驚くほどの軽さ、素直さで自在に楽しめる214PS
パニガーレV4のフレームはこれまでのボックス構造のモノコックから「フロントフレーム」と呼ばれるツインチューブ風のダイヤモンドフレームになった。エンジンは90度L型のV4でありながら、70度位相クランクという特徴的なレイアウトに。最高出力は、市販スポーツバイク最強レベルの214PSとなっている。
Lツインにこだわってきたドゥカティの「アイデンティティ」からすると、まるでスポーツバイクに対する「哲学」を変えたかのような大変身。でも、もっと驚いたのはその走り。色々な意味で見た目以上に変わっていた。
まず、走り出した瞬間から、その軽さやハンドリングの素直さに驚かされる。峠道でなくても、街中や高速道路でもわかる違いだ。従来型の個性でもあったソリッドな身軽さから、もっとしっとりとした応答に変わっている。エンジンからの振動はほとんどなくて滑らかだし、4000回転あたりの中域以上ではトルクが強烈。ちなみにパワーパンドは8000回転からで、1万2000〜1万4000回転は今のどんなスポーツバイクをも屈服させる力量を緊張感なく扱える。その秘訣は優しいピックアップ。気楽にスロットルを開けて街を機敏に走れ、どんな場所でも身軽に車線変更し、車体は常に路面にへばりつく。
今回、1速で回し切るようなタイトな峠道から関東有数の高速ワインディングまでを走ってみたが、足回りとパワーなどの電子制御系のセッティングを少し変えただけで曲がり方や軽快感まですぐに変化する。自分でイジって遊ぶのも面白いが、予めセットアップしてあるメニューで走るだけでも、このバイク、驚くほど従順で、恐ろしく速い!
前述の優れたパワードライバビリティで、214PSは1速から使い切れる。トラコンなどのアシスト系も格段に進歩。スライドなどの制御でウソのようにショックが低減している。ハンドリングのクセのなさから、タイトコーナーをビギナーが流しても扱いやすいと感じるだろう。ベテランが3〜4速を使い切るような峠道では今まで以上に身軽。しっとりとしていて、車体の応答が柔軟。
パニガーレシリーズの中でも身軽で運動性能がいい、と評判の959にも同時に試乗したが、そんな959ですら、身重で曲がりにくいように錯覚してしまう。
それが新世代V4の実力だ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2100×805×1132㎜
ホイールベース 1469㎜
最低地上高/シート高 125㎜/830㎜
車両重量 195㎏
エンジン形式/総排気量 水冷4ストDOHC4バルブV型4気筒/1103㏄
ボア×ストローク/圧縮比 81×53.5㎜/14.0
最高出力 214PS/13000rpm
最大トルク 12.6㎏-m/10000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 16L
キャスター角/トレール量 24.5度/100㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ330㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・200/60ZR17
DETAIL
RIDING POSITION 身長:176㎝・体重:68㎏
フレーム変更に伴い、車体は一般的なバイク並みのスリムさになったが、車体側面の処理がよく、ホールド性は非常に良い。少しステップが前気味で低いので車体を制御しやすい。足着きは意外にいい。
PHOTO:赤松 孝、南 孝幸