金曜、土曜とドライコンディションで、かえって日曜の天候が心配されたアルゼンチンGP。土曜の夜半には少し降ったという情報もありましたが、日曜は3クラスともドライコンディションで決勝レースが行なわれました。
その日曜のメインレース、MotoGPクラスは、マルク・マルケス(ホンダ)が優勝! それも2位以下に9秒8差をつけてのブッチギリ、しかもゴールライン手前でピットレーンに陣取るスタッフの声援に応えるべくスローダウンしての9秒8差でしたから、実際には12~13秒差での圧勝。これでマルケスは、6回目のアルゼンチンGPで3勝目、そのほかは転倒とペナルティ降格という「優勝かノーポイント」というすさまじいレースをやっています。
ポールポジションからスタートしたマルケスは、ホールショット獲得したと思ったら、スタートからぐんぐんとスパート。1周目を終わって2番手以降と1秒の差をつけたと思ったら、2周目に2秒4、3周目に3秒1と、6周目には約5秒という大量リードをキープ。この異次元の速さは、25周のうちの24周も2番手との差を広げる一方という凄まじさで、近年ここまで差がついたレースも珍しかったんじゃないでしょうか。
「パーフェクトなレースだった。金曜のFP1から集中してマシンを作って行って、途中すこしミスもあったけれど、決勝レースではスタートからスタートしていこうと思っていたんだ。序盤5周のペースが僕らのアドバンテージだと思っていたから、最初からスパートして、あとはラップごとに差を広げて、タイヤもマシンも労わって走ることができた。今日のバイクは本当にスイートだったよ!」とマルケス。
開幕戦の2位に続いての優勝で、GPがヨーロッパに戻る前に大量ポイントを稼ぐという、最高のシーズンインになりそうですね。だって次戦サーキットof Theアメリカでの「アメリカズGP」は、2013年からマルケスはMotoGPクラス全勝、つまり負けなしの最強サーキットですから!
マルケスが独走しすぎてなかなか国際映像にも映らなくなってしまった中、白熱したのはセカンドグループのバトルでした。マルケスが早々と先行する中、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)、ジャック・ミラー(プラマックドゥカティ)、カル・クラッチロウ(LCRホンダ)、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)、フランコ・モルビデリ(ペトロナスヤマハ)が集団を形成。
われらが中上貴晶(LCRホンダ)もこの集団の後方につけています。国際映像も、きっと現地の観客もみんなも、このセカンドグループのバトルに注目していたでしょう。それほど周回ごとに順位を入れ替える接近戦でした。
注目の2番手争い。ドビツィオーゾとロッシがつかず離れずでバトルして、モルビデリやペトルッチ、ミラーを少しずつ引き離し、この集団からビニャーレスが後退。うーむ、ヤマハ勢は予選でビニャーレスがよくて、決勝ではロッシがいい、ってパターンが出来上がってきましたね。今回はそこにモルビデリも加わって、結局はビニャーレスだけが決勝のペースが上がってこないという状況になってしまっていました。ヤマハ重症っていうより、これはビニャーレスの決勝ペースが重症なのかもしれません。
ロッシとドビツィオーゾの2番手争いは、どちらかが引き離すこともなく、ずっとテールtoノーズの戦いが続いて行きます。ストレートではドビツィオーゾがイッキに前に出るんですが、コーナーでロッシが詰める展開。ただ、ここテルマス・デ・リオ・オンダは長いストレートが1本だけで、メインストレートも短いため、なんとかロッシも勝負できる、という状態。「ロッシ・ムービング」と呼ばれる、コーナー進入でブレーキを掛けたままマシンをインに振ってくる、またはアウトに持ち出すのがパッシングに有効なレイアウトでした!
レース後半はずっとドビツィオーゾが前、しかしロッシも離れずに背後にピタリ、という展開が続き、最終ラップにロッシが狙いすまして2番手に浮上! この動き、いつもドビツィオーゾがマルケスにやられて、クロスラインでドビツィオーゾが抜き返す、というパターンのやつですが、ロッシ上手かった!
ドビツィオーゾのインに無理やり入って立ち上がりが苦しくなるなんてことがなく、失速せずに立ち上がるから、さしものドビツィオーゾも抜き返せず、ロッシ2位、ドビツィオーゾが3位フィニッシュ! ロッシは去年7月のドイツGP以来、8カ月12戦ぶりの表彰台。もともとロッシは、ここアルゼンチンとの相性がいいですから、これをもって「ヤマハYZR-M1復活!」とはならないでしょう。もう少し様子みましょうね。
「僕にとってもチームにとっても、またヤマハにとっても表彰台に上がれてよかったよ。しばらく表彰台に乗っていなかったからね、この結果が欲しかった! 金曜からマシンを作って来て、僕も若いころのように走れたし(笑)。ドビツィオーゾよりもペースはいいと思っていたんだけれど、そうはいかなかったね。だからずっと背後について、ラストラップでパッシングしたんだ。最後、ドビ得意のクロスラインでやり返されると思ったけど、よかったよ」とロッシ。
レース後はほっとしていたし、嬉しそうだったし、ちょっと消耗していましたね。だって40歳になってのシーズン、40歳になっての初表彰台なんだから! やっぱロッシが誰かとバトルすると、このレースって燃えますね!
「難しいと思ってはいたけど、ポイントも稼げたし、目標にしていた表彰台に届いてよかったよ。レースは先頭にいてタイヤを持たそうとは思っていたんだけど、バレンティーノに抜かれて、ついて行こうと思ったらもう無理だった。2位がよかったけどね」とドビツィオーゾ。
ドビツィオーゾはもう、全体をコントロールするレースをしていますね。ここでこういうペースで走ってタイヤをセーブして、このへんでスパート、と。ただ今回みたいに、マルケスが想定外な走りをするとコントロールが効かなくなってしまう。それでも3位フィニッシュの今回は、ほぼ計算通りのレースでしょう。予選の1周より決勝の45分、1レースより1シーズンを考えて走るライダーになりましたね、ドビツィオーゾ。
ロッシvsドビツィオーゾの後方では、モルビデリ、ミラー、ペトルッチが4位争い。ビニャーレスはこの3台より1周につき0秒1とか2、遅いんですね。だからこのバトルに加わるというより後方につけて、そんなに離れるほどじゃない、という展開。
その後方にタカ中上、さらに後から予選16番手に沈んだアレックス・リンス(スズキ)が追い付いてきて、レース後半にはリンスは先頭集団に追いつく勢いで前に。出ていきます。クラッチロウは、ジャンプスタートを取られてライドスルーペナルティ、6周目には最下位からの再スタートとなりました。ジャンプスタートには見えなかったけどなぁ……。
タカはビニャーレスのミスを逃さずに16周目にはビニャーレスをかわして8番手に浮上。いったん抜き返されるものの、最終ラップでモルビデリがビニャーレスに接触し、2人とも転倒リタイヤ。タカはこれで、ドライレースでの自己ベスト9位を更新し、7位でフィニッシュしました。前ふたりが転んだタナボタじゃん、と言う人もいるでしょうが、このタイミングにこの位置にいられたからのタナボタですからね。
開幕2レースを終わって、やはりマルケスが抜け出し、ここにドビツィオーゾ、ロッシ、リンスが迫る、という展開になってきましたね。ある意味、大方の予想通り。ここからホルヘ・ロレンソ(ホンダ)も復活してくるでしょうし、どこかでビニャーレスも上がってくるでしょう。
4チーム8人のファクトリーライダーの中で、ケガのロレンソ、ルーキーのジョアン・ミル(スズキ)が出遅れての序盤戦。次戦アメリカズGPは中1週はさんで4月14日が決勝レースです!
来週は全日本ロードも開幕しますからね^^
MotoGP第2戦 アルゼンチンGP正式結果
1 マルク・マルケス ホンダ 41分43秒688
2 バレンティーノ・ロッシ ヤマハ +9.816s
3 アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ +10.530s
4 ジャック・ミラー ドゥカティ +12.140s
5 アレックス・リンス スズキ +12.563s
6 ダニロ・ペトルッチ ドゥカティ +13.750s
7 中上貴晶 ホンダ +18.160s
8 ファビオ・クアルタラロ ヤマハ +20.403s
9 アレイシ・エスパルガロ アプリリア +25.292s
10 ポル・エスパルガロ KTM +25.679s
写真/motogp.com 文責/中村浩史