小椋、幻の3位表彰台……

いやしかし、今回もとんでもないレースでした! MotoGP第5戦オーストリアグランプリ。舞台はKTMのお膝元、レッドブルリンクです。7月19日の第2戦スペイングランプリから5週で4戦目のレース。しかも来週もここレッドブルリンクでレースがあるという連戦の真っただ中です。

前戦チェコグランプリで「小椋4戦(ほぼ)全戦表彰台」(注:表彰台を逃したヘレス2は他ライダーに巻き込まれての転倒だから)と評して物議をかもした、このWebオートバイですが(笑)、その小椋 藍(ホンダTeamアジア)は今回、5列目13番手からのスタート。
しかし、これは小椋がタイムアタック中に「トラックリミットオーバー」をしたペナルティで、区間タイムをひとつキャンセルされてしまったから。

この「トラックリミットオーバー」とは、コース幅いっぱいからハミ出してしまったらなんらかのペナルティを受ける、というルールで、そのペナルティは、予選ではタイム抹消だったり、決勝ではロングラップペナルティ(決められた遠回り区間を走らなきゃいけない)だったり、降着だったり。
そして、この「トラックリミットオーバー」が、今回のドラマのひとつとなるのです。

画像: 今回は後方からの追い上げとなった79小椋

今回は後方からの追い上げとなった79小椋

Moto3決勝レース、スタートからいつものように大集団の戦いが始まります。予選順位の日本人最上位は2列目6番手の鈴木竜生(SIC58スクアドラコルセ/Honda)で、鈴木はいつものようにスタートから先頭集団でのレースを展開。トップ集団は10台ほどの大集団で、11番手以下の集団とくっついたり離れたり。予選13番手スタートの小椋、16番手スタートの佐々木歩夢(レッドブルKTMテック3)が、この第2集団。ここから、小椋がこの集団を引っ張りはじめます。

5~6周目あたりから、この集団がくっついて14~15台がトップからタテ長につながります。日本人ライダーの中では、小椋&佐々木が周回ごとにペースを上げ、鈴木が集団にもまれてしまいます。あぁ、タツキの悪いパターンの展開になっちゃった。

レース後半になると、後方から追い上げた佐々木が存在感を見せ始め、5~6番手へ。ただし、相変わらず順位を入れ替わりは激しく、接触も多いのがこのクラス。小椋は5~6番手にいた次の週に13~14番手にポジションダウンした周もあり、見ている方はまるで落ち着きません。

画像: 写真は前戦チェコGP この倍くらいのトップ集団でした

写真は前戦チェコGP この倍くらいのトップ集団でした

そろそろ終盤、の18周目あたり、佐々木が仕掛けます。トップ3~4台でのバトルの混乱のスキをついて一瞬トップに浮上! しかし、ここで佐々木は「トラックリミットオーバー」を取られてロッグラップペナルティを課せられてしまいます! これで一気に20番手あたりまでポジションダウン! あぁぁぁぁ!としょげていたら、来た来た来た来た藍が来た!

小椋はラスト3周あたりまで展開を見ていたのか、20周目あたりからスパート! ラストラップに入る瞬間あたりまで7~8台のバトルにもまれていたものの、ラストラップにファステストラップマークして、最終コーナーまでにポジションをひとつずつあげて3位でフィニッシュ! おぉぉぉ!やっぱり最後まで足ためてたか!と日本人の開幕から5戦連続表彰台に安堵していたら、なんと小椋と、その背後でフィニッシュしたダリン・ビンダー(CIPグリーンパワー/KTM)も「トラックリミットオーバー」を取られ、1ポジション降着の憂き目で小椋は4位……。小椋に代わってセレスティノ・ビエッティ(SKYレーシングVR46/KTM)が繰上り表彰台だと思ったら、そのビエッティも「トラックリミットオーバー」を取られ、6番目にフィニッシュラインをくぐったジョン・マクフィ(ペトロナスSR)が3位表彰台を獲得しました。やれやれ。

画像: グランプリ2年目の小椋藍 2年目とは思えない落ち着き、それは人柄もレース展開も

グランプリ2年目の小椋藍 2年目とは思えない落ち着き、それは人柄もレース展開も

「バイクはいい感じだったんですが、タイムロスする区間も多くて、トップグループでレースができませんでした。それでもスピードはあったので、レース終盤までにポジションを回復できました。最終ラップ、勝負できる位置にいられなかったのが問題ですね。それに予選順位は本当に大事です。今回のレースは満足していませんが、来週もう一回ここであるレースへフィーリングは悪くないです」(小椋 藍)

□オーストリアGP Moto3正式結果
①アルバート・アレナス ②ジャウミ・マシア ③ジョン・マクフィ ④小椋 藍 ⑤セレスティノ・ビエッティ ⑥ダリン・ビンダー ⑦トニ・アルボリーノ ⑧デニス・オンチュ ⑨ラウル・フェルナンデス ⑩鈴木竜生
□ポイントランキング(第5戦終了時)
①アルバート・アレナス/95P ②ジョン・マクフィ/67P ③小椋 藍/65P ④鈴木竜生/50P ⑤ラウル・フェルナンデス/43P ⑥セレスティノ・ビエッティ/41P

Moto2長島は無念のリタイヤ

画像: 絶好調の開幕2戦からちょっと調子を落としている?長島 巻き返しだッ!

絶好調の開幕2戦からちょっと調子を落としている?長島 巻き返しだッ!

第3戦ヘレス2での予選中の転倒からちょっと調子を崩していつつ見える長島哲太(レッドブルKTM-Ajo)は、ヘレス2とチェコで11位、そしてこのオーストリアでは予選18番手から10周目に転倒しリタイヤしてしまいました。
レースは長島のチームメイト、ホルヘ・マルティンがMoto2クラス初優勝! 2着にはいったルカ・マリーニ(SKYレーシングVR46)が、このレースで転倒ノーポイントとなった、レース開始までのポイントリーダー、エネア・バスティアニーニ(イタルトランスレーシング)を逆転してランキングトップに躍り出ました。
「切り替えて次のレースに臨まないと! リセットして来週、またここでレースがあるんだから挽回するチャンスがある!」(長島哲太)
開幕戦優勝という華々しいスタートをきった哲太、最新ランキングでは5位までダウンしてしまいましたが、まだまだトップまで23ポイント差! 幸い、ランキングトップ5は、みんな1回以上ノーポイントレースがありますから、長島もぜんぜんチャンピオン争いの圏内! 巻き返せ巻き返せ!

□オーストリアGP Moto2正式結果
①ホルヘ・マルティン ②ルカ・マリーニ ③マルセル・シュロッター ④サム・ロウズ ⑤シャビ・ビエルヘ ⑥マルコ・ベッツェッキ ⑦トマス・ルティ ⑧アウグスト・フェルナンデス ⑨アロン・カネット ⑩ジョー・ロバーツ
□ポイントランキング(第5戦終了時)
①ルカ・マリーニ/78P ②エネア・バスティアニーニ/73P ③ホルヘ・マルティン/59P ④サム・ロウズ/59P ⑤長島哲太/55P ⑥アロン・カネット/43P

画像: ヘレス2では脳震盪となりながら11位にまとめた長島だったが……

ヘレス2では脳震盪となりながら11位にまとめた長島だったが……

MotoGPでも大混乱!

決勝レース前に、今シーズン限りでアンドレア・ドビツィオーゾがチームを離れる、という発表をしたドゥカティ。2016年に開催がスタートしたここオーストリアは、2019/17年にドビツィオーゾが勝った地だし、18年にはドゥカティ在籍中のホルヘ・ロレンソが、16年にはドゥカティ在籍中のアンドレア・イアンノーネが勝った、つまりドゥカティ全勝のサーキット。そんなレースの前にエースライダーの離脱を発表するかね……ってムードの中でのレースでした。

公式予選では、マーベリック・ビニャーレス(モンスターヤマハ)がポールポジションを獲得。ドゥカティ勢はジャック・ミラー(プラマック・ドゥカティ)が2番手、ドビツィオーゾが4番手とやはり絶好調。決勝レースも、そのミラーの快走で周回を消化していきます。

画像: 中断前、序盤からレースを引っ張る43ミラー

中断前、序盤からレースを引っ張る43ミラー 

ミラー、ドビツィオーゾ、さらにポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー)、ジョアン・ミル(Teamスズキエクスター)、ビニャーレスらのトップ争いの中から、なんとエスパルガロがトップに浮上! これは前戦チェコに続くKTMの連勝もあるのか!と思ったらしかし、ジョアン・ザルコ(エスポンソラマ/ドゥカティ)とフランコ・モルビデリ(ペトロナスSRT/ヤマハ)が接触してマシンが大破! これでレースはレッドフラッグが提示され、20周の仕切り直しレースとなります。

画像: 絡んで転倒した2台のマシンがビニャーレスとロッシの目前をスッ飛んでいきました……怖かったぁ……

絡んで転倒した2台のマシンがビニャーレスとロッシの目前をスッ飛んでいきました……怖かったぁ……

再開されたレースでは、再開前と同様にミラーが先行、そこにエスパルガロとドビツィオーゾが迫りつつ、エスパルガロは8周目にミゲル・オリベイラ(レッドブルKTM-Tech3)の転倒に巻き込まれて転倒、リタイヤしてしまいます。

画像: 再開後、2位に上がった42リンスは惜しくも転倒! かわってミルが2位フィニッシュ

再開後、2位に上がった42リンスは惜しくも転倒! かわってミルが2位フィニッシュ

これでレースは、ミラーをかわしてトップに立ったドビツィオーゾがミラーとの差をキープし、終盤には徐々に引き離しながらトップでフィニッシュ! 2位には最終ラップでミラーをかわしたミルが、キャリア初の表彰台を獲得! スズキにとっても、今シーズン初表彰台となりました。

画像: 心中穏やかじゃなかったはずのドビツィオーゾ 勝ってドゥカティを見返してやったぜ

心中穏やかじゃなかったはずのドビツィオーゾ 勝ってドゥカティを見返してやったぜ

しかしドゥカティは、ライダーの離脱を発表して、すぐにそのライダーが勝っちゃうというパターン、2018年にロレンソのパターンでもやってなかった? 今シーズン、これからドビツィオーゾが強くなる予感を残して、また次週に同じ場所で行なわれるオーストリア2に向かうことになります。

日本期待の中上貴晶は、予選でQ2ストレート進出は果たしたものの、4列目10番手スタート。赤旗提示後のレースでは、ジリジリとポジションを上げる中上らしい走りを見せて6位でゴール。レース中、ずっとバレンティーノ・ロッシ(モンスターヤマハ)とポジション争いをしての6位、なにかロッシから得るものがあったかも!

「トップ6でのフィニッシュはうれしいですね。赤旗中断後のレースはなかなかすごくて、3コーナーでミスをしてポジションを下げてしまったのが悔しかった。今週末、またここでレースがあるので、表彰台争いをしたいです」(中上貴晶)
同じコースでの2週連続レースは、日本人選手に向いてるんじゃないか、と前回のヘレス2で書いた通り、今週末のオーストリア2を待ちたいですね。

□オーストリアGP MotoGP正式結果
①アンドレア・ドビツィオーゾ ②ジョアン・ミル ③ジャック・ミラー ④ブラッド・ビンダー ⑤バレンティーノ・ロッシ ⑥中上貴晶 ⑦ダニロ・ペトルッチ ⑧ファビオ・クアルタラロ ⑨イケル・レコーナ ⑩マーベリック・ビニャーレス
□ポイントランキング(第5戦終了時)
①ファビオ・クアルタラロ/67P ②アンドレア・ドビツィオーゾ/56P ③マーベリック・ビニャーレス/48P ④ブラッド・ビンダー/41P ⑤バレンティーノ・ロッシ/38P ⑥中上貴晶/37P

写真/motogp.com MICHELIN Redbull-KTM-Ajo 文責/中村浩史

This article is a sponsored article by
''.