レーサーのスタイルを踏襲しつつ、公道モデルに転用したRならではのフォルム

1984 NS250R(MC11)

画像: 53万9000円で1984年5月に登場した標準モデルで、塗色は写真のシャスタホワイト以外に、スターライトシルバーメタリックが用意された。ホワイト車ではカウルに装着されるバックミラーは同色の白だが、シルバー車では黒に変更。赤のシートは共通ながら、カウル側面にあるHONDAのロゴを持つストライプやフロントフォークを覆うカバーなどがブラックに改められる。

53万9000円で1984年5月に登場した標準モデルで、塗色は写真のシャスタホワイト以外に、スターライトシルバーメタリックが用意された。ホワイト車ではカウルに装着されるバックミラーは同色の白だが、シルバー車では黒に変更。赤のシートは共通ながら、カウル側面にあるHONDAのロゴを持つストライプやフロントフォークを覆うカバーなどがブラックに改められる。

全長/幅/高:2005/720/1125mm
シート高:780mm
車軸距離:1375mm
車体重量:161kg(装)
燃料消費率:36.0km/L ※定地走行テスト値
燃料容量:19L
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
総排気量:249cc
最高出力:45ps/9500rpm
最高トルク:3.6kg-m/8500rpm
変速機:常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ:前100/90R16(54S)・後110/90R17(60S)
チェーンサイズ:520|リンク108
発売当時価格:53万9000円(税込)

1986 NS250R SPECIAL EDITION(MC11)

(1985 チャンピオン・カラー仕様)

画像: NS250RとNS250Fは1984年5月25日に発売されたが、1986年1月22日には写真の"1985チャンピオン・カラー仕様"が登場。フレディ・スペンサーが1985年世界GPで250/500㏄のダブルタイトルを獲得したのを記念したもので、ボディパーツをロスマンズカラーとしている。カラーリング以外に変更はなく、4000台限定にて販売、価格は+1万円の54万9000円とされた。

NS250RとNS250Fは1984年5月25日に発売されたが、1986年1月22日には写真の"1985チャンピオン・カラー仕様"が登場。フレディ・スペンサーが1985年世界GPで250/500㏄のダブルタイトルを獲得したのを記念したもので、ボディパーツをロスマンズカラーとしている。カラーリング以外に変更はなく、4000台限定にて販売、価格は+1万円の54万9000円とされた。

MVX250Fにより2サイクル250㏄クラスへの参入を果たしたホンダだったが、同社にはもうひとつやるべきことがあった。NS500はレースで活躍してはいたが、250㏄クラスで走らせるマシーンを当時は持たず、TZ250のワンメイクとなっている状態を改善するレーサーが求められた。

そこでホンダは、MVX250Fの後継機種となる公道モデルと、2サイクル250㏄レーサーを並行して開発するという手段を選んだ。そうして生み出されたのが、フルカウルを備えるNS250Rとこれを持たないNS250F、そして競技用モデルRS250Rであった。

RS250Rは1984年シーズンのレースに参戦。NS250の2台は1984年5月に発売され、価格は、FがMVX250Fに+1000円の42万9000円、RはFより11万円高い53万9000円とされた。

新開発の水冷2サイクル90度V型2気筒はRS250Rと基本的な構造は共通だが、RとFで別品番のキャブを装着。車体は多くが異なっており、フレームとスイングアームはRはアルミ、Fはスチール製を採用。コムスターの前後ホイールはスポークの形状が違うものを選んだ。

画像: NS250Rが使うフレームとスイングアームで、フレームの基本的な構造はRS250Rと共通。ホンダの公道向け市販車でアルミフレームを使うモデルはNS250Rが最初だった。ヘッドパイプ周辺とスイングアームピボットを持つ左右プレートは鋳造製で、タンク/アンダーチューブやシートレールなどには角断面パイプを使用。フレーム単体重量は10㎏弱で、Fのスチール製に比べて約3㎏軽量と発表された。専用設計のスイングアームは、左右レールをテーパー状として肉抜き孔を与えた独特な外観だ。

NS250Rが使うフレームとスイングアームで、フレームの基本的な構造はRS250Rと共通。ホンダの公道向け市販車でアルミフレームを使うモデルはNS250Rが最初だった。ヘッドパイプ周辺とスイングアームピボットを持つ左右プレートは鋳造製で、タンク/アンダーチューブやシートレールなどには角断面パイプを使用。フレーム単体重量は10㎏弱で、Fのスチール製に比べて約3㎏軽量と発表された。専用設計のスイングアームは、左右レールをテーパー状として肉抜き孔を与えた独特な外観だ。

画像: 水冷ピストンリードバルブ90度V型2気筒は、基本はRS250Rと共通、同一のクランクケースを使う。56×50.6㎜のボア×ストロークより249.3㏄を得ており、最高出力:45ps/9500rpm、最大トルク:3.6㎏-m/8500rpmを発揮(MVX250Fに対し、5ps、0.4㎏-mずつ増大)。2基となったキャブはMVXと同様にスクエアバルブを装備してボディを小型化。後方シリンダー用のチャンバーは、充分な管長を確保しつつシートカウル内に収めるため、大きく湾曲している。

水冷ピストンリードバルブ90度V型2気筒は、基本はRS250Rと共通、同一のクランクケースを使う。56×50.6㎜のボア×ストロークより249.3㏄を得ており、最高出力:45ps/9500rpm、最大トルク:3.6㎏-m/8500rpmを発揮(MVX250Fに対し、5ps、0.4㎏-mずつ増大)。2基となったキャブはMVXと同様にスクエアバルブを装備してボディを小型化。後方シリンダー用のチャンバーは、充分な管長を確保しつつシートカウル内に収めるため、大きく湾曲している。

画像: シリンダーはNS500と同様にNS(ニッケル/シリコン・カーバイド)メッキを施すことで、鋳鉄スリーブを廃止。放熱性を向上、重量の削減に貢献する。

シリンダーはNS500と同様にNS(ニッケル/シリコン・カーバイド)メッキを施すことで、鋳鉄スリーブを廃止。放熱性を向上、重量の削減に貢献する。

画像: 低中回転域でのトルク向上を狙い、ATACと呼ばれる機構を採用。排気ポートにサブチャンバーと開閉式のバルブを配置し、低回転時にはバルブを開いて排気脈動をチャンバー内に導入。圧力波を生み出して混合気を燃焼室内に押し留め、上図のように混合気が圧力波で引き出される"吹き抜け"の状態になるのを抑止し、ピストンを押し下げる力を高めようとするものだ。高回転時にはバルブは完全に閉じる。

低中回転域でのトルク向上を狙い、ATACと呼ばれる機構を採用。排気ポートにサブチャンバーと開閉式のバルブを配置し、低回転時にはバルブを開いて排気脈動をチャンバー内に導入。圧力波を生み出して混合気を燃焼室内に押し留め、上図のように混合気が圧力波で引き出される"吹き抜け"の状態になるのを抑止し、ピストンを押し下げる力を高めようとするものだ。高回転時にはバルブは完全に閉じる。

画像1: レーサーのスタイルを踏襲しつつ、公道モデルに転用したRならではのフォルム

NS250R/Fが発売されたのは1984年5月だったが、ホンダはモデルチェンジを終えたVT250Fを同年2月に発売、さらに9月にはカウルを持たないVT250Zを新たに登場させ、250㏄クラスの一層の充実を図った。

先代の2サイクルスポーツMVX250Fでは、フレームの基本形態や前後足まわりの装備をVT250Fと同様としたが、NS250シリーズでは完全な別物として独自の路線を進んだ。

登場から変更を受けずに販売を継続、1986年にロスマンズカラーを発売しその役目を終えたが、大ヒット作となったNSR250Rへと続くレーサーレプリカという新たな分野を開拓。ホンダ2輪史における重要モデルである。

画像2: レーサーのスタイルを踏襲しつつ、公道モデルに転用したRならではのフォルム

フルカウルのデザインは空気の流れを計算して特性を徹底的に追求。サイドスタンドを格納した際にアンダーカウルと一体化される小さなカバーを装着するなど、細部にまでこだわった開発の跡を見て取れる。

画像3: レーサーのスタイルを踏襲しつつ、公道モデルに転用したRならではのフォルム

タイヤサイズは、RとFに共通で、フロントは100/90-16、リアは110/90-17が標準。フロントウィンカーはアッパーカウル下側の左右に直付けされるが、リア用は短いステーを介してナンバープレート左右に装着される。

NSR250R(MC11)1984年 DETAIL

画像: 黒仕上げのセパレートハンドルはトップブリッジ上方でフロントフォークをクランプ。ハンドルの垂れ角が大きくないことから上半身の前傾は強くない。左右スイッチはMVX250Fと同様に赤で文字を記す。正立式フロントフォークは、当時としては太いφ37㎜のインナーチューブを使用。エアアシスト式で、上端部に見える黒い樹脂キャップの下にエアバルブを配する。調整機構は持たない。

黒仕上げのセパレートハンドルはトップブリッジ上方でフロントフォークをクランプ。ハンドルの垂れ角が大きくないことから上半身の前傾は強くない。左右スイッチはMVX250Fと同様に赤で文字を記す。正立式フロントフォークは、当時としては太いφ37㎜のインナーチューブを使用。エアアシスト式で、上端部に見える黒い樹脂キャップの下にエアバルブを配する。調整機構は持たない。

画像: メーターは3連で、左が180㎞/hスケールの速度計、視認性を高めるためのバイザーを備える中央の回転計は12000rpmが上限で10500rpmからをレッドゾーンとする。右端は水温計で、各メーターとも文字盤は濃紺、数字や目盛り、針などは赤とされる。インジケーターランプはメーター手前に横方向に整列し、左から、左ウィンカー、速度警告灯、オイルプレッシャー、ハイビーム、ニュートラル、右ウィンカー。

メーターは3連で、左が180㎞/hスケールの速度計、視認性を高めるためのバイザーを備える中央の回転計は12000rpmが上限で10500rpmからをレッドゾーンとする。右端は水温計で、各メーターとも文字盤は濃紺、数字や目盛り、針などは赤とされる。インジケーターランプはメーター手前に横方向に整列し、左から、左ウィンカー、速度警告灯、オイルプレッシャー、ハイビーム、ニュートラル、右ウィンカー。

画像: 左右サイドカウルを取り外した状態で、キャブレターを見るにはアッパーカウルを撤去する必要がある。フロントシリンダー上部に置かれるラジエターは、高い冷却性を得るために大型化しながら、フルアルミ製として重量の増加を回避。

左右サイドカウルを取り外した状態で、キャブレターを見るにはアッパーカウルを撤去する必要がある。フロントシリンダー上部に置かれるラジエターは、高い冷却性を得るために大型化しながら、フルアルミ製として重量の増加を回避。

画像: 湾曲したチャンバーの上側、フロントシリンダーとの間に突き出た四角形のパーツがATACのサブチャンバーだ。右ステップ上方に見える丸く黒いパーツは、リアショックのプリロードを変化させる油圧式コントローラーの調整用ノブである。

湾曲したチャンバーの上側、フロントシリンダーとの間に突き出た四角形のパーツがATACのサブチャンバーだ。右ステップ上方に見える丸く黒いパーツは、リアショックのプリロードを変化させる油圧式コントローラーの調整用ノブである。

画像: 小型のアルミ製ブラケットをボルト2本でフレームに固定し、大型の滑り止めラバーを持つ左右フットペグや、ブレーキペダルおよびマスターシリンダーを支持。

小型のアルミ製ブラケットをボルト2本でフレームに固定し、大型の滑り止めラバーを持つ左右フットペグや、ブレーキペダルおよびマスターシリンダーを支持。

画像: チェンジペダルはエンジン側に直接装着される。ペダルは左右とも軽量なアルミ製。

チェンジペダルはエンジン側に直接装着される。ペダルは左右とも軽量なアルミ製。

画像: 燃料タンクはRとFでデザインは共通、19ℓとやや多めの容量も同じ。タンクキャップを受ける部分を少し盛り上げた造形が特徴的だ。

燃料タンクはRとFでデザインは共通、19ℓとやや多めの容量も同じ。タンクキャップを受ける部分を少し盛り上げた造形が特徴的だ。

画像: シートは標準的なダブルで、パッセンジャー用は充分な広さを確保。シートカウル左側面にある小さなフタの内部にはヘルメットホルダーが隠されている。燃料タンク下側からテールライト側面までを一体化、滑らかなラインを実現。

シートは標準的なダブルで、パッセンジャー用は充分な広さを確保。シートカウル左側面にある小さなフタの内部にはヘルメットホルダーが隠されている。燃料タンク下側からテールライト側面までを一体化、滑らかなラインを実現。

画像: フロントブレーキは、φ256㎜ソリッドディスク+ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーの構成で、ブレーキをかけた際のキャリパーのわずかな動きを利用してフロントフォーク下端部のバルブを作動させ、フロントの過大な沈み込みを抑制するブレーキトルク応答型アンチダイブ機構、TRACを装備する。

フロントブレーキは、φ256㎜ソリッドディスク+ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーの構成で、ブレーキをかけた際のキャリパーのわずかな動きを利用してフロントフォーク下端部のバルブを作動させ、フロントの過大な沈み込みを抑制するブレーキトルク応答型アンチダイブ機構、TRACを装備する。

画像: リアブレーキは、φ220㎜ソリッドディスクと片押し式2ピストンキャリパーの組み合わせ。撮影車のブレーキホースはステンレスメッシュに交換されているが、STDは黒いゴムホースを使用する。スイングアームはRS250Rとは別物、専用設計品だ。

リアブレーキは、φ220㎜ソリッドディスクと片押し式2ピストンキャリパーの組み合わせ。撮影車のブレーキホースはステンレスメッシュに交換されているが、STDは黒いゴムホースを使用する。スイングアームはRS250Rとは別物、専用設計品だ。

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