バイク用ジーンズにおいて確固たる地位を築いた「BMC(BLUE MONSTER CLOTHING)」。ジーンズ開発歴25年、エドウイン出身という経歴を持つ代表・ローリー青野氏が率いる同ブランドは、これまでライダーの課題を解決するために「空冷」や「電熱」といった明確な機能性を持ったウエアを展開してきた。しかし、今回登場した新作「俺のジーンズ」は、そうした従来の開発思想とは真逆のコンセプトを掲げている。それは、「機能性は一切ない」という大胆なアプローチだ。

BLUE MONSTER CLOTHING
俺のジーンズ
育成型バイク用ジーンズ
カラー:100 ブルーリンス
サイズ:S・M・L・XL・3L・4L・5L
メーカー希望小売価格:税込1万6980円
第1期先行予約価格:税込・送料込1万4980円
「No Function」を掲げる異例のコンセプト
公式オンラインストアの製品ページを開くと、まず目に飛び込んでくるのが「一点集中の機能はNothing! No No FUNCTION!」というフレーズである。通常、バイクウエアのPR文言といえば、防水性や通気性、プロテクション性能などのメリットを列挙するものだ。しかし、この「俺のジーンズ」に関しては、ローリー青野氏自身が動画内で「このジーンズにライダーが享受できる機能的メリットはない」と明言している。
青野氏が「機能がない」と語る背景には、現代のバイクウエアが利便性を追求するあまり失ってしまった「ジーンズ本来の魅力」への回帰がある。それは、未完成の硬い生地を自分の体で馴染ませ、時間をかけて色落ちを楽しんでいく「育成」のプロセスだ。

これまでのBMC製品が、着用した瞬間から快適さを提供する「完成品」だったとすれば、本作はあくまで「素材」の提供に近い。購入者がバイクに乗り、風を受け、生地を擦れさせることで初めて完成に向かう。青野氏は動画の中で「赤耳(セルビッチ)自体に機能的な価値はない」としつつも、「価値のないものにこそ、手間をかける面白さがある」と、効率化されたモノづくりへのアンチテーゼを静かに、しかし熱く語っている。
ヴィンテージの再現と「オートバイ専用設計」の両立
機能性素材を使用していないとはいえ、そこはBMC。「オートバイ専用設計」としての構造は徹底されている。特筆すべきは、近年の主流であるスリムフィットではなく、あえて「ルーズシルエット」を採用している点だ。

これは往年のヴィンテージジーンズの雰囲気を再現するためであると同時に、厚手の赤耳デニムでもライディングを妨げないための選択でもある。BMCが得意とする立体構造(3D)パターンを採用することで、太めのシルエットでありながら、乗車姿勢をとった際の生地の突っ張りや余計なダブつきを軽減している。
ただし、このルーズな形状についても注意喚起を行っている。裾幅が広いため、ステップなどの車体突起物に引っかかるリスクがあるという点だ。製品ページには「それによる事故や転倒は自己責任」といった旨の記述まであり、至れり尽くせりの親切設計ではないことがうかがえる。現代の至便なウエアに慣れたライダーにとっては不親切に映るかもしれないが、これには「自分の装備は自分で管理し、乗りこなす」という、バイクライフの原点的な姿勢を問う意図も感じられる。
エイジングを楽しむことを重視したデニム
このジーンズを「機能性ゼロ」たらしめている最大の要因は、その素材特性にある。旧式の織機で織られた赤耳デニムは、表面に独特の凹凸があり、穿き込むことで美しいエイジングを見せる。しかし、それは同時に「激しい色落ち」を伴うことを意味する。

青野氏は、バイクのシートやタンク、あるいは合わせる靴などにインディゴが色移りする可能性が高いことを隠さずに伝えている。
雨に濡れれば染料が滲み出し、洗濯すれば当然ながら色落ちは加速する。これらは一般的なアパレル製品であればクレーム対象になりかねない「デメリット」である。しかし、BMCはこの不便さこそが、自分だけの一本を作り上げるための不可欠な要素であると定義した。

バイクという乗り物自体、天候の影響を受けやすく、メンテナンスの手間もかかる。それでもライダーたちが走り続けるのは、そのプロセス自体に楽しみを見出しているからだ。「俺のジーンズ」は、そうしたバイク乗りのメンタリティに、あえて不便なヴィンテージデニムを重ね合わせた製品と言えるだろう。
開発者・ローリー青野氏の狙い
動画やインタビューから伝わってくるのは、青野氏の「ライダーと一緒に遊びたい」という純粋な思いだ。機能性ウエアの開発で業界をリードしてきた彼が、あえて今、手のかかる製品を世に問うたのは、スペック競争とは別の軸にある「豊かさ」を提案したかったからではないだろうか。

「貴方のバイクライフをジーンズに刻み込んでほしい」。そう語る青野氏の表情は、メーカーの代表というよりは、一人のジーンズ好きのそれである。
利便性が最優先される時代において、BMCの「俺のジーンズ」は異質な存在だ。しかし、手間暇をかけて道具を愛でることを知るライダーにとっては、またとない相棒となる可能性を秘めている。単なる移動手段としてではなく、趣味としてバイクと向き合う人々にこそ、一度手に取っていただきたい一本である。
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www.youtube.comまとめ:西野鉄兵











