初夏の奈良に向かって、大阪から高速道路をひた走る一台のサイドカー。ウラルのギアアップである。ドライバーはタレント、たはらかすみさん。横に乗るパッセンジャーはモデルの葉月美優さん。サイドカーの女性2人旅、否が応にも注目を集め、渋滞路ではトラックドライバーに声をかけられる一幕も。足を着かなくても停車できるサイドカーは、実は楽な一面もあり、停車時には自ずと会話が盛り上がるというもの。漠然と奈良に向かってはいるが、実は目的地を定めていなかったりするクルージング。木洩れ陽の下のチェアリングがとても気持ち良く、「この気持ち良さのために走ってきたんだな」と、実感。
文:山口銀次郎、アドベンチャーズ編集部/写真:西田 格/モデル:たはらかすみ、葉月美優

ウラル「ギアアップ」インプレ(山口銀次郎)

画像: URAL GEAR UP 総排気量:749cc エンジン形式:空冷4ストOHV2バルブ水平対向2気筒 シート高:810mm 車両重量:331kg(乾燥) 税込価格:306万8850円 ※撮影車両は2022年フルカスタム&ハイグレード仕様

URAL GEAR UP

総排気量:749cc
エンジン形式:空冷4ストOHV2バルブ水平対向2気筒
シート高:810mm
車両重量:331kg(乾燥)

税込価格:306万8850円
※撮影車両は2022年フルカスタム&ハイグレード仕様

悪路で鍛えられた走りは、ちょっとやそっとじゃ音を上げない

年々着実に改良が加えられている二輪駆動も可能なギアアップシリーズだが、実車を前にすると、正直なトコロ永年変わらぬ質実剛健なミリタリーなルックスに大きな変化が見られないような気がする。今回試乗するギアアップは、2022年モデルベースのフルカスタム&ハイグレード仕様となる。

2輪駆動のギアアップシリーズの特長として、1輪駆動と2輪駆動をパートタイムで繰り替え可能なシステムを搭載し、普通自動車免許(マニュアルに限る)にて運転可能なサイドカーとなっている。オートバイでの登録となっているが、4輪車扱いなのでヘルメットの着用義務がないことも付け加えておこう。ちなみに、転倒(サイドカーの場合は転覆という)もあり得るので、ヘルメットの着用を強くお薦めします。

エンジンのフィーリングは、車重に対して小さく思える749ccだが、チカラの発生をコントロール演出が秀逸で、必要にして十分な太いトルクを発生させ、極低回転域を使用しようとも不満を覚える事はないだろう。また、フラットなヘッドカバーやより深みを増したフィンなど、新エンジンのルックスは伝統を引き継ぎつつも新たな時代を迎えた事が伺える仕上がりとなっている。

画像1: ウラル「ギアアップ」インプレ(山口銀次郎)

未舗装路やガレ場が多く存在する地で鍛えられただけあって、一見シンプルに見えてもその堅牢な造りと深いデータの蓄積によって生まれるバランスは一級品。日本では、よっぽどな場所でない限り走行するチャンスは訪れないであろうシチュエーションを、ウラルサイドカーは問答無用に突き進んでくれる。これは実証済みなのでとても心強い。もちろんアドベンチャーライディングをする上では、この上ないタフな相棒である事は間違いない。

サイドカーと聞いて身構えてしまうライダーも多いかと思うが、普通に走行させるだけでもアドベンチャー感に満ちているのがサイドカーの操縦だと思う。オートバイにはない独特の操作感は、状況によってはアンバランスでありセオリーが通らなく、車体の挙動を感じダイナミックに舵を切りスロットル操作をする。クセのないスムーズな操作のオートバイに比べ、必要以上に手に汗握るのは間違いない。

画像2: ウラル「ギアアップ」インプレ(山口銀次郎)

ただし、独特の操作感を把握し、長い距離を乗れば乗るほど、その突破感はクセになり、よりハードルの高さを求めてしまうというもの。慣れてくる頃には、気軽な旅はより気軽に、ハードルの高い旅を何の気なしにこなせてしまう、そんな懐深いアドベンチャーの世界から抜け出せなくなっていることだろう。

側車に出力を伝達させるシャフトが船の下を通るカタチになるので、構造上船の最低地上高が高めの設定となる。これにより、安定性を欠いたり右コーナー時の側車浮きへの影響を予測したものの、大きくバランスを崩す事はなかった。また、車体造りの無骨さと2輪駆動部品の追加による重量増は否めないものの、いざ走り出してしまえば気になる事は一切なく、出力も物足りなさを感じない絶妙なバランスを保っているので、むしろ相乗効果で軽快さすら感じてしまう錯覚に陥ってしまった。

画像3: ウラル「ギアアップ」インプレ(山口銀次郎)

多少荒い操作をしようが、またクセのあるバンプを越えようが、芯の強い車体はビクともせず、ハード且つタフな設定である事が伺える。多少の事で音を上げないミリタリー仕上げなので、常用の整地された交通路では物足りなさを感じるのは素直な想いである。

グリップ力が高い舗装路となる一般道や高速道路では、構造上1輪駆動(通常のサイドカー同様)にて走行しなくてはならないが、ぬかるみや砂地等を走破する場合に一時的に2輪駆動に切り替えて走行することが出来る。2輪駆動は常用するのではなく、エマージェンシー用と捉えておくのが無難だろう。

画像4: ウラル「ギアアップ」インプレ(山口銀次郎)

タイヤは踏み固められた未舗装路でなら相性が良さそうだが、本格的なオフロード走行には不向きといえるトレッドパターンとなっている。小砂利が混じる砂地は、駆動力を奪い簡単に前進を阻むほど車輪を沈めてしまうものだが、二輪駆動では停車状態から多少スリップするものの確実に車体を押し進め、確実に走行をすることが出来た。その走破力は、クルマに例えると不整地での後輪駆動のみと四輪駆動の差ほど、明らかな安心感と推進力をもっている。

また、パッセンジャーがいる状態や錘(ライダー1人乗車の時におススメ)がある状態、そしてライダー1人の場合でも走破力に変化はなかった。不整地や荒地走行する機会が稀な日本の道路事情だが、本格的なタフネスさを所有する喜びに浸りつつ、日々の走行を楽しめる実用性に富んだアドベンチャービークルとなっている。

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