日本国内では、2020年9月より2輪車への採用が認可されたDRL(デイタイム ランニング ライト、またはランプス)。今ではすっかり採用モデルが珍しくなくなっているDRLという装備だが、そもそもどのような思想でDRLは生まれ、採用にあたってはどのようなメリットがあるのか? などを解説したい。

ヘッドライトとDRLの違いは、至ってシンプル!?

画像: ホンダの大型アドベンチャーモデル、CRF1100L Africa Twin Dual Clutch Transmissionは、2022年モデルよりDRLを採用している。 www.honda.co.jp

ホンダの大型アドベンチャーモデル、CRF1100L Africa Twin Dual Clutch Transmissionは、2022年モデルよりDRLを採用している。

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まだ日本では2輪への採用がOKとなってそんなに時を経ていないこともあり、ヘッドライトとDRLの違いをキチンと説明できる人は少ないかもしれない。簡潔に両者の違いを述べると、ヘッドライトは暗い道で乗り手が前方の視野を確保するのが主目的で、DRLは昼間でも対向車などから自車を意識してもらうためのものだ。

つまり視認性向上の装備がヘッドライトであり、被視認性向上のための装備がDRLというわけだ。なお、被視認性を向上させる灯火類といえばフォグランプもその類ではあるが、フォグランプは見る者にまぶしさを感じさせることなく、霧中の状況での安全性を向上させるのが主目的の装備だ。そもそもDRLは道路を照らすように設計されていない・・・ということも、ヘッドライトなどとの大きな違いとしてあげられる。

もちろんヘッドライトも被視認性を向上させるという副次的効果は有しているが、いわばDRLはヘッドライトから派生して、被視認性向上という目的に特化させた安全技術なのだ。

昼間は明るい・・・というのは、日本人の思い込み?

日本でDRLが認可されたのは、2輪は前述のとおり2020年のこと。2輪より先に認可された4輪にしても2016年10月からであり、日本におけるDRL普及の歴史は10年にも満たない。そしてヘッドライトの常時点灯の義務付けも、日本ではまだ行われてはいない。一方で、常時点灯やDRLを世界で初めて義務付け(1977年)したスウェーデン、そしてそれにすぐ追随した他のスカンジナビア諸国やカナダなど、常時点灯やDRL装備は当たり前のことになって久しい国・地域も存在している。

これらの国で常時点灯やDRL普及がいち早くスタートしたのは、彼の地ならではの地理的な事情が背景にある。北欧やカナダなどの北極寄りに高緯度な地域は、周知のとおり冬季になると1日の日照時間がかなり短くなる。冬場は暗い時間が長いという土地柄ゆえ、ヘッドライトの昼間点灯が被視認性を高めることについて早くから研究が進んでいたのだ。

DRL認可こそ2020年と遅かった日本だが、常時点灯による被視認性向上効果については、かなり前から認識はされていた。自工会(JAMA、社団法人 日本自動車工業会)は混合交通下の2輪事故防止のため、2輪車の昼間点灯推進を訴えており、1989年には「バイクは昼間もライト・オン!」というキャンペーンを行っていた。そして1990年代より国内メーカーはライトスイッチの存在しない「常時点灯」仕様のモデルを導入し始め、1998年4月1日以降に製造されたすべてのモデルが、法律で常時点灯であることを義務付けられるようになり今日に至っている。

画像: 自工会・'98秋季交通安全キャンペーン」の配布物。右は「ライトオン」=常時点灯を啓蒙する内容である。 www.jama.or.jp

自工会・'98秋季交通安全キャンペーン」の配布物。右は「ライトオン」=常時点灯を啓蒙する内容である。

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DRLが普及すると、DRLの効果は減少する・・・?

1990年にカナダがDRL義務付けしてから10年余り後の2001年、米自動車大手のGM=ゼネラルモーターズは(レギュレーション統一によるコスト圧縮効果も目的にして)、米政府に米国でのDRL義務付けを請願している。しかし2009年にこの請願は却下され、義務化されることはなかった(なおDRL装着は、1990年代から認可されている)。

このGMの請願を審査するため、2008年9月に米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)はDRLの有効性に関するレポートをまとめているが、その中には興味深い記述がある。それはDRLが、常時点灯の二輪車の目立ちやすさを損なうという懸念が提起されていることだ。

逆「へ」の字に光るのが、ドゥカティ スーパースポーツ950に採用されたDRL。1970年代の、初期のDRLはフィラメントバルブを使っていたため、バッテリーの負荷増大が問題視されたりしたが、灯火類にLEDが用いられることが常態となりつつある今では、DRLも消費電力の少ないLEDが当たり前となり、上述のような問題は解消されている。

www.ducati.com

確かに、DRL普及が始まって比較的短い日本では二輪車のDRLはまだ「目立つ」存在であるが、仮に道路上の交通の100%になった日には、二輪車のDRLはこれらの中で埋没することになるだろう。しかし過去にDRL義務国および非義務国で行われた研究によると、おおむねDRLは事故防止に効果ありという結果が出ている。

1981年のスウェーデンの研究は、義務化前と義務化後のそれぞれ2年間のデータから、DRLは昼間時の衝突事故を11%、歩行者/原付の衝突事故を17%、自転車/原付の衝突事故を21%減少させたと結論づけている。また1993年と1995年のデンマークの研究では、DRLは昼間の複数車両の衝突事故を6〜7%、四輪車/二輪車の衝突事故を4%減少させたと報告している。

日本国内でも、都道府県によって事故の多い地域や少ない地域があるように、交通法規や道路環境の異なる諸外国のデータをそのまま日本に当てはめるのは難しい。ノルウェーが行った1993年の調査のように、DRLが冬場の多車種衝突事故や、歩行者や二輪車が関係する事故に効果がない(いずれも統計的に有意な結果ではなかった)、特に二輪車の安全を損なう恐れもある・・・などなどネガティブな報告もある。

ただ先ほど「おおむね効果あり」と記したとおり、多くの研究結果はDRLの有効性を認めている。当たり前の話ではあるが、DRLはそのほかの安全装置と同様に、100%の安全を担保するわけではない。DRL認可からあまり時間が経っていない日本だが、近い将来には認可前後の事故データを科学的に分析し、その効果を検証した例が多く報告されることになるだろう。

安全性の向上の以外にも、DRLには大きなメリットがあるらしい・・・!?

2020年の二輪車の保安基準改正の内容は「二輪自動車等の灯火器等の取り付けに係る協定規則(UN-R53)」の要件に適合する昼間走行灯(DRL)を備えることができるようになった一方で、車幅灯および側方反射器を備えなければならない・・・と、車幅灯と側方反射器の装着を義務付けている(サイドカー=側車付二輪は除く)。

画像: 車幅灯および側方反射器の義務化の予定スケジュール。 www.mlit.go.jp

車幅灯および側方反射器の義務化の予定スケジュール。

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画像: 日本の法律では、DRLは周囲の明るさに応じて自動的にすれ違い用前照灯(ロービーム、1灯あたり最低6,400cd以上)に切り替わることを求めている。ただしDRLの光量が700cd以下の場合は、手動切り替えでも可となっている。 www.mlit.go.jp

日本の法律では、DRLは周囲の明るさに応じて自動的にすれ違い用前照灯(ロービーム、1灯あたり最低6,400cd以上)に切り替わることを求めている。ただしDRLの光量が700cd以下の場合は、手動切り替えでも可となっている。

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なお日本国内では2015年以降、ヘッドライド光量の最大値は法で430,000cd(カンデラ)以下と定められているが、光軸について特に規制のないDRLは眩しい光で幻惑されることがないように光量1,440cd以下と規定されている。そしてDRL装着車は、エンジン運転中はDRLかヘッドライトのどちらかが必ず点灯していなければならず、またDRLとヘッドライトの同時点灯は禁じられている。

安全性向上への寄与だけでなく、目新しさや、デザインのアクセントになることもあって、今後DRLを標準装備化する二輪車は増えていくことが予想される。また二輪・四輪のDRLが普及することは、環境に対しても大きなメリットがある・・・と言われている。

安全のための昼間点灯に100Wフィラメントバルブのヘッドライトを使うのと、50WのLED式DRLを使うのを比較すれば、言うまでもなく後者の方が省電力だ。これら灯火類に使用する電力はエンジンに取り付けられるオルタネーターから生み出されるが、車両電装の省電力化は省燃費に貢献する。たとえわずかな省燃費でも、路上のすべての二輪・四輪がDRLを使うと仮定すれば・・・チリも積もれば山となる、というわけである。

文:宮﨑健太郎

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