2000年にコンプリートカスタム車としてRCM(Radical Consruction Manufacture)を製作、以来600台以上の車両を手がけてきたACサンクチュアリー。17インチタイヤを履いた現代仕様のZを楽しむべく、Zのフレーム加工やエンジン加工、パーツ製作などに定量化という手法を持ち込んでレベルを高める。そうしたベース車の底上げとともに、カスタムでの自由度や個性化という要素を追ってきた。その流れを振り返ろう。
※本企画はHeritage&Legends 2023年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

ここ数年のトピックは内燃機加工と練度の向上

現代の17インチタイヤをZに履く。カスタムブーム以来、多くの車両で施された仕様だ。ACサンクチュアリーの中村さんもそんなひとり。プライベーター時代は自身のZ1R-Ⅱに前後18インチホイールを履いたり(主目的はガンガン走るためにパンク修理の手間を省くことだった)、17インチのGSX-R系足まわりをコンバートしてワイドホイールの格好良さや現代タイヤの良さを味わう。

画像: ▲ACサンクチュアリーの代表、中村博行さん。30年近く前に自らのZ1R-Ⅱを元に多くを試し、それが今のRCMや各パーツ、今回紹介した内容に至る。

▲ACサンクチュアリーの代表、中村博行さん。30年近く前に自らのZ1R-Ⅱを元に多くを試し、それが今のRCMや各パーツ、今回紹介した内容に至る。

この時点で既に登場から20年、生産終了からも10年以上が経つZに対してどんなパーツが使えるのか、必要か。他モデルから探し出して流用、あるいは自作してZの17インチカスタムの要素を次々そろえていく。エンジンも1197cc化など多くのチューニングをトライしてきた。

ACサンクチュアリーを開店した1995年からはそのノウハウを生かし、カスタム車両を手がけるとともに、Zの弱点対策やスープアップに適したパーツを作り出す。ナイトロレーシングのステップやマフラーはその先鋭となり、Zを主にしたカスタム用パーツとして多くのユーザーが使うに至る。

画像: ▲コンプリートとしての構成を決定づけたZ。RCM-039と比較的初期のRCM(当時はReal Complete Machineの略)だ。サンクチュアリーがショップとしてレース参戦を行う中から、転倒後の復帰もできるように整備性を犠牲にせず、質実でシンプル(盛らない)に車両をまとめるという方向性を見出したRCM・Z1。FZR1000スイングアームなどで各部数値の定量化を進めていく契機の1台となった。

▲コンプリートとしての構成を決定づけたZ。RCM-039と比較的初期のRCM(当時はReal Complete Machineの略)だ。サンクチュアリーがショップとしてレース参戦を行う中から、転倒後の復帰もできるように整備性を犠牲にせず、質実でシンプル(盛らない)に車両をまとめるという方向性を見出したRCM・Z1。FZR1000スイングアームなどで各部数値の定量化を進めていく契機の1台となった。

同時に中村さんは17インチのZに適したフレーム補強やディメンション設定、ワイドホイールを履く際のチェーン軌道確保加工などを定量化する。開店から5年ほどした2000年に、コンプリートとして「現代17インチタイヤを履きこなせるZ」をコンセプトとした17インチカスタムを作り始める。これがRCMだった。

Zの各部を整備・修正し、あるいは強化・補強する。そのレベル=基準値を17インチハイグリップタイヤを標準で履く現代車のそれ以上に置いて、クリアさせる。いわゆる定量化によって、10~20年が経つ古いベース車の質を上げる。普通の中古Zでなく、手を入れて基準値以上に質を高め、そこを出発点とした上での個性化=カスタム化を図る。

画像: ▲RCMのZ1(RCM-570)。近作で最新コンプリートの要素を満たしながら今後の発展性にも適応する作りもプラスした一台だ。車両の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

▲RCMのZ1(RCM-570)。近作で最新コンプリートの要素を満たしながら今後の発展性にも適応する作りもプラスした一台だ。車両の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

名車としての魅力を持ったZ。これを時代に合わせた上で自分仕様を盛り込むというRCMは、以来10年で約100台が作られ、次の10年では通算500を超える数に。この2023年には600台を超えたが、およそ9割がZ系だそうだ。上で紹介する車両はそのRCMの近作だ。RCMはかなりの完成域に入っていると思えるが、少し前と異なることはあるのだろうか。

「確かにこの車両は、RCMとしての要素をきっちり満たしたものです。車両の調達や製作の背景はそれぞれ異なりますし、排気量やポジションなどの仕様も異なってきます。これはオーダーメイドの部分ですからオーナーに合わせています。この車両ではエンジンは1045cc仕様、フレームも17インチでレースにも対応できる当社のST-Ⅱ補強。車体は今後ハーフカウル仕様も楽しむ可能性があるということでそのマウントに適合する加工を先にしています」

こう言う中村さん。違いに関しては以下のように続けてくれる。

「500番台以降の車両では、内燃機加工が充実しました。DiNx社で作業を行いますが、加工そのものの精度が高まったり、Zでも多い個体差や、組み手=エンジニアの要求を汲み取った仕上がりで来る。普通だと数値に沿った加工になりますが、組み手のコンセプトに合った加工のおかげで、仕上がりの特性もよりコンセプトに合ってきたのが、違いでしょうか」

同じ社外作業であっても、仕上がるエンジンがどんな風に組まれ、使われるかを考えて加工する。バルブシートカットを行うにしても多めになってシートが上がり、燃焼室容積が増えて圧縮が下がったり、ステムエンドが上がってタペットシムが使えないようなことを回避するように、使い方も考えて対応する。まずずれているというバルブガイドも打ち替え時の精度を高め、センターをきちんと出す。精度の高いクランク芯出しやバランス取りも当然のメニュー。

組み手が、そして直接の数値依頼ではないにしても乗り手、オーナーがほしい要素が充実化し、車両パッケージとしてもスムーズさや寿命も延びることになる。作業の面は確実に進化していた。

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レースで向上したメカの練度がより確実に反映

もうひとつ、地味だけどもRCMを作るメカニックの練度とスキルがぐっと上がったのもこの1~2年の特徴に加えたいとも中村さん。

「はっきりと数字や形に出るものではないですが、これは言える。私と工場長の鈴木で監修しながら専任メカが付いてRCMを作りますが、ボルトの締め方ひとつ取っても、機械操作やパーツの選択に組み方も、5年前に入れたシャシーダイナモを使ってのキャブレターの基本セッティングも、どれもレベルアップしているのが分かる。

シャシダイも単にあればいいわけではないですし、使い方を知ってセットを出さないといけないものが、1年フル稼働してちゃんと車両に反映されている」

複数のメカニックがいるから切磋琢磨の結果かと思ったが、その要因はもっと別のところにあった。

「レースですね。とくに今の3号機になってから。その現場、本戦だけでなく練習もあれば開発もある。その中で全員がスキルを高めて、日々の仕事に応用している。

RCMが始まってすぐの1号機の時代も、2号機の時代もすごかったんですが、3号機は筑波サーキットをZで58秒台ラップというレベルで、もっとレベルが上がっている。その中でやるべきことや作業がある。タイヤを組むにしても一度エアを噴いて内部にゴミがないようにしてリムに組むとか、バッテリーがあと何周保つからここで充電とか。そんな地味な部分を当たり前のように、きちんとレベルを上げながらやっていく。

それが間違いなくRCMに反映されて見えています。手前味噌に聞こえるでしょうが、仕上がりもいいんですよ。見ていただければ分かると思います。ただ、過去やってきたものがだめとかではなく、時代に応じてスキルアップしたのだと改めて思いますよ」

レースとはTOT(テイスト・オブ・ツクバ)。とくに今の3号機は、17インチZの理想を追ったコンパクトなオリジナルフレームやFIも組み合わせつつ、レコードを破る過酷な状況でのピストンやオイルポンプなどの開発にも寄与してきた。そのフィードバックはパーツ単体だけでなく、それらを扱い、RCMを作るメカニックにも及んだことになる。目に見えない部分かもしれないが、確かにこれは間違いのない進化と言える。

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600台を超えるRCMの基本思想を表す車両とパーツやZのこの先を探る歴代Zレーサー

名車として魅力が高く、自らもずっと好きなZ。そこに現代17インチハイグリップタイヤを履きこなす能力を持たせるために定量化を行い、量産レベルでのパーツ供給やフレーム加工を行う。そうして仕上がったベースにカスタム化を図り、楽しさを増す。中村さんの車両はそれぞれそのプロトタイプとでも言うべき思想が込められ、今はTOTスーパーモンスターエボリューション用レーサーでその限界や機能を高めている。

1994・Z1R-Ⅱ

画像1: 600台を超えるRCMの基本思想を表す車両とパーツやZのこの先を探る歴代Zレーサー

2000・Z1-R

画像2: 600台を超えるRCMの基本思想を表す車両とパーツやZのこの先を探る歴代Zレーサー

2016・RCM USA A16R-001

画像3: 600台を超えるRCMの基本思想を表す車両とパーツやZのこの先を探る歴代Zレーサー

中村さんの歴代所有車。1994年のZ1R-Ⅱはサンクチュアリー開店以前に独自チューンで仕立てたもので、チューブレス化が主目的。2000年のZ1-Rはショップ開店後にスイングアーム垂れ角やワイドホイール用チェーンライン加工、17インチディメンションなどRCMに至る多くの内容をテストした。エンジンも1197cc化やオイルラインの内部スタッド部廃止&外部化なども試した。2016年に限定30台を用意したオリジナルフレームのRCM USA A16R-001(生産終了)はZエンジン+FIで乗り味はまさに現代スポーツのそれという1台。Z Racer3号機も同じフレームだ。

Z Racer 1号機

Z Racer 2号機

Z Racer 3号機

画像3: 定量化と個性化という量産とカスタムの利点を活用し合い魅力を高める|ACサンクチュアリー【Heritage&Legends】
歴代のサンクチュアリーZレーサー。1号機(前期仕様)は2004~2005年を走った1166cc仕様、ツクバベストは1分1秒196。’06年の1号機後期仕様をおいて’07~’08年に2号機を投入。シングルシート化や車体まわりの多くを改良しベストは1分0秒128。2013年からノーマルフレームベースのニューZレーサー1号機/RCM-240を投入し59秒913を記録(2014年)し活動を休止した後に’16~’17年に同車を再投入。さらに2019年、RCM-USA A16を元にした3号機を投入。國川浩道選手が’20年に空冷Zとして最速の58秒081を記録している。

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新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン

画像1: 新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン
画像2: 新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン
画像3: 新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン

ACサンクチュアリーの母体、ノーブレストの1部門として’22年に設立されたDiNx(ディンクス)。サンクチュアリーからもRCMに必要な内燃機加工を依頼するようになり、エンジンの作り込みが深まった。1/1000mm精度のホーニングを含めた精密ボーリングやクランクの精密芯出し(コンロッドも用意しボイスジャパン製新品ベアリングも組める)、バルブガイド打ち替えやツインプラグ加工などはその例。

画像4: 新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン

DiNx製Z系用鍛造ピストンで、Zレーサー3号機にも使われている。

画像5: 新たな専業部門とのやり取りでより精度を高めるエンジン

サンクチュアリーKOUGAによるEVOシステムで、ドライブシャフトを外からも支持しミッションの負担を減らしオフセットなしのスプロケットが使える。こうしたパーツも豊富だ。

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早くに確立したZの17インチ最適加工を供給しパーツでもフォロー

画像1: 早くに確立したZの17インチ最適加工を供給しパーツでもフォロー

サンクチュアリーでは開店初期からZフレームへの17インチ対応補強箇所をまとめている。イラストは開店当時に中村さんが描いたもの。

画像2: 早くに確立したZの17インチ最適加工を供給しパーツでもフォロー

レースにも適合するST-Ⅲ補強。一般には補強箇所を12としたST-Ⅱを供給している。

画像3: 早くに確立したZの17インチ最適加工を供給しパーツでもフォロー

レーザー測定やワイドレイダウン(ショックマウント位置を定量化するジグ)、ドライブチェーン軌道確保も含め、ショートオフセットステムや軸間525mm近辺/垂れ角10度のスイングアームもスカルプチャーブランドで用意し、ディメンションも確立。

画像4: 早くに確立したZの17インチ最適加工を供給しパーツでもフォロー

2009年にはイタリアO・Zレーシング製ホイールも扱いを始めた。このように走りの質や精度を高めるパーツの扱いも増えた。

取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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