77年の歴史を刻んできたイタリアのスクーターブランドであるランブレッタが、EICMA 2023に独創的な電動スクーターを展示しました。市販化がいつになるかは定かでないですが、長年のライバルであるピアッジオのベスパ同様、ランブレッタも電動化時代に向けて着々と歩みを進めているようです。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2023年11月17日に公開されたものを一部編集し転載しています。

名作LDをオマージュしたボディライン

ランブレッタは第二次世界大戦後にスクーター作りを始めたブランドです。航空機造りをしていたピアッジオベスパがモノコック構造を特徴とするスクーターを作ったのに対し、鋼管メーカーが母体のランブレッタは得意分野を活かしパイプフレームのスクーターを生み出しました。現代の多くのスクーターがパイプフレームを採用している現実を見る限り、ランブレッタの手法の方が多くのフォロワーたちには好まれたといえるでしょう。

画像: 1956年型ランブレッタLD125。黎明期はパイプフレームが露出したスタイルのスクーターを造っていたランブレッタですが、この頃には現代的なボディをレッグシールドなどのパネルで覆うスタイルになっていました。 en.wikipedia.org_20120211.jpg)

1956年型ランブレッタLD125。黎明期はパイプフレームが露出したスタイルのスクーターを造っていたランブレッタですが、この頃には現代的なボディをレッグシールドなどのパネルで覆うスタイルになっていました。

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欧州最大規模の2輪ショーであるEICMA 2023にて公開された初の電動モデル「エレットラ」のスタイリングは、かつての豪華版スクーターだったLDへのオマージュ・・・とランブレッタは説明しています。

画像: フロント側はシャープさと力強さ、リア側はソフトかつ有機的なラインでスタイリング。過去と未来の美学的な対話・・・とランブレッタはエレットラの外観コンセプトを説明しています。

フロント側はシャープさと力強さ、リア側はソフトかつ有機的なラインでスタイリング。過去と未来の美学的な対話・・・とランブレッタはエレットラの外観コンセプトを説明しています。

画像: スッキリした印象のハンドルまわりのデザイン。ウインカーはバーエンドタイプ。非常に特徴的なデザインのブレーキレバーは、木製!! リトラクタブル式。市場で最も革新的なデザインと、ランブレッタは自負しています。

スッキリした印象のハンドルまわりのデザイン。ウインカーはバーエンドタイプ。非常に特徴的なデザインのブレーキレバーは、木製!! リトラクタブル式。市場で最も革新的なデザインと、ランブレッタは自負しています。

画像: リアボディはリモコン操作で自動的に持ち上がる作り。バッテリーを収納するコンパートメントに、アクセスすることが可能になります。

リアボディはリモコン操作で自動的に持ち上がる作り。バッテリーを収納するコンパートメントに、アクセスすることが可能になります。

最高速度は110km/h、航続距離は最大約130km

エレットラに搭載される動力は258Nmの大トルクを生み出す永久磁石同期モーター(PMSM)で、定格出力4kW、そして最大出力11kWを誇ります。最高速度は110km/h。ライディングモードはエコ、ライド、スポーツの3つから選択することができ、それぞれのモードの航続距離は127km(定速走行40km/h)、70.5km(同72km/h)、62.3km(同81km/h)となります。なおWMTCモード値の航続距離は、104.5kmと公表されています。

画像: フロントサスペンションは「ホイール プルド」 ダブルショックアブソーバー、リアサスペンションは水平にマウントされたモノショックを持つスイングアームを採用。フレームはアルミダイキャスト製、ボディーワークはスチール製です。タイヤサイズは現代のスクーターとしては小径の部類になる、12インチになっています。

フロントサスペンションは「ホイール プルド」 ダブルショックアブソーバー、リアサスペンションは水平にマウントされたモノショックを持つスイングアームを採用。フレームはアルミダイキャスト製、ボディーワークはスチール製です。タイヤサイズは現代のスクーターとしては小径の部類になる、12インチになっています。

電動スクーターの実用性のカギとなる要素のひとつ、充電にかかる時間については、欧州の家庭電源に多い220Vのノーマルチャージで5時間40分(0-100%)、公共の急速充電では36分(20-80%)と公表されています。

車体寸法に関して公表されているのは、ホイールベース1,380mm、最低地上高140mm、シート高780mmの3つの数値です。なお車重は135kgです。

リチウムイオンバッテリーは非交換式で、充電はプラグイン方式です

エレットラに搭載される電圧64V-73Vのバッテリーは据え置き型で、アルミニウムのケースで覆われる構成です。

画像: 車体右側面に、充電器のプラグを差し込んで充電します。バッテリー容量は4.6kWhです。

車体右側面に、充電器のプラグを差し込んで充電します。バッテリー容量は4.6kWhです。

2018年から生産されたベスパの電動スクーターの初作品「エレットリカ」も、エレットラと同じように据え置き型バッテリーとプラグイン充電を採用していました。据え置き型は交換式に比べると、重たいバッテリーを車体から引き出す必要がないことがメリットということもできます。しかしスクーターのユーザーには都市圏居住者が多く、集合住宅に住む人の多くはプラグイン充電が可能な車両保管場所を確保することに苦労するのが現実でしょう。

現状のバッテリー技術の進展度も考慮すると、台湾のGogoroやアイオネックス、そして日本のGachacoが普及を進めている交換式バッテリーの方が、都市圏のコミューターとしての用途が最もポピュラーなスクーターという乗り物の、電化のやり方としては最も好ましいといえます。

ピアッジオがエレットリカの後にリリースした電動スクーター「ピアッジオONE」は、交換式バッテリーを採用していることが2021年の公表当時話題になりました。ランブレッタとしては、交換式バッテリーの「規格統一化」がだいぶ先のことと予想される今、電動スクーターを造るには据え置き型バッテリーの方が様々な面から無難な選択・・・と考えているのかもしれません。

ランブレッタの野心作ともいえるエレットラがいくらくらいの価格で、いつごろからリリースされるのかは、残念ながら今のところ明らかにされてはいません。それが明らかになる日を、楽しみに待ちましょう。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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