「Red Bull Honda with 日本郵便」のCBR1000RRWがお披露目された初日に続き、2日目の7/6(金曜)も雨に見舞われちゃいました鈴鹿サーキット。この日の注目は、オランダGPを終えて「来日」するひとりのMotoGPライダー。彼の名は、中上貴晶。高橋巧、レオン・キャミアとトリオを組む、今大会の注目ライダーのひとりですね。

画像: 走行中、ヘルメットを脱ぐ間も惜しく、周回しまくりのタカ

走行中、ヘルメットを脱ぐ間も惜しく、周回しまくりのタカ

「Red Bull Honda with 日本郵便」のCBR1000RRWがお披露目された初日に続き、2日目の7/6(金曜)も雨に見舞われちゃいました鈴鹿サーキット。この日の注目は、オランダGPを終えて「来日」するひとりのMotoGPライダー。彼の名は、中上貴晶。高橋巧、レオン・キャミアとトリオを組む、今大会の注目ライダーのひとりですね。
タカ中上は7/1のオランダGP明けにチェコ・ブルノにマシンテストに飛び、そこから日本へ移動という超ハードスケジュールで鈴鹿8耐のメーカー合同テストに参加。ブルノかテストは早めに切り上げ、ブルノからドイツ・ミュンヘンへプライベートジェットで飛び、そこから羽田へ移動したそうです。すげー!さすがGPライダー!
そういえば、かつて2002年かな、GPから鈴鹿へ8耐テストに向かう宇川徹(当時レプソルホンダ)がヘリで空港へ飛ぶのを目撃したことがありますが、いまはジェットですか! まだホンダジェット、売ってないはずだけどな(笑)。ヨーロッパでは、こういう用途にレンタルのパーソナルジェットありますからね、それ使ったんでしょう。
そしてタカが羽田に着いたのが5日16時ごろ、そこから電車~新幹線を乗り継いで鈴鹿入り。鈴鹿のホテルに入ったのは21時過ぎだったそうです。

画像: 長時間移動の疲れも見せず、インタビューに答えてくれたタカ ありがとう!

長時間移動の疲れも見せず、インタビューに答えてくれたタカ ありがとう!

「ずっと移動で体は疲れてますけどね。ぜんぜん平気です。なにせ1年も待ってましたから」とタカ。6月下旬のテストに続いて2度目のテストですが、前回は黒カウルでの走行、今回はレッドブルカラーが載ったマシンでの走行と、やっぱり気合の入りは違うらしいです。
タカが1年も待った、というのは、昨年の鈴鹿8耐を自らのミスで落としてしまった、という思いがあるからです。
2017年の鈴鹿8耐。タカは高橋巧/ジャック・ミラーとトリオを組んで、ホンダ系のトップチームであるハルクプロから出場。スタートライダーの高橋からバトンを受け取った、レース開始2時間半後あたり、71周目走行中に、ヘアピンでスリップダウンを喫してしまうのです。
ヘアピンでの転倒ですからスピードが低く、マシンへのダメージは最小限。しかしタカはマシンチェックのためにピットインし、破損パーツを交換して再びレースへ。けれど、現代の8耐で1回の転倒、1回ピットインが多いというのは致命傷。ハルクプロは、レース残り2時間あたり頃にも、今度はタイヤのスローパンクチャーが発生し、完全に表彰台争いからも脱落してしまったのです。
「去年は……僕のミスで優勝を逃がしたようなものです。だから、今年の8耐にかける思いは誰より強いかもしれないです。メンバーに選ばれる前から、楽しみにしてましたもん」
――でも、こんなハードスケジュールだもん、本当はMotoGPに集中したかったんじゃないの? といじわる質問してみると……
「そんなことないですよ! 絶対あのままじゃ終われない。リベンジしなきゃ」とタカ。いいぞいいぞ、その気持ち、大事だぞ! 先輩のバレンティーノ・ロッシだって、初参戦(当時はホンダ在籍)で転んで、2年目にリベンジしたからね!

画像: ドライセッティングでこの雨を走ります……

ドライセッティングでこの雨を走ります……

そして、そのタカが走行したテスト2日目も、鈴鹿は無情の雨。タカは高橋の走行枠分も奪い取って(笑)、この日の1時間半の走行2枠を、ひとりで走ることになります。
「雨で、僕の慣熟走行の意味合いが強かったです。もともと、雨はそんなに好きじゃないし、今年のGPもあんまり雨降ってないですからね。マシンが去年とは変わっているし、雨に慣れなきゃ、と思って巧君の走行時間ももらいました。巧君はもう雨で速いから、そこに早く近づかないと」
それでもタカは、午前の走行枠で堂々3番手タイムをマーク。午後はヘビーウェット路面で5番手で走行を終えますが、走り出しから徐々にスピードを乗せていって、アッという間に怖いくらいのスピードまで上げていく様子は、さすがMotoGPライダー、って感じがしました。
レッドブルホンダの宇川監督も、タカの上手さに感心。
「パッと来て、すぐにトップタイム(注:実際には更新されて3番手)で走れるなんて、やっぱりセンスがいいよね。さすが日本人唯一のMotoGPライダー、って気がする」(宇川)
しかも8耐のウェットテストは、マシンをレインセッティングにせず、ドライセッティングのままにレインタイヤを履いて走行するのだ。これは、レース本番を想定したシミュレーションで、ドライ走行中に急に雨が降ってくることを想定しての走行。もちろん、レインセットで走ると、もっとタイムは上がるんだけれど、それでは再び路面が乾いた時に、またドライ用セットに戻さなきゃならない。そのタイムロスは、8耐ではあり得ないのです。

画像: 見てこれ! こんな水野涼、いや水の量…(©赤松孝)

見てこれ! こんな水野涼、いや水の量…(©赤松孝)

結局タカは、午後の走行枠の最後にレースシミュレーションのロングランを決行。8耐特有の「ガス欠テスト」も行ないましたが、これは不発。このガス欠テストというのは、ガソリン満タンで実際に周回して、ガソリン残量警告灯が点灯→そこからどれくらい走れるか、のチェックのためにわざとガス欠まで走っちゃうテストなんですが、もともと燃費のいい走りをするタカは、レインでの走行ということもあって、最後までとうとう警告灯がつかずに終わってしまったそうです。燃費が良すぎて警句灯がつかないなんて設定ミス、初めて聞いた(笑)。
これでタカはいったんテストを終了。今週、また行なわれるテストには、今度はWSBKイタリア・ミザノ大会を終えたレオン・キャミアが合流して、高橋+キャミアでテストを行ないます。タカはドイツGP出場のために欠席し、レッドブルホンダは最後まで全ライダーが揃わないまま、レースウィークを迎えることになりそうです。これは少し、不安材料かな。

画像: アッという間にものすごいスピードで周回を始めるタカ これがMotoGPライダーの凄み!

アッという間にものすごいスピードで周回を始めるタカ これがMotoGPライダーの凄み!

「巧君、レオン、そして僕も含め、3人の個の力はぜんぜん心配ないと思います。あとは3人そろってのテストができなかったことと、ドライでもう少し走っておきたかったな、っていうのが不安といえば不安ですね」
GPライダーっていうのは、僕ら関係者やファンが思っているより、ずっとものすごい結果を出してのける人種のことだ。80年代中盤から90年代初頭のGPライダーたちや、2015~16年のヤマハファクトリーで走ったポル・エスパルガロしかり、2015年のケーシー・ストーナーしかり――。
それが、今年はタカなのだ。今年からMotoGPに昇格した日本人唯一のMotoGPライダーであるタカは、堅実に、確実に経験を積み上げている段階で、正直ここまで、ぼくらファンをびっくりさせてくれてはいない。
タカ、GPライダーの凄みを見せてくれ!

画像: し、しまったせっかくピースくれたのにピントが来てない… お詫びいたします

し、しまったせっかくピースくれたのにピントが来てない… お詫びいたします

写真・文/中村浩史

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