60年代のカルチャーをスクランブラーで表現
2015年に発売を開始したドゥカティの「スクランブラー」はすっかり市民権を得て、幅広いバリエーションが用意されているが、その中でも、特徴的なビジュアルで発表時から話題となった「スクランブラー・カフェレーサー」に、今回乗る機会を得た。
このモデルが発表された時、思ったのは「スクランブラーで、カフェレーサー出しちゃうの?」ってことだ。
「スクランブラー」は、車種名に使われたりスタイリングを意識したモデルがこの数年で多数登場するほどメーカーが注目していたキーワードだが、ドゥカティからすれば60〜70年代のリバイバル。一般的なユーザーに定着させたのはどう考えてもドゥカティの功績が大きい。「カフェレーサー」は、50年代のタンナップボーイズを知らなくても、その後の「ロッカーズ」や『ACE CAFE』などは耳にしたことがあるだろうし、どんなスタイルかはイメージできる人も多いはず。そして、どちらもカスタムの世界で独自の成長をしてきたスタイルでもあるし、近年、どちらも世界的なムーブメントとなっているのだ。
とはいえ、「スクランブラー」と「カフェレーサー」は全く違うもの。ドゥカティがどう仕上げてくるのかは、カスタムが好きだったり、ストリートモデルに興味がある人であれば、気にならずにはいられないはずだ。
何気ない日々をを楽しくさせるカフェレーサーの軽快な走り
実車の第一印象は他のスクランブラーよりもコンパクトなイメージ。セパレートハンドルに前後17インチ、シート高そのものもICONよりも15㎜高くなっている上に、パッセンジャー部分がカバーされて盛り上がっていることで、尻上がりなカフェレーサーらしいスタイリングに仕上がっている。ベースがスクランブラーなのは明確なのであるが、すっかりオリジナルなスタイルになっているのが面白いし、カッコ良さもある。もちろん、タイヤをピレリ製DIABLO ROSSOⅡに変更していることがスタイリングに大きく影響しているのは言うまでもない。
今回は街乗りを中心に乗り込んだが、とにかく、フロントの軽快さが際立っていた。低重心なこともあって押し引きの軽さにも嬉しくなったが、走らせたときの軽快さは交差点をひとつ曲がるだけですぐに分かる。加えて、低回転域はもちろんのこと、全域でスムーズな力の伝わり方をするので、排気量は803㏄だが、乗り疲れする印象はなく扱いやすい。大型に乗り慣れていない人や、女性だとしても乗りこなすことはそう難しくないだろう。
ハイブリットなスタイリングや、シックな仕上がりは好みが分かれるところだ。だが、都内を走っていて信号で停まると、立ち止まって見られたり、声をかけられたりしたことは、このモデルを印象的に感じさせてくれた。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:2107×810×1066㎜
ホイールベース:1436㎜
シート高:805㎜
車両重量:188㎏
エンジン形式:空冷L型2気筒デスモドロミック2バルブ
総排気量:803㏄
ボア×ストローク:88×66㎜
圧縮比/最高出力:11 : 1/73PS/8250rpm
最大トルク:6.8㎏m/5750rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:13.5L
キャスター角/トレール:21.8°/93.9㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式 前・後:ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後:3.50×17・120/70 ZR17
PHOTO:稲垣正倫
#54はブルーノ・スパジャーリのナンバー
#54はドゥカティのワークスライダーとして活躍したブルーノ・スパジャーリのナンバー。1968年、当時著名なレース「モトテンポラーダ・ロマニョーラ」に、スクランブラーの単気筒350㏄ユニットをベースにしたエンジンを搭載したレーサーを駆って出場している。