「890SMT」は、スーパーモタードとツーリングが融合した頭文字に由来する。先代のSMTは、2013年デビューのVツインエンジンを搭載した990SMTだったが、890SMTは並列2気筒889ccエンジン(通称:LC8c)搭載の890アドベンチャーをベースに生まれ変わっている。890アドベンチャーのエンジンやフレームといった主要部分を踏襲したこのモデルはどういったキャラクターに仕上がっているのだろうか。
文:山口銀次郎/写真:柴田直行

KTM「890 SMT」インプレ

画像: KTM 890 SMT 総排気量:889cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:860mm 車両重量:約194kg(燃料除く) 税込価格:179万9000円

KTM 890 SMT

総排気量:889cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:860mm
車両重量:約194kg(燃料除く)

税込価格:179万9000円

スポーツ走行も優雅なロングランも楽しめる

「スーパーモタード」と「ツーリング」といった二つの要素をミックスしたコンセプトの890SMT。モトクロッサーをベースに前後17インチホイールを装備し、舗装路での戦闘力を高めるスーパーモタードの手法は、ビッグアドベンチャーモデルにも有効的で、走りの個性をガラリと変化させることが可能となっている。

生い立ちから考えると、ロードスポーツモデルからオフロードマシンに寄せたモデルではなく、好評のアドベンチャーモデルの要素を活かしているというところが890SMTの一番の魅力だろう。

画像1: KTM「890 SMT」インプレ

跨って走り出した瞬間に、しっとりと沈み込む上質感漂うショックと足付きの良い設定で、車高が低くなったアドベンチャーモデルだという印象が強い。車両の重量感もそれなりにはあるのだが、KTMのモデルに共通するマスの集中化が図られており、贅肉のないバランスの良い車体である事が解る。

また、軽量化や機敏さを追い求めるが故の硬質なショック設定といった、スポーツ要素の強いスーパーモタードモデルとは確実に異なるキャラクター設定がありがたい。ゆったりとした乗車姿勢がウリのアドベンチャーモデルとしての特徴はそのままなので、操縦性は自由度も高く、長時間の走行でも疲れにくいものとなっている。

もちろん、スタンディング等の姿勢をとりダイナミックに車体を振り回すのにも適しているポジションなので、未舗装でも荒れていない林道ぐらいなら問題なく走行出来るだろう。

画像2: KTM「890 SMT」インプレ

ショートタイプのウインドスクリーンはいかにもスポーティな設定だが、シュラウドからフロントマスクにかけて大きくそそり立つフロントセクションのお陰で防風効果は意外と高い。もちろん、長く乗れば乗っただけ恩恵にあやかれる。今日まで進化し続けたアドベンチャーモデルならではのパッケージングによるものだろう。

路面に吸い付く上質なサスペンション設定は、余計なストロークのないロードモデルとアドベンチャーモデルとの中間設定といえるもので、17インチホイールとの相性がとても良い。それこそ、初心者でもワインディングが楽しめる、安定感とクセのない旋回性のバランスのよさが際立っている。さらに、ワンディングでの軽快さを後押ししてくれるブレーキシステム、様々な電子制御、モード選択も相まって、乗り手のレベルや走行状況など広範囲にアジャスト可能な懐の深いロードスポーツモデルに仕上がっていると言える。

画像3: KTM「890 SMT」インプレ

また、オプション設定のテックパックに付随するトラックパックの9段階で選択可能なトラコンやライドモードを駆使すると、スーパーモタードならではのブレーキングと共に積極的に旋回させるコーナリングも可能にしてくれる。しかも、ペースや路面状況に応じ、細やかなセッティングも簡単にできる使い勝手の良さも際立っている。

890SMT専用に仕立てられた足回りも、そういったエキサイティングな走行を見据え、素直な旋回を後押しつつジッと落ち着き払うセッティングが施されている。

890SMTは、優雅かつマイルドな走行も得意でありつつ、レース専用モデルさながらのエキサイティングな走行も得意とする、とっても欲張りな車両に仕上がっていた。

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