イタリアンネイキッドの個性と価値観

モンスターシリーズの最初のモデル「モンスター900」が発表されたのは1993年。レプリカブームが終焉し「ネイキッド」と呼ばれることになる、カウルのないスポーツバイクが主流になりつつあった時代だ。それまで主流だったレプリカに比べて、ネイキッドは足回りやフレーム、エンジンをデチューンしたものが大多数。スタイルもクラシカルなモデルをオマージュしたものが多かった。

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そこに登場したモンスターは衝撃的だった。まるで獲物に飛びかかろうとする、猛獣のようなスタイル。美しいトレリス構造のフレームに、当時のメイン機種・900SSから移植されたLツインエンジン…。今も受け継がれるこのスタイルは実に個性的であり、あまりに魅力的だった。

このドゥカティ渾身のスポーツネイキッドには予約が殺到、たちまち大ヒットとなる。これが、今やドゥカティの屋台骨を支えるモンスターシリーズのスタートだ。

魅力的なルックスと、スーパーバイクシリーズにはない扱いやすさで定着していったモンスターだが、そこはドゥカティらしく、単に扱いやすいだけではない、機敏でダッシュ力に富んだ動力性能も重要なキャラクターとしている。当初は空冷のみだったエンジンも水冷4バルブユニットが加わり、足回りやエンジンをグレードアップした「S」や「R」といったグレードも登場してきた。

現行モンスターはミドルクラスの821シリーズと1200シリーズの2本立て。ともに水冷のパワフルなエンジンを積む。キャラクターとしては「スポーツネイキッド」だが、821は手軽さと軽快でバランスのいい運動性能が魅力。1200は瞬発力とその力を利した、スポーティな走りでの猛烈な速さが魅力。ディアベルシリーズより峠道からツーリングまで自然に扱えることで、ドゥカティブランドの中でもトップセールスを誇るシリーズとなっている。(宮崎敬一郎)

“R”の称号は伊達じゃない最もエキサイティングなネイキッド

DUCATI Monster 1200R

画像1: “R”の称号は伊達じゃない最もエキサイティングなネイキッド

モンスター1200Rは、エンジンにトルクフルでスムーズに回るディアベル系の「テスタストレッタ11°」を搭載。パワーモード切り換えやトラコンなどのライディングアシストも装備、足回りには前後ともオーリンズを採用するフラッグシップモデルだ。

まず、このエンジンがこのバイクのキャラクターを濃厚なものにしている。最高出力は150HPだが、これまでのモンスターシリーズの中でも最強の中域トルクとリニアな出力特性が魅力。「スポーツ」モードで4000回転も回せばダッシュ力は強烈! ドゥカティらしくハブダンパーも容量が少なめで、トルクが直に後輪を駆動する感覚。

画像2: “R”の称号は伊達じゃない最もエキサイティングなネイキッド

このRの動力性能は場所を選ばず強力で、どんな回転域からでもスポーツNK最速レベルの暴力的なダッシュ力を発揮する。しかも、9500回転からのレッドゾーンを多少越えるまでストレートにパワーを増す。そのまま引っ張れば、油断していると1299パニガーレをも軽く置き去りにできる加速をするのだ。なかなかのハイパワーエンジンだ。

ハンドリングはやっぱりモンスターらしく、素直で機敏。前後のオーリンズ製サスはバネも減衰もかなり強めのスポーツ指向。軽い車体と相まって、フットワークは軽快で、よく曲がる。タイヤもスポーツ指向の強いハイグリップタイヤ、ディアブロ・スーパーコルサだ。ステップやサイドスタンドがガリガリ接地するくらいのリーンアングルまで寝かしても、余裕で対応してくれる。

なので、街中でのダッシュからスポーティな走りでの立ち上がり加速、コーナリング中のライン変更など、瞬発力が関わる動きは驚くほどダイレクト。しかも、それをサスがしっかり受け止めるので、かなり強引な操作も簡単にこなす。もはやこのスポーツ性能はスポーツNKのレベルではないが、狙っている速度レンジは、リッタースーパースポーツほどの高速域ではない。その分、キレの良すぎるSSたちより応答が大らかで操作しやすいのだ。

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ただ、この前後サス、中高速ワインディングや高速巡航ではしなやかでソフトな動きに感じるものの、100㎞/h以下で流すような走り方では路面からの衝撃をダイレクトに伝える。乗り心地を求めるなら、プリロードや減衰設定を弱めた方がいいだろう。高級ショックだけによく踏ん張るし、動きも滑らかになる。

この1200Rは、マッスルバイクのダッシュ力とSSなみのスポーツ性能、そしてモンスターらしい軽快さによる機動性が楽しめるバイク。アップライトなライポジとSSよりゆったりとした応答性で、全てを気楽に操作できる。エンシンはノンビリ走るには少々ノイジーで気ぜわしいが、勇ましさの演出だと思えば納得できる。こういった走りがドゥカティで一番人気を誇る、モンスターの証であり、魅力なのだ。(宮崎敬一郎)

SPECIDFICATION
全長×全幅×全高 2,121 ×845×1,150mm
ホイールベース 1,509mm
シート高 830mm
車両重量(乾燥) 180kg
エンジン型式 水冷4ストデスモドロミック4バルブL型2気筒
総排気量 1,198.4cc
ボア×ストローク 106×67.9mm
圧縮比 13.0:1
最高出力 150HP/9,250rpm
最大トルク 12.7kgm/7,750rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 17.5L
キャスター角/トレール 24.3°/89mm
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式(前・後) 330mmダブルディスク・245mmディスク
タイヤサイズ(前・後) 120/70ZR17・200/55ZR17

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