※この記事は月刊オートバイ2018年5月号で掲載したものを加筆修正しております。
「やきゅう」で繋がる今と昔

埼玉県の沈下橋「島田橋」
今回向かったのは、埼玉県東松山市に鎮座する箭弓稲荷神社(やきゅういなりじんじゃ)。箭弓は「矢弓」の意味で、元々は武家に信仰された神社だったそうです。
しかし、なんてったって読み方が「やきゅう」ときたもんだから…。ご想像の通り、今は野球少年や野球ファンをはじめ、多くの野球関係者にも信仰されています。

箭弓稲荷神社
埼玉県東松山市箭弓町2-5-14
関越自動車道の東松山ICと、東武東上線の東松山駅に挟まれた地域に鎮座している箭弓稲荷神社。広い駐車場もあります。石で作られた歴史を感じる鳥居と、朱色の鳥居のコントラストが目を見張る。1300年以上の歴史を有しながら、その名前から連想される「野球」との縁も深い。まさに昔と今が共存する神社です。
もともとの意味と違うカタチになっても、全く問題なし! 日本の神様は寛容だなぁと、つくづく思います。
こちらの神社が建った時、その時代には野球は存在していないですからね〜。

絵馬にも「やきゅう」のイラストが描かれていました。
建てた人たちが今の時代にタイムスリップしてきたら、どう思うでしょうか。カタチが変わったことをとやかく言うよりも、今も長く続いていることをきっと喜んでくれるでしょう。
創建は1300年以上前と言われています。大昔の人と会ったことはないけれど、繋がることが出来た気がしました。

バットの形をした絵馬は、流石に初めて見ました。ミュージシャンにもいいかもしれませんね…。ヒットを出すために!
野球選手、野球ファンの皆さん、今シーズンの活躍を誓いに参拝してみてはいかがでしょうか!
その他にも境内には、歌舞伎役者の7代目市川団十郎が信仰したと言う神社もあります。こちらは芸術関係の参拝者が多いのだとか。鳥居が何本も並んでいて、曇り空に重なる朱色が印象的でした。
神社一口メモ

最近ブームと言われている御朱印。コチラの御朱印は、なんとギネス記録に認定された世界一の大きさ!
もちろん、貰えるのは普通の大きさなのでご安心を(笑)。

参拝前は手水舎(ちょうずや)で手と口を清めます。見落としそうな手水舎の天井に発見が。こちらの天井には鳥や虎などの様々な絵が描かれていました。これは珍しい。

おみくじや、絵馬に願いを書くのも神社巡りの楽しみの一つ。

この神社には「水に溶けるおみくじ」があります。始めはなぜ? と思いましたが、「よくない事は水に流す」という意味があるそうです。
遺跡の謎に迫る! 「吉見百穴」へ
次に向かったのは、箭弓稲荷神社から約3kmの所にある遺跡の吉見百穴(よしみひゃくあな)。
読んで字のごとく、とてつもない数の穴が岩山の斜面に開けられているのです。疾走っていると、近づいていることが景色の変わりようでわかります。おもむろに岩山が現れ始めたと思うと、すでに幾つかの穴を確認できます。
目の前に到着して見上げた時、そのスケールに息を呑みました! 迫り来るような岩の壁、そしてそこに開けられた無数の穴。

吉見百穴
埼玉県比企郡吉見町大字北吉見324
営業時間:午前8時30分~午後5時
入園料 中学生以上:300円
昔の人が建てた建築物も素晴らしいですが、古代の人が残した生活の跡も興味深いものです。岩山に開けられた無数の穴は、見る者を圧倒します。目的は何だったのか。その謎は今も多くの人を惹きつけています。
まず他では見られない遺跡でしょう。その穴は、実際には200を超えているそうです。
この遺跡は古墳と考えられています。実際に岩の壁に触れてみると、なるほど、軟らかいことがわかります。昔の人でも、穴を開けやすかったんですね。
古墳だと言う説の他、伝承上の小人コロボックルの住居と言う説もあります。謎めいた雰囲気のせいか、特撮ヒーロー物の悪の秘密基地としてロケ地になることもあるのだとか。

戦時中に地下軍需工場を建設するため、岩山に大きなトンネルが掘られました。中は、想像以上に冷んやりとしていました。

埼玉県の銘菓、五家宝(ごかぼう)。吉見百穴に隣接するお茶屋さんにも、手作りのものが売られていました。お米の歯応えと、反する水飴の粘り。それを、きなこが上手く纏めていました。

五家宝(110円)と一緒に、焼だんご(300円)もいただきました。熱いお茶も頂きながら、冷えた身体を充電。
僕の音楽に欠かせないハーモニカ製造工場を見学!
僕の演奏スタイルは、アコースティックギターを抱え、ハーモニカを首からかけての弾き語り。
実はギターよりも、ハーモニカを始めたほうが先でした。そして夢中になり、プロになりたくて上京してきたのです。
その熱は冷めることなく、二十歳の僕はあるメーカーの本社へ飛び込んだのです。
突然にもかかわらず、なんとメーカーの人は想いを聞いてくださったのです。そのメーカーこそ、初めてハーモニカを吹いてから20年も吹き続けているトンボ楽器製作所です。

トンボ楽器製作所
今では、ハーモニカは僕の音楽に欠かせないものになっています。そして現在、僕が使わせていただいているハーモニカは、すべてトンボ楽器製作所にサポートしていただいています。
この日の最後に訪れたのは、戸田市にあるトンボ楽器製作所の埼玉工場です。驚くことに、ハーモニカ製造の工程のほとんどが手作業!機械化できない程、細かく繊細なのです。
集中という静けさのなか、職人の皆さんが一つずつ丁寧に作っておられました。

ハーモニカは、リードという金属の部品が振動して音を発します。隙間が大きいと息が漏れてしまい、狭いと吹きづらくなってしまいます。職人に求められるその隙間は、なんと0.03ミリ! 驚きです。

世界中に出荷される大量のハーモニカを、検音されていました。これも手作業。

僕のハーモニカも、もちろんこの工場で作っていただいた物です。小さい楽器ですが、多くの人の想いが込められています。
文:佐々木優太/写真:関野 温