フレームカバーで違いを!

スズキはウルフという車名を古くは1969年から繰り返し使ってきた。50㏄モデルに限定しても、1982年に登場したレジャーバイク、ウルフRT50というモデルも存在しているのだが、ここでは1989年にデビューしたウルフ50について触れてみよう。

画像: フレームカバーで違いを!

そもそも1980年代末、レーサーレプリカブームに陰りが見えてきた中で、各メーカーは新しいスポーツバイクのスタイルを模索していた。そんな中で生まれて結果的にネイキッドというジャンルを確立する大ヒットになったのがカワサキ・ゼファーなのはよく知られているところ。

実はゼファーとほぼ同時期、同時多発的にさまざまなスタイルのカウルを持たないスポーツバイクがデビューしていたことは今では歴史の彼方というべきか。その中には、レーサーレプリカをベースにカウルを取り払った、今でいうところのストリートファイター的なモデルも存在していた。

レーサーレプリカの元祖であるスズキでも、4ストのGSX‐Rをベースにしたネイキッドモデルをコブラと、そして2ストのΓをベースにしたモデルをウルフと名付けていたのだ。

ウルフにはRGV‐Γ250ベースの250、RG125Γベースの125と200が存在し、そして最小排気量モデルとしてRG50Γベースの50が用意されていた。ウルフ50のベースとなったRG50Γは、Γシリーズの中でも、元祖レプリカとその名も高いRG250Γよりも早い、1982年末にデビュー。

MBX50、RZ50、AR50といった当時のフルサイズ原付スポーツの中で、角パイプダブルクレードルフレーム、アルミキャストホイール、フルフローターサスという排気量を感じさせない充実装備の軽量な車体に、7・2PSという当時クラス最強の水冷エンジンを搭載。Γの名に恥じない走りで人気を集め、一度もモデルチェンジされることなく2000年まで販売された長寿モデル。

1989年にデビューしたウルフ50はこのRG50Γとエンジンや車体など、メカニズムやスペックはほぼ共通のものといえる。RG50Γではメーターバイザー付の角型だったヘッドライトを、オーソドックスな丸形に変更してネイキッドスタイルに変身させ、ハンドルバーの位置もRG50Γより高くされてアップライトなポジションとしたモデル。

一見するとダブルクレードルフレームのRG50Γとは異なるツインチューブフレームのようにも見えるが、これは実のところ樹脂製のカバーを本来のフレームの上に装着しているから。カラーリングはブラックとレッドの他に、ワイルドなイメージのファイヤーパターンも存在した。RG50Γ譲りのスポーティさと、シンプルなスタイルが根強く支持されたウルフ50は、細かなマイナーチェンジを受けながらRG50Γ同様に2000年まで販売が続けられた。

画像: 外装パーツの多くをはじめ、スタイリングの基本的な部分でもRG50Γと多くが共通なウルフだが、最小限の変更によってシンプルでスポーティなネイキッドスタイルに変身を遂げている。

外装パーツの多くをはじめ、スタイリングの基本的な部分でもRG50Γと多くが共通なウルフだが、最小限の変更によってシンプルでスポーティなネイキッドスタイルに変身を遂げている。

DETAIL

画像: 「REAL SPRINTER」の文字が入った車体側面のこの部分。これはフレームではなく、RG50Γと共通のフレームの上から装着されたカバーなのだ。エンジンはRG50Γと同じ水冷2スト・ピストンリードバルブ。

「REAL SPRINTER」の文字が入った車体側面のこの部分。これはフレームではなく、RG50Γと共通のフレームの上から装着されたカバーなのだ。エンジンはRG50Γと同じ水冷2スト・ピストンリードバルブ。

画像: ウルフのフロントフォークは、1990年以降のRG50Γと共通のANDF(アンチ・ノーズ・ダイブ・フォーク)の装備されていない正立タイプ。フロントブレーキはトキコの1ポット片押しキャリパーに、φ170㎜ローターを組み合わせる。

ウルフのフロントフォークは、1990年以降のRG50Γと共通のANDF(アンチ・ノーズ・ダイブ・フォーク)の装備されていない正立タイプ。フロントブレーキはトキコの1ポット片押しキャリパーに、φ170㎜ローターを組み合わせる。

画像: 1990年にRG50Γのリアホイールが18インチから17インチに変更されたのと同時に、3本スポークの新デザインを採用。その時期に登場したウルフ50もリア17インチの3本スポーク。2次減速比はRG50Γとは異なる。

1990年にRG50Γのリアホイールが18インチから17インチに変更されたのと同時に、3本スポークの新デザインを採用。その時期に登場したウルフ50もリア17インチの3本スポーク。2次減速比はRG50Γとは異なる。

画像: ハンドルはセパレートのままだが、ハンドルバーの位置を高く変更しポジションをネイキッドスポーツらしいアップライトなものとした。ネイキッド化でメーターバイザーはなくなったが、メーター自体はRG50Γと共通。

ハンドルはセパレートのままだが、ハンドルバーの位置を高く変更しポジションをネイキッドスポーツらしいアップライトなものとした。ネイキッド化でメーターバイザーはなくなったが、メーター自体はRG50Γと共通。

画像: レーサーレプリカらしさが残るテールカウルは1990年モデル以降のRG50Γに装着されているものと同じ。筆文字風でグラデーションの入ったデザインの「WOLF」ロゴが、黒いボディによく映えている。

レーサーレプリカらしさが残るテールカウルは1990年モデル以降のRG50Γに装着されているものと同じ。筆文字風でグラデーションの入ったデザインの「WOLF」ロゴが、黒いボディによく映えている。

画像: スリムな形状の燃料タンクは、1982年にデビューした初期型RG50Γから基本的に変わっていないデザイン。容量は11Lが確保されていて、このクラスの中ではかなり大きめのものだ。

スリムな形状の燃料タンクは、1982年にデビューした初期型RG50Γから基本的に変わっていないデザイン。容量は11Lが確保されていて、このクラスの中ではかなり大きめのものだ。

ウルフの名を語る上で……。

89年発売のウルフ50はスポーツバイクから派生したスポーツネイキッドだが、先代の、そして先々代のウルフは個性が異なる一面が。まずは69年発売の初代ウルフは125㏄の2サイクル2気筒の純粋なスポーツバイクだった。当時としては鮮烈な極細の燃料タンクに、独特の3角形フレーム等の特徴が印象的だった。そして、82年発売の先代ウルフは、ガラッと趣向を変えレジャーバイク色を強めたファンビークルに変化を遂げた。前後とも5,40-10サイズの極太タイヤを装備し、フレームを大幅にカバーするデザインなど、レジャーバイクの先輩でもあるバンバンにも通ずる取っ付きやすさを演出していた。

画像: ウルフの名を語る上で……。

文:小松信夫

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