ZXR譲りの高回転型エンジンを搭載した硬派ネイキッド

カワサキは89年にデビューさせたゼファーを大ヒットさせることで、現在まで続くネイキッドスポーツというジャンルを確立させた。しかし、ゼファーシリーズは最初の400を皮切りに、750、1100とラインアップを拡充してさらなる人気を得たが、250ccネイキッドではバンディット、ジェイドに先行されてしまう。そんなライバルたちに対向するため、92年に満を持してカワサキがデビューさせたモデルが初代バリオスだった。

空冷直4エンジンやダブルクレードルフレーム、Z2を思わせるクラシカルなスタイルで人気となったゼファーから一転、バリオスは250ccレプリカの中でも高いパフォーマンスを誇るZXR250のエンジンをベースに中低速重視にリファインした水冷直4エンジンを採用。

スタイルもカウルを備えずスチール製のダブルクレードルフレームではあるものの、そのデザインはゼファーのような懐古主義的なものではないシャープなイメージ。リアサスペンションも現代的なモノサスとされ、ライバルたちより高回転型で甲高い独特なサウンドを発するエンジンと合わせ、走りを重視した造りによって人気を集めた。

93年モデルでの最高出力45PSから40PSへの引き下げなどを経て、97年にバリオスIIへモデルチェンジ。まさに今回撮影したのがこのモデル、基本的なスタイリングなどはバリオスから受け継がれているが、その最大の変更点はリアサスペンションがモノサスからオーソドックスな二本サスへ変更されたこと。

加えて、キャブレターをスロットルポジションセンサー付に変更し、エンジンのレスポンスを向上。さらにポジション設定の変更なども行われてより扱いやすさも増し、250ccネイキッドの定番として07年型まで販売が継続されていた。

画像: ZXR譲りの高回転型エンジンを搭載した硬派ネイキッド

Impression
K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4

250cc4気筒ネイキッドモデルの中で、個人的にナンバーワンの仕上がりだと思っているのが初代のバリオス。馬力規制前のエンジンは45馬力のフルパワー仕様で、ベースとなったZXRと同様に1万8000回転まで突き抜けるように吹け上がり、これぞ4気筒! とゾクゾクするような官能的フィーリングを持っていた。

今回試乗した車両は馬力規制でピークパワーを40馬力に抑えた代わりに中低回転域でのレスポンスを向上させ、リアサスもネイキッドらしい2本ショックにしたバリオスII。

街乗りでの乗りやすさを主眼に置いたモデルチェンジを受けているので前期型バリオスほどの爽快感はないが、サーキットをハイスピードツーリングのペースで駆け回るにはちょうどいい。250cc4気筒エンジンでよく言われる低回転域の非力さも感じられず、5000回転も回っていれば加速でモタつくこともないから、最新の2気筒モデルと同じような感覚で気楽に扱える。

前期型バリオスはハンドリングにソリッド感があって、ブレーキングや立ち上がり加速でのトラクションを意識して操作と体重移動を行なわないと想定ラインから外れることがあるが、この「II」はそうした神経質さもなく、オートバイに任せるようにバンクさせれば素直に旋回してくれる。

こうした高回転型エンジンだということを意識させない取っつきやすさがバリオスIIの魅力。排ガス規制強化の影響で07年に生産を終えたが、91年の初代登場から16年間のロングセラーとなったのも、乗りやすさと楽しさのバランスが高いレベルで取れていたからだろう。

画像1: Impression K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4

【BALIUS II】 1997年2月 specifications
エンジン型式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:249cc
内径×行程:49.0×33.1mm
圧縮比:12.2
最高出力:40PS/15000rpm
最大トルク:2.4kg-m/10000rpm
燃料供給方式:キャブレター[CVK30]
変速機型式:常噛6段リターン
全長×全幅×全高:2070×735×1055mm
軸間距離:1400mm
シート高:745mm
乾燥重量:147kg
燃料タンク容量:15L
タイヤサイズ(前・後):110/70-17・140/70-17
当時価格:50万9000円

画像2: Impression K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4
画像3: Impression K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4
画像4: Impression K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4
画像5: Impression K-TRICの採用により街中での扱いやすさを高めた直4
画像: 初代バリオスのイメージを残しつつも、2本サスへの変更に加えて、サイドカバーやテールカウルのデザインを変更することによって、より男らしく無骨なイメージを表現。排気量を感じさせない、力強い走りを想像させるスタイルだ。

初代バリオスのイメージを残しつつも、2本サスへの変更に加えて、サイドカバーやテールカウルのデザインを変更することによって、より男らしく無骨なイメージを表現。排気量を感じさせない、力強い走りを想像させるスタイルだ。

画像: 大径の丸型ヘッドライトに、メッキボディの砲弾型メーター、コンパクトなウインカーを組み合わせたバリオスIIのフロントマスクは、兄貴分のゼファーにも通ずる雰囲気を感じさせる典型的なネイキッドスタイル。

大径の丸型ヘッドライトに、メッキボディの砲弾型メーター、コンパクトなウインカーを組み合わせたバリオスIIのフロントマスクは、兄貴分のゼファーにも通ずる雰囲気を感じさせる典型的なネイキッドスタイル。

画像: ショートストロークで高回転型のZXR250用水冷直4エンジンがベースだが、外観を空冷風デザインに変更。フライホイールマスの増加、K-TRICの採用などの改良で街中での扱いやすさと高回転での爽快なフィーリングも両立した。

ショートストロークで高回転型のZXR250用水冷直4エンジンがベースだが、外観を空冷風デザインに変更。フライホイールマスの増加、K-TRICの採用などの改良で街中での扱いやすさと高回転での爽快なフィーリングも両立した。

画像: インナーチューブ径Φ39mmの正立フロントフォークを装備。シングル式のフロントディスクブレーキは、Φ300mmのローターとトキコ製の片押し2ポットキャリパーがチョイスされている。

インナーチューブ径Φ39mmの正立フロントフォークを装備。シングル式のフロントディスクブレーキは、Φ300mmのローターとトキコ製の片押し2ポットキャリパーがチョイスされている。

画像: 排気系は4-2-1集合のステンレス製エキパイと美しいクロームメッキ仕上げのサイレンサー。バリオスシリーズの大きな魅力のひとつである、高回転での甲高いエキゾーストノートがここから生み出される。

排気系は4-2-1集合のステンレス製エキパイと美しいクロームメッキ仕上げのサイレンサー。バリオスシリーズの大きな魅力のひとつである、高回転での甲高いエキゾーストノートがここから生み出される。

画像: クラシカルなゼファーシリーズのものより、ややモダンなデザインとされたシート。バリオスよりもより前方に、そして低くされたステップ位置や、高くされたハンドル位置と合わせて快適なポジションで走ることができる。

クラシカルなゼファーシリーズのものより、ややモダンなデザインとされたシート。バリオスよりもより前方に、そして低くされたステップ位置や、高くされたハンドル位置と合わせて快適なポジションで走ることができる。

画像: タンデム一体のシートを外すとその下には収納スペースが現れる。2本サス化されたバリオスIIだけに、もともとモノサスの配置されていたスペースがそっくり空いたため、意外なほど広いスペースが確保されている。

タンデム一体のシートを外すとその下には収納スペースが現れる。2本サス化されたバリオスIIだけに、もともとモノサスの配置されていたスペースがそっくり空いたため、意外なほど広いスペースが確保されている。

画像: バリオスIIから採用された2本サス。メカニズム的には後退したようにも思えるが、サスペンションユニット自体はショーワ製でリザーバータンク付、プリロード調整も可能なもので、スポーティさを犠牲にしていない。

バリオスIIから採用された2本サス。メカニズム的には後退したようにも思えるが、サスペンションユニット自体はショーワ製でリザーバータンク付、プリロード調整も可能なもので、スポーティさを犠牲にしていない。

画像: 左にスピードメーター、右にタコメーターを配置、中央には燃料計も備えている。1万7000回転からレッドゾーンというアナログ式タコメーターからも、バリオスIIのエンジンの高回転型な性格がよく分かる。

左にスピードメーター、右にタコメーターを配置、中央には燃料計も備えている。1万7000回転からレッドゾーンというアナログ式タコメーターからも、バリオスIIのエンジンの高回転型な性格がよく分かる。

文:太田安治

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