半世紀に渡り「憧れ」の存在、それが「Kライン」デザイン
70年代まで革ツナギといえば東のカドヤとGOTO、そして西のクシタニが御三家。だが80年代にレプリカブーム、レースブームが巻き起こると、職人がツナギメーカーから独立して新ブランドを立ち上げたり、布や革のアパレルメーカーやバイク用品ショップが続々と参入した。タカイ、アールエスタイチ、アズスポーツ、セクレテール、ステージレザー、ナンカイ、ダイト、コミネ、プリカーナ、ブレイン、バギー、デグナー、ヨネゾーなどなど、列記するとキリがないほどだが、今なお健在のブランドもある。レプリカブーム全盛時はサーキット走行用途に加えてファッションアイテムとして着るライダーも多かったので、革ツナギ屋さんはホクホクだった。
百花繚乱の革ツナギブランドの中でも別格視されていたのがクシタニだ。浜松オートレースの選手用に革服を作っていたという経緯からヤマハやスズキのワークスライダーに愛用者が多く、ヨシムラのライダーも着用していたことでハイエンドイメージが確立。アマチュアライダーにとって憧れのブランドとなった。クシタニ製品が他社製品に比べるとかなり高価だったこともイメージを押し上げた要因の一つだろう。
中でも人気が高かったのがクシタニの頭文字である「K」をツナギのアクセントラインとした通称「Kライン」デザイン。左右非対称パターンが一般化したのも、Kラインの人気があったから。そしてクシタニの徹底した高品質体制は現在に至るまで変わらず、半世紀近く憧れのブランドであり続けている。リターンライダーの中には「最後はクシタニ」と思い続けている人も多いはずだ。 (太田)
写真/松川 忍
■問い合わせ:クシタニ ☎053-441-2516