見る者を惹きつけるスタイルと想像以上に楽しい走りが光る
ストリートスクランブラーはストリートツインファミリーの新メンバー。フレームはこれまでのものからセッティングを変更した新作。前後サスも専用品で、多少のダートまで走れるほど、しなやかさと奥までストロークしてからの踏ん張りが増したように感じる。フロントタイヤは、他のモデルの18インチに対して19インチを採用。さらにスクランブラーらしいアップマフラーがかなりのワイルドさを発散している。
シリーズの中では小排気量とはいえ、1リッター近い排気量のバイクだ。ボリューム感もあるし、重厚感も勇ましさも感じるが、スクランブラーは、バイクに興味がない人をも注視させる存在感も醸し出している。
試乗するまでは、このルックスを最大の魅力とするファンバイクだろう、と思っていた。しかし、トライアンフのスクランブラーは、他のネオクラシック・スクランブラーとはちょっと違っていた。
基本的にダートに持ち込むには大きく重いバイクだが、わだちがあるような道でも、ハンドルが弾かれることも、リアが突き上げられることもなく、わりと元気よく走れてしまう走破性を備えている。トラクションコントロールもいい仕事をしていて、タイヤを上手くグリップさせ、滑りやすい路面でも車体をしっかり前に押し出してくれる。想像以上の走破性で、乗るほどに愉しくなってくる。
ストリートツイン系のエンジンは低回転域からトルキーで、アクセルを開ければ、どこからでも路面を良く捉える。街中はもちろん、先のダートのように繊細な操作が必要な場面でも、パワーと従順さがマッチした、スクランブラーにぴったりの特性だ。
3500回転あたりまでの排気音も低音が効いていて、音量や音質が心地よく耳に残る。4000回転から上では吹けに勢いが増すが、その分騒々しさも増す。ちなみに、トップ5速・100㎞/hでのエンジン回転数は3350回転。高速巡航時などは、ちょうど気持ちいい回転域になる。細かい味付けは違っても、相変わらず愉しいエンジンだ。
ハンドリングも扱いやすい。他のボンネビル・ファミリーより少し後ろ下がりの姿勢でフットワークしているような感触で、旋回性などはその分穏やかだが、切り返しなどで手応えが軽く、俊敏に身を翻す。アップライトなライポジや大きなハンドルも操作感を軽くしてくれているポイントだろう。
このスクランブラー、いざとなればダートまで走れてしまう走破性、小気味いいフィールのエンジンにも惹かれるが、何より魅力的なのはこの迫力一杯のスクランブラースタイル! 使い勝手のいいストリートシリーズならではの、等身大のオールマイティさもある。このカテゴリーの中では光る魅力を備えた1台だ。
主要諸元
全長×全幅×全高 NA×831×1120㎜
ホイールベース 1446㎜
シート高 790㎜
乾燥重量 206㎏
エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 900㏄
ボア×ストローク 84.6×80㎜
圧縮比 10.55
最高出力 55PS/6000rpm
最大トルク 8.16㎏-m/2850rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 12ℓ
キャスター角/トレール 25.6度/109㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ310㎜ディスク・φ255㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 100/90-19・150/70R17
注目ポイント
COLOR VARIATIONS
RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:68㎏)
上体が起きているので、バイクを抑え込みやすい。右側にある排気管の遮熱が弱く、ニーグリップ時につい触れてしまうと腿が熱くなる。張り出しも大きく、立ち姿勢時を含めたホールド時にやや気になるが、これだけ出ているからカッコ良かったりするのだ。