街乗りが普通に快適……「アルティメットスポーツ」とは?
スズキのアルティメットスポーツ『隼』の迫力や重量に圧倒され、不安の中はじまった試乗。
車重による取り回しの大変さはありましたが、足つきは良好でポジションも思っていたよりスポーティー。かなりモチベーションを回復させた状態で街に乗り出すことができました。
【アルティメット試乗開始編】の続きです
1339ccの188PS……。
一体どれだけパワフルなバイクなんだろう、と恐る恐るアクセルを開けクラッチを繋いだのですが、
あれ、すごく発進が滑らか……!
おやぁ……?
もっと激しいドン突きにさらされると覚悟していたのですが、全くそんな気配はありません。
『GSX』シリーズや『KATANA』に試乗した際は身体を置いて行かれるような加速を体感しましたが、対する『隼』は優しく背中を押すように穏やかに発進します。
もしかしてBモードやCモードになっていたのかな、と思い確認しても、インストルメントパネルはAモードを表示……。
電子制御によるスロットル開け始めが凄まじいほどに調整されていて、1300ccのビックバイクに乗っているとは思えないほどの発進の快適性の高さです。
しかし、試しに一気にワイドオープンしてみたら、頭が真っ白にような加速を見せつけられました。この前傾ライディングポジションじゃなければ振り落とされるんじゃないかというほど……。
そういったことから、スロットルレスポンスがセンシティブなわけではありませんが、開ければしっかり反応して鬼のような加速をするので、もったりした印象はありませんでした。
スロットル開け始めの穏やかさは低速で走行する場面が多い街中では大きな武器で、渋滞や交差点でもストレスのないスロットルワークを実現しています。
今まで試乗したSDMS(スズキドライブモードセレクター)を搭載した車両では、街乗りにおいて積極的にBモードを使用したことが多かったのですが、『隼』はAモードでも安心して扱える安心感を備えていました。
また、1339cc・188PSの4気筒エンジンは低回転からトルクフルで、ハイギア低回転でもギクシャクすることなくスムーズに加速してくれます。
おかげで混雑する市街地もストレスなく移動できました。
というか『GSX』シリーズや『カタナ』に乗った際も思いましたが、スズキの4気筒エンジンって動きがシルキーすぎて本当に気持ちが良い……。
メカノイズも少なくてアイドリング中のサウンドも不快感は皆無です。
そして、なんといっても驚いたのは、交差点ひとつ曲がってわかる圧倒的スタビリティの高さ!
全くふらつく素振りがなく、下手な操作をしなくてもバンクさせれば思い通りに車体が曲がっていきます。
ブレーキのタッチも至って自然。このバイクを停止させるブレーキだから低速ではギクシャクするくらい効いてしまうようなイメージでしたが、コントロール性が高く安心感のある制動性を見せていました。
また、重い車体をバンクさせることに慣れてくると、『隼』は意外と小回りが効くといくことを発見。
この長いホイールベースでどうやって曲がってるんだ? と不思議に感じるほどスイスイ路地に入っていけます。
そして、街乗りにおいてもうひとつ威力を発揮していたのがクイックシフター。
『隼』は油圧クラッチを採用していて、握りたくないほどクラッチレバーが重い、ということはないのですが、やはり街中で何度も操作するにはちょっと疲れます。
なので、クイックシフターはストレスなくミッション操作ができ、街中で『隼』を扱う際にも疲労軽減&快適性の向上に大きく貢献してくれました。
良好な足つき性も扱いやすく感じた大きな要因だったと思います。
乗る前は不安しかなかった『隼』ですが、思っていたよりずっと扱いやすく街中でも至って走りやすいバイクでした。
ただし、想像と違う点がひとつ。
それは“乗ってしまえば軽いバイク”ではなかったことです。
なんだかんだ今まで試乗した『GSX-R1000R』や『KATANA』などのリッターモデルも重量は200kgを超えていて、リッターバイクの中では相対的に軽い方とはいえ、絶対値的には重いのに変わりありません。
ですが、乗ってしまえばヒラヒラと軽い印象がありました。
今回の隼も車重はさらに重い264kgですが、これも案外軽く動くのでは? と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。
しっかり重いですね!
でも、この“重い”はどっしりと安定感のある重さ、という意味であって、マイナスに感じるようなものは何もありませんでした。
うーん、なんだか不思議なバイクだなぁ……。
一見優しそうな性格に思えるけれど、これはスズキのスポーツ系フラッグシップモデル。
一体「アルティメットスポーツ」って何なんだ……?
(下に続きます)
ひと通り街中を走ってみましたが、私の中の『隼』のイメージは街乗りだけでは固まりそうにありません。「思ったより扱いやすい」以上のことを感じ取るには、やはり走りに出るしかなさそうです。
というわけで次回は高速道路に乗ります!
メーターに280km/hが刻まれた『隼』の真価はそこにあるのか……?
To be continued……