ヤマハ「SR400」の最終型が2021年3月15日に発売された。43年にも渡る歴史にピリオドを打つこととなる。変わらないことで、歩み続けた特別な存在の歴史をいま一度振り返ってみたい。
文:中村浩史/写真:折原弘之

ヤマハ「SR400」発売からファイナルエディション登場までの歴史

画像: ヤマハ「SR400」発売からファイナルエディション登場までの歴史

初登場からキミは充分にオールドタイマー

ヤマハ・SR400は、ホンダ・スーパーカブを除く、国産オートバイの中で、最も長寿なモデルだった。

誕生は1978年3月。人気絶頂だったキャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と解散コンサートを開いたのが4月、ジャイアンツの王貞治選手が800号ホームランを打ったのが8月だった。

オートバイで言えば、並列6気筒DOHC24バルブのホンダCBXがデビュー。これから1980年代を迎えようとする時代に、オートバイは4気筒へ、DOHCエンジンへと、高性能化を突き進もうとしていた。

そんな時代にSRは登場した。500ccオフロードモデルの空冷SOHC2バルブ単気筒をベースとした400ccエンジンを、なんの変哲もないスタンダードなシルエットに搭載したその姿は、当時ですら充分に古臭かった。

同じクラスには、3バルブツインのホンダCB、DOHCツインのスズキGSがあり、カワサキは2ストロークトリプルのKHを持っていたし、翌年にDOHCエンジンの400FXをリリースする。

もちろん、オートバイはやっぱりシングルだよナ、という熱狂的な声はあったにせよ、ごく少数。こうしてSRは、生産中止になるほど不人気ではないけれど、人気モデルでもない、という立ち位置で販売が続けられるのである。

徐々にSRの存在が強くなってきたのは、まわりのオートバイたちがどんどん先鋭化していってからだ。80年代初頭には、英国車を模したファッションカスタムが、走らないはずの空冷単気筒を力いっぱい走らせるシングルレース向けチューニングバイクが現われるようになる。

街中にすら水冷4気筒DOHCエンジン、フルカウル、アルミフレームがあふれた80年代終盤、いよいよSRの存在感は際立っていく。

ピークは90年代中盤。SRの異常人気が爆発する。

画像: 初登場からキミは充分にオールドタイマー

90年代を迎える前にあわや生産中止の危機に

実はSR人気は、1989年に底を打ったことがあった。年間販売台数は1500台そこそこで、おそらくSRの販売期間中最低ランクの数字。

ちなみにその年の400ccクラスベストセラーはVFR400Rの約1万台! SRは、この31年後の2020年にさえ約2500台が販売されている。ヤマハ社内で、何度もSRの生産中止が真剣に討論されていた時期だ。

しかしSRはそこから盛り返した。一度はディスクブレーキ化したのにドラムブレーキを再採用する。そして、レーサーレプリカブームも終焉。ミドルクラスにネイキッドモデルがあふれる中、新顔たちよりずっと以前から「本物のオールドマン」SRがいたのだ。

ついに96年には約9000台まで販売台数を伸ばし、SRはベテランエンスージアストも、免許取り立てのファッションバイカーも虜にする。

この頃はショップによるSRカスタムも最盛期を迎え、シングルレーサー系からスポーツバイク風、クラシックテイストにトラッカースタイルのSRが生まれたのだ。

画像: 90年代を迎える前にあわや生産中止の危機に

生きながらえてきた恐竜に排気ガス規制が襲い掛かる

SRの転機は2000年代にやってきた。ちょうどこの頃、市販モデルに厳しい排気ガス規制がかけられるようになり、空冷+キャブレターのSRが、いよいよ存続の危機にさらされるのだ。

しかし、ここまで大きな変更なく20余年も生き続けてきたSRは、排気ポートに排ガス浄化のための「エアインダクション」を追加して難題を克服。500ccモデルは生産中止となってしまったが、400はアイデンティティのひとつであるドラムブレーキを手放してまで、生き延びることに成功するのだ。

その後も規制強化のたびに、SRはキャブレターからインジェクションになり、マフラーにはキャタライザーを仕込んで排気ガス規制をクリア。どんなに難しい局面からも逃げずに、真っ向から延命への道を模索し続ける。

その頃のSRは、もう初期の頃のモデルで味わえたような、ビッグシングルらしい鼓動を味わえることもなく、SR人気を支えたカスタム熱も徐々に冷め始めてしまった。

けれど、唯一無二の空冷単気筒エンジン、そしてキックスタートの儀式は、SRが決して手放そうとしなかったキャラクターだった。

SRファンは、その不便さを許容する大人たちだった。

画像: 生きながらえてきた恐竜に排気ガス規制が襲い掛かる

さようならヤマハSR。僕たちは、寂しくなるよ

SRの個性に転機が訪れた2000年代から20年。ついにその時がやってきた。SR400の最終モデル「ファイナルエディション」が、発売からちょうど43年目の21年3月に発売されるのだ。

最終モデルは、ファイナルエディションとリミテッド。そのうち1000台限定のリミテッドはアッという間に完売、2021年3月15日に発売されるファイナルエディションも予約が殺到し、ファイナルエディション発売の発表から数週間で、約6000台もの予約が入ったのだという。

ファイナルカラーはブルーとダークグレー。歴代のSRの人気カラーをオマージュした配色。

なくなって初めて、その重大さに気付くことってある。さようならSR。ありがとう。

画像: さようならヤマハSR。僕たちは、寂しくなるよ
画像: ありがとうSR   ヤマハ発動機 www.youtube.com

ありがとうSR  ヤマハ発動機

www.youtube.com

ヤマハ「SR400ファイナルエディション」「SR400ファイナルエディションリミテッド」主なスペック・価格

全長×全幅×全高2085×750×1100mm
ホイールベース1410mm
最低地上高130mm
シート高790mm
車両重量175kg
エンジン形式空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
総排気量399cc
ボア×ストローク87.0×67.2mm
圧縮比8.5
最高出力18kW(24PS)/6500rpm
最大トルク28N・m(2.9kgf・m)/3000rpm
燃料タンク容量12L
変速機形式5速リターン
キャスター角27゜40'
トレール量111mm
タイヤサイズ(前・後)90/100-18M/C 54S・110/90-18M/C 61S(前後チューブタイプ)
ブレーキ形式(前・後)シングルディスク・ドラム
メーカー希望小売価格60万5000円《リミテッドは74万8000円》(消費税10%込)

This article is a sponsored article by
''.