今年の鈴鹿8耐に参戦するのは全64チーム。うち53チームがEWC(=エンデュランス・ワールド・チャンピオンシップ)、マシンで、そして11チームがSSTクラスで出場します。え?SSTってなに?だって? な、中の人もよくわかっていないから、一緒に勉強しましょう。

SSTとは、スーパー・ストッククラスのこと。ざっくり言えば、EWCより改造範囲が狭くて、そのモデルのノーマル状態にすごく近い、ってこと。チューニング範囲が制限されちゃえば、ノーマルのポテンシャルが勝敗を分けますからね。WSBKにもSSTクラスのレースが併催されているほど、特にヨーロッパでは人気なのです。

さらにEWCクラスに比べ、SSTクラスだと参戦コストも安く上がります。ほんの一端をお知らせすると、フロントフォークは本体をそのまま使わなければならず、フロント/リアともにクイックリリース機構はなし、エンジンもインジェクションもECU(=エンジン・コントロール・ユニット)もほぼノーマルじゃなきゃいけません。ゼッケンベースが、EWCマシンは黒ベース、SSTマシンは赤ベース、ヘッドライトのカラーもEWC車が白、SSTクラスが黄色です。これは見ている側からも識別しやすいための区分けなのです。

んじゃSSTクラスはプライベートチームが出るクラスなんだ――とお思いの向きもおありでしょうが、さにあらず。全日本のレギュラーチームや、鈴鹿8耐の強豪チームもいます。以下、SSTクラスの面々です。

画像: 赤ゼッケン+黄色ヘッドライトがSSTマシンです 写真は#3KRP三陽工業RS-ITOの新庄雅浩 テイストofツクバのハーキュリーズクラス常勝チャンピオンです こないだは加賀山就臣に負けたけど

赤ゼッケン+黄色ヘッドライトがSSTマシンです 写真は#3KRP三陽工業RS-ITOの新庄雅浩 テイストofツクバのハーキュリーズクラス常勝チャンピオンです こないだは加賀山就臣に負けたけど

画像: 黒ゼッケンに自光式ゼッケンがEWCクラス 写真はレッドブルホンダCBR1000RRWです

黒ゼッケンに自光式ゼッケンがEWCクラス 写真はレッドブルホンダCBR1000RRWです

画像: TONE RT SYNCEDGE4413のBMW S1000RR S1000RRはSSTクラスエントラント注目の的ですね

TONE RT SYNCEDGE4413のBMW S1000RR S1000RRはSSTクラスエントラント注目の的ですね

■#3KRP三陽工業RS-ITO■#9MotoMapSUPPLY■#26ARMY-GIRL TEAM MFカワサキ■#34ホンダ緑陽会熊本レーシングSST■#41磐田レーシングファミリー■#74AKENOスピードヤマハ■#80TONE RT SYNCEDGE4413 ■#87チーム阪神ライディングスクール ■#041スピードハートTTSレーシング ■#502NCXXレーシング ■#806NCXXレーシング&ZENKOUKAI

画像: 青木ノブくんの写真拝借 左からMotoGPマシンGSX-RR、鈴鹿8耐SSTマシンGSX-R1000R、それに市販車GSX-R1000Rです よー似てるw

青木ノブくんの写真拝借 左からMotoGPマシンGSX-RR、鈴鹿8耐SSTマシンGSX-R1000R、それに市販車GSX-R1000Rです よー似てるw

注目したいのは#9MotoMapSUPPLY=青木宣篤/今野由寛/ジョシュ・ウォーターズ組です。サプライは、言うまでもなく鈴鹿8耐の名門チーム。2014年かな、総合4位にも入賞したことがあるし、この3年は10位→5位→9位と連続シングルフィニッシュ中。現在、全日本選手権にはフル参戦してはいないものの、参戦もう20年にもなるスズキ系名門チームですね。かつてはスズキ系の若手ライダーのチーム、という印象がありましたが、現在はスズキMotoGPテストライダーの青木、さらに2017オーストラリアスーパーバイクチャンピオンのウォーターズも在籍するプライベートチームです。スズキの逆輸入車販売ネットワークである「MotoMap」をメインスポンサーに持つため、スズキのセミワークスチームでしょ、と言うファンや関係者もいるんですが、これがバリバリのプライベートチーム。8耐マシンのベース車も、なんと購入したばっかりなんだそうです。

画像: こちらテクニカルガレージRUNさんから写真拝借 右が代表の杉本さん 映ってる黒のGSX-Rは杉本さん所有で、RUNのデモマシン 「SSTクラスの車両よりすげぇ」とノブくんw

こちらテクニカルガレージRUNさんから写真拝借 右が代表の杉本さん 映ってる黒のGSX-Rは杉本さん所有で、RUNのデモマシン 「SSTクラスの車両よりすげぇ」とノブくんw 

「今年からいろいろ参戦体制が変わって、チームスタッフも大きく入れ替えがあったし、マシンも用意したんです」と青木ノブくん。そういうベースマシンって、有償無償にかかわらず、メーカーから回ってくるんでしょ、って思っちゃうんですが、なんとこの車両、千葉県のテクニカルガレージRUNで購入したんだって! テクニカルガレージRUNといえば、千葉の普通のバイクショップ。カスタムバイクも作るし、スズキの油冷エンジンチューンではおなじみだし、得意技は近所のおばちゃんのスクーターのパンク修理、という街のバイク屋さんでありながら、GSX1100Sカタナをベースに「鋼」なんてコンプリートカスタムを作っちゃったりして。RUN、そして代表の杉本さんともども、もともとノブくんとは仲が良くて、RUN主催の走行会でノブくんがゲスト出演したり繁華街でフラフラになるまで飲みに行ったり…は言わなくていいかw

「いや、ノブくんがバイク売ってくれ、っていうから用意しただけだよ。俺もびっくりしたよ、ノブくんが乗るバイクならスズキが用意するんじゃない?って思ってたから。でも今回、ノブくんがある狙いがある、っていうから協力したの。マシン用意して、パーツ出してさ、これ、騒音規制でマフラーだけ替えたら、そのままナンバー取って公道走れるもん。2台渡して、1台は登録済みの車両だよ。ETC標準装備です(笑)」と杉本さん。狙い…?ってなんだ?

画像: MotoMapの今野由寛は昨年の8耐以来のレース 自宅がRUNのご近所さんw

MotoMapの今野由寛は昨年の8耐以来のレース 自宅がRUNのご近所さんw

「GSX-R1000Rってさ、ノーマル状態がスゴくポテンシャルが高いの。2017年に新型になって、すぐAMAスーパーバイクとオーストラリア選手権でチャンピオンになったり、全日本でも最終戦までチャンピオン争いしたりね。それを伝えようと思って、そんじゃノーマルでやってみない?って。(笑)もちろん、8耐に出るならノーマルってわけにはいかないから、SSTにしようか、って。で、どうせオレがSSTで、って言っても『レースグループで作てるんでしょ』とか『ワークスパーツついてるんでしょ』って言われちゃうから、杉本さんとこで実際に買って、内容もばんばん公開しちゃおうと思って」とノブくん。

ほぼノーマルで、って言ってもワークスだって疑われる、ってところがレース界あるあるですが、つまりはノーマル、それも販売元もちゃんと作って、その「売った側」も公表するというガラス張りで参戦する、ってことですね。これはなかなかレアケースです! すげぇなこれ、前代未聞(笑) でも、それくらいベースマシンのポテンシャルに自信があって、それを正々堂々と公表してるってのがスゴい。

事前テストの様子を見ていると、SSTクラスは現在このMotoMapSUPPLYと、全日本選手権のレギュラーチーム、#80TONE RT SYNCEDGE4413、それに#3KRP三陽工業RS-ITOが3大SST強豪チーム。というか、この3チームが抜きんでています。
ファクトリーチームが激突するEWCクラスもいいけど、ほとんどノーマル、タイヤ交換もキコキコとねじ回さなきゃいけないSTクラスの戦いも鈴鹿8耐です!

写真・文/中村浩史 写真協力/テクニカルガレージRUN SUZUKI

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