ダカールラリーを知り尽くした男・三橋 淳がいよいよ新型アフリカツインを満喫するこの連載企画。今回は待望の<S>でいよいよ慣らしです! 目的地の千里浜なぎさドライブウェイを目指してひたすら走ります。で、その慣らしとはどのように行ったのか? エンジンは何回転で走ったのか? 具体的な慣らしの方法とともに、千里浜の絶景をお楽しみください!

※今回の撮影、および取材は緊急事態宣言が全国に発令される以前に、3密を避けた環境下で行われています。また、今回の記事は不要不急の外出やツーリングを推奨するものではありません。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、皆様もどうか不要不急の外出はお控えくださいますよう、ご協力よろしくお願いいたします。

ダカール・ラリーを思い出しながらのんびりクルーズ

画像: ダカール・ラリーを思い出しながらのんびりクルーズ

というわけで、千里浜を目指して走り出す。と言っても、目的は慣らし運転。適当に走ってもいいのだが、そこはちょっとしたこだわりを見せたい。まずはタイヤやブレーキの慣らしも込めて、100kmまではのんびり巡航。こういう時はオートマ感覚で走れるDCT&クルーズコントロールが助かる。クルーズコントロールを時速80キロに設定して、高速道路を楽々クルージングである。

こういう走りをすると、ダカール・ラリーを思い出すなぁ。

画像: ダカール・ラリー2020のひとコマ。これはケビン・ベナバイズ選手。 https://www.honda.co.jp/DAKAR/

ダカール・ラリー2020のひとコマ。これはケビン・ベナバイズ選手。

というのも、砂漠や土漠を激走するのがダカール・ラリーではあるけれど、そのエリアに移動するまでには、いわゆる「リエゾン」と呼ばれる、ただ移動するだけの走行区間があるのだ。リエゾンの走行ルートは一般道だったり高速道路だったりとさまざまで、長い時には1日で300〜400kmも走らされることもある。もちろん、競技区間であるオフロードとは別にだ。

しかも、一般道を走る時にはGPSで監視されていて、現地の法定速度である時速120キロを越えるとペナルティがかかってしまうのだ。だから、そのために時速115キロになると、GPSから「気をつけろよ」というアラームが鳴るのだが、それがうるさいのなんの。

だから、アラームが鳴らないように時速113キロくらいで走るんだけど、それがかったるいのだ。だって、周りの現地のクルマは時速120キロぐらいで走っているんだから。速度としては相当のんびりなのだ。

エンジンが滑らかに回るよう、入念に、入念に…

画像: エンジンが滑らかに回るよう、入念に、入念に…

そんなことを思い出しながら100kmほど走る。さて、本番はここからだ。

ここからは思い切り走ってもいいと思うのだが、エンジンがより元気に回ってくれるように、手順を踏んで回転数を上げて行こう。まずは4000回転で走行。次に5000回転、そして6000回転、さらに7000回転と、約30分ごとの定回転走行! しかも、一気にじゃなくて徐々に回転を上げていく。

もちろん法定速度を越えるわけにはいかないから、エンジンの回転数を上げるたびにギアも1段下がる(笑) そこはジレンマだが、仕方がない。

よし、こんなもんかな。これでまんべんなくエンジンの慣らしが出来たはずだ。と思いながら走行していたら、低速で走行しているトラックにつかまってしまった。しかも運悪く一車線区間…。まぁ慣らしだしいいか、と思いながらしばらく後ろに付いて走行する。

低回転域もしっかり慣らし。これが大きな違いを生むのだ

やっと2車線区間になったところで、加速しようとスロットルをゆっくりと捻った。

あれっ? 少しトルク感が弱いな。エンジン回転は3000回転付近、慣らしは十分したつもりだが、低回転域の慣らしが不足なのかな?

画像: 1995年、ネバダラリーで勝った時に乗っていたXR。BAJA1000を走ったホンダのワークスマシンに刺激を受けて、2か月かけて自作したカウルがポイント。

1995年、ネバダラリーで勝った時に乗っていたXR。BAJA1000を走ったホンダのワークスマシンに刺激を受けて、2か月かけて自作したカウルがポイント。

昔ホンダのXR乗りだった私は、XRならではの低回転トルクというか粘りが大好きだった。特にエンストギリギリの低回転からアクセルを開けて行った時に、立ち上がってくるトルクのフィーリングがすばらしいのだ!

オフロードライディングでは、これがかなり大事なファクターになる。XRは空冷のシングルエンジン、アフリカツインは水冷の2気筒。同じトルクの出方を期待するわけではないが、この領域できっちり慣らしを行って、よりよいパフォーマンスを出すようにしたいのだ。

ということで、さっき弱いと感じた状態をもう一度再現してみる。6速をキープして、低回転から3000回転~4000回転まで、スロットルをゆっくりと捻って回転を上げていく…やはり弱い。

るこれを何度も繰り返してみる。一気にアクセルを開けるとノッキングするので、ノッキングをしないように丁寧にアクセルを開けていく。初めのうちはノッキングしちゃうけれど、何度か繰り返していくと、だんだんノッキングしなくなってきた。

いいぞ! もっと下の回転数も欲しいので、今度はさらに250回転ずつ落としてからの加速をくり返す。2750~4000回転、2500回転~4000回転、2250回転~4000回転、2000回転~4000回転…。そして極めつけは1750回転からの加速! これをそれぞれ約10分程度繰り返してみた。

画像: 低回転域もしっかり慣らし。これが大きな違いを生むのだ

ここまで丁寧に慣らしをやると、低回転域でのもたつきがかなり解消されてくる。とはいえ、流石に1750回転からの加速は、なかなかノッキングが消えずに苦労したけどね。

でも頑張った分だけ、しっかりフィーリングが変わってくれた。こうなると綺麗にエンジンが高回転域まで回ってくれるようになる。なかなかいい感じだ。

もうこれで準備万端! これは、撮影当時、交通量がほとんどなかった東海北陸道だからできたことで、急な加減速をしたら危ないのは当然のこと。慣らしをするなら、まず周りをよく見てからやらないとダメだ。もちろん、混んでいる交通状況なら無理にやる必要はないので念のため。

我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

画像1: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

そうこうしているうちにたどり着いたのは今浜海岸! そう、海岸を走る国道、千里浜なぎさドライブウェイの南側の入り口だ。晴れているとはいえ、平日の寒空の下だと誰もいない(笑)。

画像2: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!
画像3: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

思い切り走りたい気持ちになるが、そこはぐっと抑える。だって、タイヤがノーマルのロードタイヤだからね。ここで転んだらせっかくの新車が台なしだ。記念写真だけ撮って帰ることにする。それにしてもとても気持ちがいい場所だ。ライダーに人気が出るのもわかるよ。

画像4: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

海岸線を気持ちよく走る! この感覚はまさにダカール・ラリーのビクトリーランそのものだね。

ダカール・ラリーにはビクトリーランというものがある。最終日に完走者全員が一斉スタートして、みんなでダカールの海岸沿いを走るのだが、最初の頃は南下して、つまり海を右手に見ながら走っていた。

ところが、その方向で走ると海岸線のうねりが大きくて、最終日なのに選手がクラッシュすることが多かったので、後半からは北上する、つまり海を左に見て走る形になった。私がバイクでダカール・ラリーに参戦した時は、この左手に海を見ながら走るルートになっていた。

画像5: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

気持ちいねぇ! 本当ならここで遊び回りたいくらいだよ。

画像6: 我慢の慣らしの後には絶景が待っていた!!

でも、今回はあくまで慣らし運転が目的なので、そそくさと帰路につく。ノーマルのロードタイヤだし、新車で転んだら精神的ダメージ大きいからね(笑)。大人は大人しく帰路に着くのです。

帰り道はクラッチのつながり調整をじっくりと…

慣らしは行きでほぼほぼやりつくした感はあるのだが、セルフのガソリンスタンドでガソリンを入れて発進した時に、妙に半クラッチのつながりが長い気がした。

私のアフリカツインはDCT。クラッチ操作がないので簡単なんだが、オートマチックだから、クラッチのつながりが自分の感覚と若干ずれることがあるのだ。

画像: 帰り道はクラッチのつながり調整をじっくりと…

そういえば試乗会の時に聞いた説明では、アフリカツインは全て電子制御でコントロールされていて、ライダーの乗り方を学習するって言っていたのを思い出した。

慣らし運転はほぼマニュアルモードで走っていたからかな? と思い、今度はシフトップする瞬間を狙って加速するようにしてみた。要するに、クラッチをパッと繋いで欲しいからだ。学習機能があるなら、それを覚えてくれるはずだ。と言っても、あまり乱暴にやってクラッチを滑らせては元も子もないので、あくまでジェントルに。

何回かやってみてパーキングエリアで止まり、発進時の半クラの具合を確認する。お、なんかいい感じになってきた!

ライダーの乗り方に合わせて変化するということが分かったから、もう意識して加速する必要はない。元気に走り回れば、十分機械が学習してくれるということ。逆に、いつまでものんびり走っていたのでは、元気な状態にはならないってことなのだ。

というわけで、気がつけばオドメーターは500kmを超えていて、メーカーが言う「500kmの慣らし運転」は完了! あとは新車点検でオイル交換をすれば完了だ!

協力:ホンダモーターサイクルジャパン、有限会社野口装美
写真:三橋 淳、柴田直行

【次回予告】500キロの慣らしも無事終了。でも不要なお出かけはしない、ということで、アフリカツインのメンテとカスタムに精を出してみました! 次回「ステキな自分仕様」をお楽しみに!

アフリカツインについてもっと知りたい人はコチラ!

「アフリカツイン 北駆南走」バックナンバーをイッキ読み!

三橋 淳の新型アフリカツイン・インプレッションはコチラ!

三橋 淳 公式サイト

This article is a sponsored article by
''.