トライアンフのラインアップで中核をなすボンネビルシリーズが生まれ変わった。その第一弾として発売されるのが、新たに900cc水冷ユニットを搭載し、全身進化を果たしたニューモデル、ストリートツイン。新しいスタンダードモデルの魅力をさっそく検証していこう。
圧倒的なトルク感と素直なハンドリングが光る
ストリートツインはこれまでのボンネビルシリーズのものを踏襲した外観イメージだが、パーツはオールニュー。エンジンは新設計の水冷270度ツイン。DOHCからOHCへになり、最高出力は10馬力ほど抑えた55馬力。ただ、その分低中域のトルクアップを狙った味付けになっている。車体もそれに合わせたもの。これらによって、当然ハンドリングも変わっているわけだ。
前作のボンネビルシリーズは865ccの空冷360度ツインを採用し、フロント17インチタイヤを履くボンネビルと、よりクラシカルなイメージを強調したフロント19インチのT100、フロントに18インチタイヤを履く、カフェレーサーのスラクストンをラインアップしていたが、空冷エンジンから水冷エンジンに世代交代していく第一弾がこのストリートツイン、というわけだろう。
その水冷エンジンのパワーフィーリングだが、まず、静かである。ヘッドまわりからのメカ音やシリンター、シリンダーフィン周辺からの共鳴音など、あらゆるパートからの雑音が減っている。排気音もまろやかだ。
でも、さすがにセールスポイントだけあって、低回転域での粘り、中回転域での力強さには歴然とした差がある。ストリートユースなどで常用する回転域では、これまでより格段にリニアで力強い。吹けが滑らかなので回しやすく、いにしえの、そして先代の「暴れん坊」ツインという印象は一新されている。
日本車にも通じる、優等生的な面も持ち合わせたフィーリング。これを進化と取るか、軌道変更と取るかは「ボンネビル」ブランドに対するそれぞれの意識次第だが、新型のストリートツインはこんなフィーリングに変貌、しかも100万円を切るプライスで、オシャレで実用的なストリートスポーツを目指したネオクラシックになったのだ。
さらに、このストリートツインは18インチのフロントタイヤを履いている。これはスポーティなスラクストン系と同じで、非常に相性がいいサイズだ。19インチ採用のT100が醸し出す素直さにプラスして、接地面の広さによる節度、接地力も得られる、ジャストマッチのチョイスだろう。
ハンドリングは素直で、極低速域でのUターンから、100km/h以上でフルバンクするようなコーナリングまでクセがない。適度な節度もあって、ハンドルは軽過ぎず重過ぎず。ハンドルに手を添えるだけで、素直に思い通りのフットワークをする。これはこのシリーズの中でも大きな魅力。扱いやすいエンジンともよくマッチしていると思う。
いい意味で、走りはどんな使い方にも適応できる優等生。それが伝統のネオクラシックスタイルを手に入れている。加えて、トラコンなどのライディングアシスト群が充実した上、価格にはお買い得感まである。かなり魅力的な1台だ。
■トライアンフ ストリートツインの基本情報、スペック
寸法・重量
全長/全幅/全高mm 2090/785/1114
ホイールベースmm 1415
シート高mm 750
乾燥重量kg 198
キャスター度 25.1
トレールmm 102.4
エンジン・性能
種類 水冷4スト並列2気筒
弁形式 OHC4バルブ
内径×行程mm 84.6×80
総排気量cc 900
圧縮比 10.55
最高出力kW/rpm 40.5(55PS)/5900
最大トルクN・m/rpm 80(8.16kg-m)/3230
燃料供給方式 電子制御燃料噴射
点火/始動方式 フルトランジスタ/セル
燃料タンク容量L 12
サスペンション
前 テレスコピック
後 スイングアーム
ブレーキ
前 φ310mmディスク
後 φ255mmディスク
タイヤ
前 100/90-18
後 150/70R17
価格
標準現金価格 99万9500円(ジェットブラック)/102万1500円(クランベリーレッド、アルミニウムシルバー、マットブラック、ファントムブラック)
問い合わせ先 トライアンフモーターサイクルズジャパン(03-6809-5233 トライアンフコール)
撮影:南孝幸、森浩輔