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世界のアドベンチャーバイクファンに愛されるアフリカツイン。多くのファンがそれぞれのツーリングや冒険旅行を楽しんでいる姿は、SNSでも多く投稿されている。同時にそこから生まれた要望や、人気セグメントであるアドベンチャーツアラーのトレンドをさらにキャッチアップすべく、CRF1100Lとしてフルモデルチェンジされた。走りに、装備に、新しく拡張された内容を一言で表現すれば「アフリカツインらしさをさらに煮詰めたような味わい」になったのだが、ファンは早速買い換える理由をいくつも見つけることになるだろう。

■試乗・文:松井 勉 ■撮影:渕本智信 ■写真・協力:ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)

画像: Honda CRF1100L Africa Twin Test Ride WEB Mr. Bike www.youtube.com

Honda CRF1100L Africa Twin Test Ride WEB Mr. Bike

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CRFアフリカツインのお復習い

2016年2月。アフリカツインが日本にも帰ってきた。CRF1000Lアフリカツインは、国内販売予定台数をわずかな日数で予約がそれを上回る快調な滑り出しを見せた。MT車のほか、ホンダ独自のDCTモデルが用意され、そのDCTにはオフロードでのアクセルワークに対する追従性を高めるため、クラッチをダイレクトに繋ぐG(グラベル)スイッチも装備されるなど、ほかのアドベンチャーバイクにはない特徴も光った。事実、DCTは想像以上にオフロードでの親和性が高い。

エンジンも特徴的だ。先代XRVアフリカツインはVツインを搭載したが、CRFでは直列二気筒に270度位相クランクを入れて搭載。このエンジンは、前輪21インチ、後輪18インチのタイヤ。そして長いサスペンションストローク。オフロードをしっかり意識した車体にしながら、オン、オフを問わない高いアジリティーを両立するための重量配分の具現化や低重心の追求にも優位だった。狭角Vツインに位相クランクを入れた初代。そのモデルと同様の不等間隔爆発として、その排気音までも再現して見せた。エンジン形式というカタチではなく実を取った作り込みがホンダらしい。

初代アフリカツインがオマージュしたパリ~ダカールレーサー、NXR750も45度という狭角Vツインでエンジン単体前後長を短くしたが、一次振動をキャンセルでき、トラクション特性に優れた90度Vツインと同様の爆発間隔を得るため、位相クランクを用いていたエピソードはおなじみ。二つの異なる要件を一つの器で実現する。それが技術なのだ。

2017年にはマフラーなどの改良もあり、よりパンチのあるサウンドと、パワーとトルクも向上させて登場。「規制が厳しくなるから音もパワーも落ちるんでしょ」という一般論を払拭。ツインサウンドが印象的になった。

さらに2018年には、24リットルタンクを装備し、よりサスペンションストロークの長い長距離ツアラーとしてアドベンチャースポーツが登場。また、スロットルバイワイヤーが採用され、ライディングモードが導入された。Tour、Urban、Gravel という3つのモードにUserという好みのモードにセットできるモードを加えた4モードが用意された。それぞれのモードで、HSTC(ホンダ セレクタブル トルク コントロール)やエンジンブレーキなどパラメータは好みに調整することもできる。

2019年モデルではETC車載器がETC2.0に変更され、カラーリングなども変更を受けた。こうしてみると、2016年から2019年までもしっかりと進化をしているのが解る。

画像: CRFアフリカツインのお復習い

2つのキャラをそれぞれ強く打ち出す

CRF1000Lアフリカツインが登場したとき、『True Adventure』というキーワードと、オン、オフを問わない走破性と楽しさ、日常性をも高い次元でまとめたパッケージは見事だった。今作、CRF1100Lアフリカツイン、CRF1100Lアフリカツイン・アドベンチャースポーツも、その基本コンセプトを踏襲している。

新型の開発は次の3点を軸に行われた。一つ目は軽量化。これは取り回し性能や運動性能の向上の要だ。メインフレームの形状、アルミ製として別体になったサブフレーム、スイングアームの刷新、エンジンのシリンダースリーブのアルミ化、ミッションなどを見直し達成している。

二つ目は出力の向上。タンデムやラゲッジを積載した場合でもゆとりのある走行性能を得るためと、エモーショナルな走りの原資であるパワーの向上だ。吸気系の最適化やストロークを伸ばし、排気量を84ccアップしたエンジン、マフラー内に排気バルブを取り付けるなど排気系の刷新により得られている。

三つ目は快適、安心を支える装備の追加だ。6.5インチTFTカラーモニターの採用、クルーズコントロールの装備、また、アドベンチャースポーツには、コーナリングライトやチューブレスホイールも新たに採用した。

“アフリカツイン”はよりダイナミックでエキサイディングに。“アドベンチャースポーツ”は遠くに、もっと過酷な挑戦をしたい、というライダーのマインドに応えるものへしっかりとそれぞれの個性を明確化しているのだ。

画像: 左、中央は、アフリカツインアドベンチャースポーツES DCT、右アフリカツインDCT。

左、中央は、アフリカツインアドベンチャースポーツES DCT、右アフリカツインDCT。

ひと騒動──

新型アフリカツインの国内でのお披露目の場として選ばれたのは東京モーターショー、ホンダブースだった。ここで、国内仕様のアフリカツインシリーズ全車がローダウン仕様となる旨が発表される。

販売の現場で足着き性、シート高は思いのほかシビアだという話は多く聞く。しかし世界の未舗装路を旅できるバイク、アフリカツインにとって、そのスペックの象徴ともいえるサスペンションストロークを短縮し、ローダウンのみの販売というのがファンに声を上げさせた。

スタンダードのサスペンションを装着したモデルも販売して欲しい。そんなSNSなどを通じメッセージが多方からあがり、販売を担当するHMJはわずかな時間で双方を購入できるようにする方針を打ち出した。

これにはファンも一安心。この12月から大型AT免許の排気量制限も(ようやく)撤廃され、アフリカツインのDCTモデルが選択肢に入ってきた。ローダウンバージョン、スタンダードサスバージョン。選択肢があること。これこそ良質のユーザーサポートだと思う。

フレームは軽くタイトに

メインフレームは一見すると先代とよく似ているが、形状を変更して剛性バランスも見直しがされている。ステアリングヘッドからスイングアームピボットを結ぶメインチューブの幅を従来型よりも狭め、上から直線的に見えるような形状へとなったのだ。

生産ラインでフレームにエンジンを搭載するために、フレームの右ロアパイプを組み立て式にしていたものを新型では一体式に。その分、エンジンハンガープレートを別体式にすることで、生産時のエンジン積載性をカバー。以前、他機種のフレームの設計者の話だが、別体式より一体式のほうが剛性バランスが取りやすいと聞いたことがある。そんなメリットもあるのだろう。

また、従来型ではステアリングヘッドの後ろ側にクロスパイプが入っていたが、新型ではそれを省いている。開発時、テストライダー達がそのクロスパイプを取り外してみたところ、ハンドリングが理想的な方向に近づいたことを発見。その連絡を受けた設計者は肝心な部分を切り取ったことに冷静でいられるハズがなかったそうだが、とにかく乗ってみてくれと言われ、そのテスト車に試乗すると、なるほど良いフィーリングだった。

そこでクロスパイプをなくした分、ステアリングヘッド下側のガセットプレートの形状や鉄板の厚みを見直すことで、理想的なハンドリングを維持したまま、オン、オフでの性能をグレードアップできたという。

また、別体としてさらにサブフレーム取り出し部分の幅を従来型より40mm絞ることで、先代と同じシート高でもライダーが足をまっすぐに下ろせる分、足着き性は向上させている。これはポジションの要でもあるシート位置だけを下げずに足着き性向上を図れる機能となった。
 
リアスイングアームもアーム部分をCRF450Rなどと同様にアルミチューブ製とすることで、剛性を確保しながら軽量化もはかれている。

画像: フレームは軽くタイトに

エンジンはパワーアップと軽量化を敢行

CRF1000Lが登場した当時、アフリカツインのキャラクターは独自のもので、1200㏄クラスのモデルが持つ重厚でプレミアムな感覚よりも、ピュアなマルチロードツアラーとして高い存在感を持っていた。特にその良さがにじみ出るのがパニアケースなどを装着せず軽装でオフロード走行をしたとき。長いサスペンションストロークと扱いやすいエンジン特性に「これだ!」と思わず走りながら声をあげたことがある。

しかし、パニアケースに荷物を入れて荷重が増えた状態で長い山岳路を走ったりすると、確かにパワーやトルクにゆとりが欲しくなったのも事実。ツーリングペースでシフトダウンすらサボってアクセルだけで加速をするときのゆとりのような部分が欲しいのだ。シフトダウンして回せばもちろんパワフルではあるのだが。
 
また、それまで1200㏄あたりが上限だったライバル達が、可変バルブタイミングシステムの採用や排気量のアップで、アクセルの微少開度領域でのトルク感を上乗せしてきた時期とも重なって、アフリカツインにもモアパワーという声は世界からも要望として届いたにちがいない。

詳細は写真キャプションでご覧いただくとして、ボアはそのまま、ストロークを6.3mm伸ばすことで、排気量を84㏄拡大。最高出力は70kW→75kWへ。最大トルクは99N.m→105N.mへと向上させた。もちろん、吸気系の諸元変更もあり、アクセルを開けた時のフィーリングが良さそうだ。エンジンパーツ軽量化もあり、先代よりもエンジン重量が軽いというのも注目点だ。

1台目は注目の電子制御サス装着車

テスト会場はモトスポーツランドしどき。これは2016年、アフリカツインが復活したときに選ばれたメディアテストの会場と同じだ。午前中はオフロードコース内、午後は一般道で新型を試すスケジュールだ。

最初は注目の、アドベンチャースポーツES。ショーワが開発したEERAサスペンションを装着したモデルで、減衰圧を適宜状況に合わせ瞬時に可変させるいわばセミアクティブサスだ。

個人的にも直近の10年で4台目のアドベンチャーバイクと暮らす今、WP製のフルアジャスタブルサスペンション装着車から乗り換えたその後の3台は、メーカーこそ違うがザックス製セミアクティブサスを装備したモデルだ。

合計8万キロに渡って使ってきて、セミアクティブサスの恩恵はやはり大きいと感じている。性能面を声高に言うつもりはない。が、ライディングモードに呼応したサスペンションセッティングの変化、走る場面を問わず過度な動きを絶妙に是正し、快適な乗り心地を提供してくれるところは正直すごい。

自分では気がつかないのだが、同じ道でバイクを乗り換え、コンベンショナルなサスで走ると「えー、こんなに道が悪かったの!」と驚いたことは一度や二度ではない。

持てるテクニックを駆使しながら走る場面より、周囲の交通や景色、あるいは路面変化や雨の場面など、ほかのことに注意を向けたい場面などで乗り手を緊張させない黒子的なところがスゴイのだ。海外ブランドではなく、ホンダがセミアクティブを味付けしたらどうなるんだろう。これは長年待っていた、期待の瞬間が来た。

画像: 1台目は注目の電子制御サス装着車

まずは冷静にコクピットドリルならぬスイッチ類の操作法を確認する。TFTモニターは見やすい。エンジンを始動すると、先代よりスムーズでメカノイズが少なく洗練された印象がある。振動も少ないようだ。DCTモデルだったのでDにシフトしてゆっくりとアクセルを開く。アイドリングから少しだけ回転があがったところでスムーズに動き出す。このあたりもDCTの進化が感じられる。なにより、エンジン始動からDにシフトできるまでのタイムラグがすごく少ない気がする。

その動き出しに満足してコースに出た。オフロードコースでの試乗だから一部にはアフリカツインには厳しいギャップもある。試乗しているのはローダウンモデル。ストロークも少ないからなおさらだ……。しかし、その心配をよそに想像以上にスムーズな姿勢変化でしかない。なによりカーブへのアプローチでバイクを寝かすとき安心感と一体感、そして軽快さがある。

タイヤのグリップもわかりやすい。オフコース用にタイヤはOEMからコンチネンタルのTKC80に交換されているが、先代のアドベンチャースポーツに乗ったときより軽快感が立つ。アクセルを開けた瞬間のトルク感が厚く、旋回中のパワーオンにも一体感がある。とにかく軽快で楽しい。

ブレーキング時の姿勢変化もライダーがさほど配慮しなくても前のめりにはならないピッチングの少なさだ。もっとペースを上げてみるべきか。徐々にスピードを上げてみる。ギャップで前後のタイヤとも宙に浮く。そして着地の瞬間、ガツンとくるかと思ったら、シュンとサスペンションが受け止めた。

さらにペースをあげるとさすがにストロークを使い果たしてしまうが、その直前までの粘りがいい。車輪が地面から浮いたと判断するとサスペンションも着地に備えるというから、このEERAというサスペンションはできるとみた。

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