鈴鹿8耐決勝レースを1週間前に控えて、22日(日曜日)には、ホンダが青山本社・ウェルカムプラザで、さらに24日(火曜日)には、ヤマハが東京ミッドタウンで参戦体制発表会とファンミーティングを行ないました。
ホンダはRed Bull Honda with 日本郵便をはじめ、MuSASHi RT ハルクプロホンダ、F.C.C.TSRホンダフランス、KYBモリワキMOTULレーシングが、そしてヤマハはヤマハファクトリーレーシング、GMT94ヤマハ、YARTヤマハオフィシャルEWCチームが出席。
このタイミングに、ホンダとヤマハが顔見世イベントなんて、ちょっと内情をバラすと、ちょうど外国人チームのライダー&スタッフが来日するタイミングなんですね。成田(羽田かな)に着いて、鈴鹿に移動する前に東京でイベントやろう!ってタイミングなんです。忙しいところ、寄ってもらってスイマセン^^ アテンドする本社スタッフたちが、メンバーに「Take me to ROPPONGI!」って詰め寄られてるかどうかは未確認ですw
このファンミーティング、例年ならすでに発表している参戦体制をあらためてお知らせ、そして東京で、しかも青山と六本木という場所柄、8耐ファン以外にもレース開催をお知らせする狙いがあるんですが、今回はちょっと様子が違います。ホンダのワークスチーム、Red Bull Honda with 日本郵便が、参戦予定だったレオン・キャミアの負傷によって、ライダーをパトリック・ジェイコブセンに変更。ジェイコブセンが参加予定だったMuSASHiハルクプロホンダには、ホンダ系全体チームのリザーブライダーだったランディ・ドゥ・プニエが合流する、というニュースが表されたのです。
準備不足は否めないホンダ陣営
「ホンダワークスチームRed Bull Honda with 日本郵便は、直前までライダー体制がバタバタしましたが、ようやく陣容が整ってお知らせできることになりました。ワークスチームにジェイコブセン選手が合流し、ハルクプロからはドゥ・プニエ選手が出走します」とは、HRCの桒田哲宏レース運営室室長。
「ジェイコブセン選手は、ワークスチームで1回だけテストできました。彼の人柄のいいところもあって、すぐにチームに溶け込んでくれた。最後までバタバタしましたが、これで準備完了です。あとはレースウィークに入って、ライダーの要望にきっちり合わせ込んでマシンを仕上げるだけです」(桒田さん)
TSRホンダの藤井正和監督は、いつもの「優勝宣言」と違う宣言を。
「ボルドール24時間、オッシャースレーベン8時間に優勝して、鈴鹿8時間に世界ランキングトップで帰ってこられた。TSRは、世界チャンピオンを獲るためのレースをやります。もちろん、鈴鹿で優勝したいのはやまやまだけれど、今回の目標はそれじゃない。僕らは世界耐久チャンピオンになるために、(現在ランキング2位の)GMT94ヤマハだけを見てレースをするんです」
TSRホンダは、今シーズンホンダ・フランスとジョイントして世界耐久選手権にフル参戦。世界チャンピオンになるためにチーム体制を決定し、アラン・ティシェ、ジョシュ・フック、フレディ・フォレをラインアップ。運営はホンダフランス、そしてライダーは3人の外国人と、多国籍軍を編成、指揮を執るのが日本のTSRホンダというわけだ。
――日本人ライダーもチームに入れたかったんじゃないですか?と問うと……。
「国籍なんか関係ないさ。一緒にやれるライダーの中で、速いライダー、勝てるライダーをセレクションしてチームを編成しているんだ。日本人ライダーであっても、こいつは、と思うライダーならピックアップするよ」と藤井監督。勝つために、最高の確率でチームを編成、運営して選手権を戦う――いよいよ鈴鹿8耐が、その最終戦になるのです。
MuSASHi RTハルクプロホンダは、昨年まではホンダユーザーのトップチームとしてワークスマシンの貸与を受け、優勝を宿命づけられてきた。けれど今年は、昨年ハルクプロから出場した高橋巧/中上貴晶をワークスチームに送り出しての鈴鹿8耐。
「うちのチームは、(高橋)タクミ、(中上)タカを若手の頃から育てて、ワークスチームに送り込んできた。今年は2017年の全日本J-GP2チャンピオンの水野涼を軸に、ランディ(ドゥ・プニエ)とドミニク(エガーター)を組み合わせる面白いチーム編成ができたね。速い外国人ライダーのもとで涼に勉強してもらって、大きく育ってもらおう」と本田重樹総監督。
ハルクプロは、昨年TSRホンダで3位表彰台を獲得したドゥ・プニエ&エガーターを組み合わせ、心境著しい水野を走らせる。上位を走って、トップチームになにかアクシデントが起こった時に表彰台に滑り込む――そういうポジショニングでレースを戦うはず。
KYBモリワキホンダは、昨年9年ぶりに鈴鹿8耐に参戦。今年は新体制での2年目の参戦となる。ライダーは2年目の高橋裕紀&清成龍一に、BSBライダーのダン・リンフット。
「去年は僕の転倒もあって、成績を残せませんでした。でも、それもすべて、今年のための準備だと思っています。他のチームとの大きな違いは、ピレリタイヤを履いていること。これを大きな武器にすべく頑張ってきました」と清成。
モリワキは、去年から清成&高橋にピレリタイヤを組み合わせ、全日本選手権と鈴鹿8耐を戦ってきた。言うまでもなく、現在のレースはタイヤが勝敗のカギを握るウェイトが大きいからこそ、ダンロップやブリヂストンタイヤを履くライバルにはないところで勝負したい。
すでに、路面温度が低いコンディションや雨では強さを発揮してきたピレリタイヤだけに、灼熱のコンディションで、どこまでライフをキープできるかがカギになるでしょう。
準備OKのヤマハファクトリー
対するヤマハは、2015年から17年にかけて鈴鹿8耐を3連覇中。鈴鹿8耐といえば、やはりホンダが絶対王者ではありますが、この3年はヤマハが持って行っています。ホンダが鈴鹿8耐で同じ相手に3回も敗れたことはありません。もう、ヤマハが挑戦を受ける立場ですね。
「3連覇したYZF-R1はもう完成の域だし、そこから今年は大きな変更はない。ライダーも同じ3人で、マイケル(ファン・デル・マーク)もアレックス(ロウズ)もパワーアップして帰って来てくれた。事前テストでいい準備もできたし、心配することがありません」とヤマハファクトリーのエース、中須賀克行。
「目標タイム、ライバルっていうのは……まず自分たちの去年の走りですね。去年の僕たちの走りを超えるレースができたら、自ずと優勝が見えてくると思います」(中須賀)
衝撃の発言が飛び出したのは、ヤマハファクトリーの吉川和多留監督のコメントの時。
「今年は間違いなく接戦になると思う。昨年は216周、2016年は218周で優勝したんですが、今年は強敵ぞろいということもあって、220周に届くかもしれませんね」(吉川監督)
昨年までの3年間、トップに立ってからのヤマハファクトリーは、2番手以降の差をきちんと見極めながらペース配分をしていた、と語ったことがありました。それが今年は、ワークスチームを復帰させるホンダ、WSBKチャンピオンを呼び寄せたカワサキの出現もあって、後ろとの差を気にしながらも、ペースを緩める局面が来ないかもということで、8時間を全力で走る――それが、現在の鈴鹿8耐で、ひとつの「限界ラップ数」と言われる220周予告につながったのかもしれませんね。
きょう25日(水曜)には、参戦各チームとも、ピットやホスピタリティブースの設営をしたり、コースでは徒歩と自転車のみ通行を許されるコースチェック、そして選手受付も始まります。走行は「特別スポーツ走行」として26日(木曜)13時半からスタートします。
いよいよですね。いよいよだ!
写真/松川 忍(ホンダ)中村浩史(ヤマハ) 文/中村浩史