08年にリアルMotoGPマシンレプリとして世に送り出された、ドゥカティ初のV4エンジン搭載モデル「デスモセディチRR」の存在は、ドゥカティスタならずともバイク乗りに大きな衝撃を与えた事は言うまでもない。伝統のツインエンジンではなく、最高峰の舞台で選んだエンジンがV4だった事もニュースだったが、その流れを組むリアルレプリカが一般公道を疾駆するというのは、あまりにセンセーショナルだった。リリースは世界1500台限定で、しかも1千万円弱のプライスは一般市場から掛け離れたスペシャルな設定であり、到底普段街で目にする様なマシンではないプレミアそのもの。
デスモセディチRR登場以降、パニガーレV4デビューまでの10年間、V4エンジン搭載マシンの市場へのアプローチは一切なかったのが現実である。ところが、レースシーンで熟成に熟成を重ねたテクノロジーをフルに投下し、レーサーではなく公道走行可能な一般車両としてデビューを果たすというのだ。V4テクノロジーを市場に還元する市販車というカタチは、ドゥカティの英断にファンならずとも沸き上がることは必至だろう。
そして、2017年のパニガーレV4リリースのアナウンスから1年も経たずして、日本の公道デビューを果たす。このスピード感に思わず痺れてしまった……。しかも、手の届かないプライスではなく、他メーカーのスーパースポーツ同様の価格帯での販売というが特に驚かされる。“手が届くスペシャルマシン”は、一般公道でどうのようなポテンシャルを発揮するのであろうか?
また、永きに渡りドゥカティの代名詞であるLツインエンジンを搭載したモデルの959パニガーレも、このタイミングだからこそ同時に気になるというもの。70年代から、連綿とレースシーンに於いて輝かしき栄光を築き上げてきたレジェンドLツインエンジンは、伝説の数々に裏打ちされた完成形と言っても過言ではないはず。トップレンジの設定こそファイナルモデルとなる1299パニガーレRファイナルエディションが担うものの、Lツインエンジンの絶頂を今改めて検証する。
後編は7月5日!
「デスモセディチ・ストラダーレ」と名付けられた新開発の水冷90度V4は、現役MotoGPマシン・デスモセディチGP用V4の公道版というべきもの。伝統のデスモドロミックを採用しているのはもちろん、運動性能を向上させるために逆回転クランクを採用、さらに70度位相クランク、可変ファンネルといった最新技術を投入。レースベース車ではないため公道向けのパワー特性を狙って排気量は1103ccとされたが、それでも1万4000rpmで最高出力214PSを発揮。
マフラーのデザインはスリムなアンダーカウルと一体化されていて、スマートでレーシーなフォルムを強調するとともにマスの集中化にも大きく貢献している。
リアサスは6軸IMUセンサーからのデータに基づき減衰力を自動調整できるオーリンズ製のスマートEC2.0システムを採用、自動調整の介入レベルを任意に設定することが可能になった。サスペンションユニットのアッパー側はエンジンのリアバンクにマウントされている。
燃料タンクをよく見ると、シートの下にまで続いていることが分かる。これも運動性能を極限まで追求するためにマスの集中化を進めたMotoGPマシンからのフィードバック。
中空になっている内部構造を見せつけるかのように、スパっと切り落とされた軽快なテール。テールランプにはカウルの断面形状に沿ってラインLEDを配置した斬新なデザインだ。
DUCATI PANIGALE V4S
価格:3,280,000円(税込)
■エンジン:水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ ■ボア× ストローク(排気量):81×53.5mm(1103cc)■最高出力:214ps/13000rpm ■最大トルク:12.6kgm/10000rpm ■ミッション:6速リターン ■全長× 全幅×全高:N.A×N.A×N.Amm ■ホイールベース:1469mm ■シート高:830mm ■車両重量:174kg(乾燥)■燃料タンク容量:16L ■タイヤ前・後:120/70ZR17・200/60ZR17
撮影/柴田直行 解説/小松信夫 文/編集部
GOGGLE2018年8月号
モーターマガジン社
体裁:A4変型・平綴じ 販売価格:1,200円(税込)