CB900Fに代わるレーサーのベース車として1980年に発売されたCB1100Rは、生産台数が少なかったため多くのユーザーが手にすることができなかった。その技術を広く楽しんでもらうために造られたのがCB1100Fだった。

ホンダCB1100Fの特徴

1983年型のみ存在、高性能を誇るCB-Fの最終モデル

1979年のFZに始まったCB-Fシリーズ。その最後を締めくくるのがCB1100Fだ。デビューは1983年で、ヨーロッパ市場ではCB900FD/F2Dとともに販売、1982年型でCB900Fが姿を消した北米では、CB-Fの名を受け継ぐ唯一のモデルとなった。

並列4気筒は、CB900Fの64.5×69mmに対し、ボアを5.5mm広げることで、160.4㏄増の1062.2ccに排気量を拡大。この数値はCB1100Rと同じだが、多くの部品を専用設計品に置き換えたR用とは異なる。

とはいえ、欧州仕様は110PS、北米モデルは108HPという高性能を発揮。これは、CB1100Rフルパワーの120PSと比較しても引けを取らず、CB-Fファンを十二分に満足させるものであった。

欧州モデルは18/17インチのブーメランコムスターホイールを採用、CB900Fに近い造形の車体を用いたが、北米向けは専用設計のビキニカウルや前後ホイールを採用して独自性を前面に押し出した。両仕様とも赤×白と青×白がある。

ホンダCB1100FD(1983)欧州仕様

画像: ホンダCB1100FD(1983)欧州仕様

1982年のCB900FCを思わせる外観だが、後輪を18→17インチに小径化、スイングアームを丸パイプから1983年型CB1100Rと同様な30×55mmのスチール製角断面材にするなどの変更を実施。

アンチノーズダイブ機構を持つΦ39mm正立式フロントフォークや、下端部に別体式ガス室を置くリアショックなどはCB900FC/F2C以降の機種と同じだ。軸距: 1520mmはCB900系と共通だが、キャスターは1度大きな28度30分に、トレールは10mm長い120mmに変更。

空冷DOHC4バルブ並列4気筒はフルパワーのオーストラリア/南アフリカ向けが、110PS/8500rpm、9.4kg-m/7500rpmを公称。

ドイツ/オランダ仕様が100PS/9000rpm、8.55kg-m/7500rpm、フランス/欧州一般モデルが、104PS/8500rpm、9.0kg-m/7500rpmといくつかの仕様があった。

キャブレターは、メインボアをCB900Fより1mm大径な33mmとするVB56Aで、左右2本出しの排気系は、クランクケースやシリンダー/シリンダーヘッドとともにブラック仕上げとされる。

CB900Fと同様にオイルクーラーを標準装備するが、コアの段数は4→8に増やされる。クランクケース左右に置かれる銀色のカバーは1100専用である。

ホンダCB1100FD(1983)北米仕様

エンジン本体の基本は欧州向けと共通ながら、車体の仕様を改めて雰囲気の異なるモデルに仕上げたCB1100Fの北米モデル。ビキニカウルと角形ヘッドライトが外観上の大きな特徴で、スピードメーターとタコメーターを1枚レンズで覆った専用設計の計器類をカウル内側に埋め込んでいる。

グリップが高位置にあるハンドルは3分割構造で、絞り角の調整機構を持つ。ステップを支持するアルミプレートも欧州仕様とは異なり、ライダー用のステップを大きく前方に移動。前述したハンドルと相まってゆったりとしたライディングポジションを得ている。

F:2.50×18、R:3.00×17のホイールサイズは両仕様に共通だが、北米向けでは6本スポークを備えるアルミキャストホイールを採用。これも外観の大きな特徴となる。

またこのホイールは、アクスルシャフトの貫通部から遠い位置にブレーキディスクの固定ボルトを受けるネジ穴を持つため、F:Φ276mm、R: Φ296mmのブレーキディスクはハブの形状が異なる(ディスク径はCB-F全車に共通)。

片押し式2ピストンキャリパーは欧州仕様1100FDやTRACを持つCB750/900Fと共通。なお。撮影車はブレーキホースを社外品に交換しているが、STDは前ページの欧州向けと同外観である。

1520mmの軸距や820mmのシート高、28度30分/120mmのキャスター/トレール、243kgの乾燥重量などは欧州モデルに通じるが、全長/全幅/全高は2230/805/1125mmに対し、2175/810/1200mmを公称。

F:100/90V18、R:130/90V17のタイヤサイズは両仕様に同じ、フロントの銘柄も共通だが(BS:L303 DUNLOP:F11)、リアは異なる銘柄を指定した(BS/DUNLOPの順で、北米:G508/K627、欧州:G510/K527)。

ホンダCB1100FD(1983)欧州/北米仕様の主なスペック

《 》内は北米仕様

全長×全幅×全高2230×805×1125《2175×810×1200》mm
ホイールベース1520mm
最低地上高145mm
シート高820mm
車両重量(乾燥)243kg
エンジン形式空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量1062.2cc
ボア×ストローク70.0×69.0mm
圧縮比9.7
最高出力110PS《108HP》/8500rpm
最大トルク9.4kgf・m/8000rpm
燃料タンク容量20L
変速機形式5速リターン
キャスター角28゜ 30'
トレール量120mm
タイヤサイズ(前・後)100/90V18・130/90V17
ブレーキ形式(前・後)Φ276mmダブルディスク・Φ296mmシングルディスク

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