日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな知る人ぞ知るモデルをフィーチャー。今回は連載73回目にして、初のカワサキ車だ!
文:小松信夫

祝・当連載でカワサキ車初登場!(最初で最後かも?)

この連載をずっと読んでくださっている人(いるのかね?)はお気づきでしょうけど、今まで基本的にホンダ・ヤマハ・スズキのローテーションが続いてて、カワサキを取り上げたことがなかったんですよ。

10年くらい前まで? はカワサキにも現地生産のローカルモデルとかあったんですけどね。2ストのアンダーボーンスポーツとか。でもカワサキは最近ぐっとモデル数を絞り込んでまして、利益率の高い大きな排気量のモデルばっかり、しかも世界中どこに行ってもほぼ同じモデルを売ってるんで、最近は海外のホームページのチェックすらしてなかったんですね、私。

画像: 祝・当連載でカワサキ車初登場!(最初で最後かも?)

するとついこの間、インド・カワサキが新たにW175を販売する、というニュースが! ちょっと興味深かったので、今回連載開始1年半を経て初のカワサキ車登場となりました。最初で最後のような気もしますが。

W175というのは、東南アジアのあちこちで売られてる、カワサキ製ローカルモデルの香りをかろうじて感じさせるモデルで。日本でも昔売ってたエリミネーター125なんかと同系列の177cc空冷単気筒エンジンを、実用車っぽいシンプルでオーソドックスな車体に搭載。レトロで重厚なWシリーズのエッセンスをプラスしたクラシカルな香りと、お手頃な価格が売りのモデル。

画像: Kawasaki W175 インド仕様車 総排気量:177cc エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒 シート高:790mm 車両重量:135kg

Kawasaki W175
インド仕様車

総排気量:177cc
エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒
シート高:790mm
車両重量:135kg

これがインドで新たに発売されるW175ですけどね。丸っこい赤いタンクには、クラシカルな子持ちラインやニーパッド、Wシリーズであることをアピールするバッジが。ブラックのボディカラーの方は、バッジがない代わりに少し安くなってる。大径の丸型ヘッドライトとかの機能部品は、狙ってレトロにしたというより、シンプルで安価なものを作ったらこうなった、という感じ? 左側面のリアサス後ろにサリーガードが付いてるのがインド仕様らしい。ごついタンデムグリップもあるし、やはりタンデム需要は無視できないらしい。

画像: Kawasaki W175SE インドネシア仕様車

Kawasaki W175SE
インドネシア仕様車 

W175は現在も、インドネシアやタイ、フィリピンなんかでも販売されてます。例えばこれはインドネシアの2023年モデルに用意されてるW175SE。タックロールシート、ミニバイザー、チェッカーパターン入りのスポーティなカラー、色の付いたリアサスのスプリングなんかでレトロスポーツ感を演出…。

画像: Kawasaki W175TR インドネシア仕様車

Kawasaki W175TR
インドネシア仕様車 

個人的に刺さったのはコレ、インドネシア仕様のW175TR。アップフェンダー、アップハンドルで、マフラーも形状を変更。アンダーガードも付いてる。カラーリングも1970年代風、昔のカワサキ製のオフロード風味ミニスポーツ、KM90っぽい仕上がり。ネオレトロスタイルのモタードって感じですかね。

画像: Kawasaki W175 タイ仕様車

Kawasaki W175
タイ仕様車

これはタイで売ってるW175。カラーリングもディテールも、素っ気ないほどシンプル。実用車的な感じで売られてる?

画像: Kawasaki W175 フィリピン仕様車

Kawasaki W175
フィリピン仕様車

これはフィリピン向けモデル。タイ仕様と基本的に同じシンプルな構成だけど、カラーリングはシックで、シートもちょっぴり上質な造りだ。

このように、基本的にW175はボディカラーだったり、ディテールだったりを販売される国に合わせて微妙に変えてる以外は、メカニズム的にほぼ共通…のはずだったんですけども。今回出たインド仕様はそうじゃなかった。

画像1: インドネシア仕様車

インドネシア仕様車

エンジンの中身はおそらくほぼ共通。実はこのエンジン、古典的な空冷単気筒かと思えば、クランクケース前方にバランサーを内蔵してて、振動を抑えることを重視してたりします。で、従来はキャブレター仕様だったんだけども。見えますよね、銀色のキャブレターが。

インド仕様車

インド向けモデルでは、インジェクション化されてんですよ。シリンダーヘッドの左側がキャブレターじゃなく、スロットルボディになってるのかお分かりでしょうか。あんまり写真良くなくてアレですが。それに合わせて、シリンダーヘッド周りにも追加された補器類の配管がうねっておりますな。インド最新の排出ガス規制、BS6は日本の現行規制と同じくEURO5に準じている厳しい内容なので、キャブ仕様ではもうクリアできないのか。エキパイも形状が変わってて、触媒が内蔵されたみたい。

画像2: インドネシア仕様車

インドネシア仕様車

あとですね、W175は元々からフロントがディスクブレーキなんですけど。

画像2: インド仕様車

インド仕様車

これがインド仕様では地味にABSになってるのでした。ローターの内周にABS制御のために速度を検出するのに使うスリットが設けられてますよ。これもインド国内でABSが義務化されたから、ということのようで。

画像3: インドネシア仕様車

インドネシア仕様車

メーターも従来型はこんな感じ。シンプルなアナログ速度計、かろうじてトリップメーターは装備してますが。盤面デザインとかメッキリングとかでW感を感じさせてます。

インド仕様車

えー、非常に画質が悪いんですが、これがインド仕様のメーター。アナログ速度計だけど、盤面に補助液晶を埋め込んだちょっぴり今時なスタイル。インジケーターも数が増えてますが、ABSとかインジェクション関連の警告灯が追加されてるんでしょう。

画像: Kawasaki W175 インド仕様車

Kawasaki W175
インド仕様車

なんかね、インド向けのW175は各種規制への対応と商品性向上のために、いろいろ手が入ってる。13億の人口を背景にした巨大市場・インドで売るとなれば、少々コスト掛けてでも改良するんだねぇ。というか、今後もバリバリ売る気なんだろうな、インドで売るからには年に何千台? という規模で。多分、他の国に向けたW175も、インド仕様に準じて今後アップデートされていくんだろうな。

文:小松信夫

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