati Lenovo Teamと並ぶAruba.it Racing。

ローンチイベントではMotoGP同様、WSBKでチャンピオンに輝いた「Aruba.it Racing」の体制発表、そして新たなプロジェクトでもあるモトクロスの体制も併せて発表された。

スーパーバイクでチャンピオンに輝いたドゥカティのワークスチームであるAruba.it Racingはチャンピオンであるアルバロ・バウティスタが残留。チームメイトにはマイケル・ルーベン・リナルディに代わり、スーパースポーツでチャンピオンに輝いたニッコロ・ブレガが加入した。

こちらもMotoGP同様に、ドゥカティの独走に待ったをかけるべく新しいレギュレーションが適応されるが、テストではルーキーのブレガも上位につけており2024年もチャンピオン争いの主役になる可能性が高い。

画像: 公開された「デスモ450MX」。

公開された「デスモ450MX」。

そしてかねてよりモトクロスマシンの開発を公表していたドゥカティがついにマシンを公開。「デスモ450MX」と名付けられたドゥカティのモトクロッサーは2025年のモトクロス世界選手権への参戦を目標に掲げている。

ロードのイメージが強いドゥカティが新たな挑戦の場に選んだオフロード。もしかすると今後主要な二輪のモータースポーツ全てにおいてこのイタリアンメーカーが席巻する日が来るのかもしれない。そう思ってしまうほど企業としても、レースにおいても、戦略にも勢いを感じるドゥカティ。2024年もレース界をリードする存在であることは間違いないだろう。

レポート:河村大志

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