ホンダのモンキー(Z50MやZ50J)、ダックスホンダ、スズキホッパーなどの「レジャーバイク」シリーズの対抗馬として、「活発な・元気がいい」という意味合いを持ち登場したヤマハ「ジッピィ」。当時はこの独創性さからか、あまり販売は振るわなかったそう…。発売から50年以上たった今、類を見ないスタイル、車体を改めて見直してみようではないか。
文:栗栖国安/写真:NANDY小菅/まとめ:RIDE編集部

ヤマハ「ジッピィ」インプレ・歴史解説

画像: YAMAHA Zippy 総排気量:49cc エンジン形式:空冷2スト単気筒 車両重量:74kg 当時価格:8万3000円(1973年) ※撮影車両はカラーリングのカスタム等しています。

YAMAHA Zippy

総排気量:49cc
エンジン形式:空冷2スト単気筒
車両重量:74kg

当時価格:8万3000円(1973年)

※撮影車両はカラーリングのカスタム等しています。

1970年代を彩った小型レジャーモデル

1969年のホンダCB750フォアの登場をきっかけに1970年代はロードスポーツモデルの大型化、高性能化が一気に進んだ。それに伴って国内のバイク市場は活気づき、1980年代のあの空前のバイクブームを引き起こすこととなった。だが、その要因となったのはなにも大型ロードスポーツモデルだけじゃない。125cc以下のいわゆる原付モデルが多種多様なスタイルで登場したこともバイク人気に火をつけたのだ。その代表格がホンダが登場させたモンキーやダックスだった。

遊び感覚で乗れるこれら小型レジャーモデルは、免許を取ったばかりの若者に絶大な支持を得て、爆発的な売れ行きを示した。そして各メーカーから続々と同ジャンルのバイクが登場することとなった。

スズキはモンキーの対抗モデルとしてホッパー50を1971年に発売。1972年から1973年にかけては、バルーンタイヤと呼ばれる極太タイヤを履かせたバンバンシリーズを50から125ccまで揃えた。そうした状況を受けてヤマハは1973年、初の小型レジャーモデルとなるジッピィ50を登場させたのである。バイクに乗り始めたばかりの当時のボクの目に、ジッピィはたしかにユニークなモデルではあったけれど、大きなインパクトは受けなかった。モンキーやダックス、バンバンというあまりにも個性的なモデルがすでにあったので、免疫が付いてしまっていたからなのかもしれない。

けれども、バックボーンフレームをカバーする逆三角形のスチールボディや、5.00-8インチの小径極太のリアタイヤなど、レジャーモデルらしいユニークなボディスタイリングは独自性をうまく表現していた。ミッションは3速で、自動遠心クラッチ式が最初に発売され、その後マニュアルクラッチ式も登場。さらに72ccエンジンを搭載したジッピィ80も投入。自動遠心式とマニュアルを設定していた。

画像1: ヤマハ「ジッピィ」インプレ・歴史解説

自動遠心とマニュアルで幅広いユーザーに対応

ホンダが一貫して4サイクルエンジンを採用していたのに対し、ヤマハやスズキは2サイクルエンジンを小型レジャーモデルに採用していた。たとえば50ccでは、どちらも最高出力は4.5PSだが、最大トルクは2サイクルのほうが高く、結果的に発進加速では2サイクル勢に軍配が上がっていた。

といっても、まあ速さを競うタイプのバイクじゃないので、エンジン性能というよりは使いやすさや走りの面白さで選ばれることが多かった。そのためジッピィも、自動遠心クラッチ3速ミッションで操作を簡略化させたモデルをまず発売し、その後にマニュアルクラッチ3速ミッション車を投入した。さらに72ccのジッピィ80もラインナップしてニーズに応えた。80のほうもやはり自動遠心クラッチ3速ミッション車とマニュアルクラッチ車を揃えていたが、マニュアルクラッチ車に関しては4速ミッションを採用していた。

画像2: ヤマハ「ジッピィ」インプレ・歴史解説

ボクはといえば、ホンダモンキーZ50Zとダックス70を所有したのだけど、ヤマハ車に関してはミニトレ(GT50)とTY80を購入した。このときバイク屋にあったジッピィ50に乗せてもらったのだが、自動遠心クラッチで操作がラクチンで、エンジンも予想以上に元気だった。ただミニバイクレースに出ることも考えていたので、結局ミニトレを買うことにしたのだ。じゃあなんでTY80も買ったのかというと、50と80の2クラスに出場するため。ミニトレではなくてTYにしたのは、軽かったからというのが理由だ。

話が脱線してしまったが、仮に足代わりや遊びだけに使う予定だったら、ジッピィも十分に選択肢に入っていたと思う。もちろん買うとしたら、80のマニュアル4速ミッション車になっていただろうけど。

前後の異径タイヤがミニアメリカンぽさを演出

人生でたった一度だけ、それもわずかな時間ジッピィ50に乗ったのだが、2サイクルで走るのが久しぶりのことだったので、実際には速くなかったけれど中速域からビューンと一気に回転が上がっていくのが力強く感じて、それはそれで面白かった。そのくせクラッチ操作のない自動遠心式で、しかも3速ミッションなのだから、その違和感もまた絶妙である。はっきりいって、レジャーモデルはなんでもアリだ。

跨ったときの第一印象は、シートが長くて座れる場所がいっぱいあっていいなあということと、やたらアップハンドルでアメリカンみたいだなあというもの。要するに、ミニバイクなのにけっこうゆったりしたポジションがとれるんだと感心したのである。

原付を初めて購入したとき「これで日本中どこへでも行ける!」なんて本気で思ったものだけど、ジッピィなら実現できるかもなんて感じた。小径極太のリアタイヤに一抹の不安もあったけど、走りだしてみればまったく気にならない。

むしろ予想外の軽快さにへぇ~と感心したものだ。しかも小さいながらもちゃんとまっすぐに走れる、プロっぽい言い方をすれば、直進安定性がしっかりしているのである。リアキャリアも装備してあるから、ちょっと大げさにいえば、荷物を積んでロングツーリングに出てみたい衝動にかられたのだった。

話が前後してしまうが、ジッピィに搭載されたエンジンは、ビジネスモデルのメイトのエンジンである。だから自動遠心クラッチを採用していたのだ。モンキーやダックスだってスーパーカブのエンジンを使っている。当時はそうした既存のエンジンを流用してさまざまなモデルを創出していた。多くの若者を惹き付けたレジャーモデルを次々と生み出せたのも、ベースとなるエンジンがあったからなのだ。

This article is a sponsored article by
''.