複数のメディア報道によると、経済成長著しいベトナムは2026年7月1日から、首都ハノイの環状道路1号線でのICE搭載2輪の運行を禁止することを7月12日に決定したそうです。現在ハノイ市内では約690万台の2輪車が使われていますが、この政策によってベトナム国内の電動2輪への移行は加速することになりそうです・・・。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2025年7月24日に公開されたものを一部編集し転載しています。

2030年までに、制限区域を環状3号線まで拡大する方針!!

トランプ関税問題など世界経済の今後にはいろいろ不透明な部分もありますが、ASEAN圏内で高い成長率を維持しているベトナムは有望な成長国として世界から注目を集めています。そんなベトナムの首相であるファム ミン チンは7月12日、「20/CT-TTg」という環境保護と大気質改善に関する政令を発布しました。

その内容は、首都ハノイの環状道路1号線におけるICE搭載2輪車の走行を禁止する・・・というものです。ハノイには、現在建設中で2027年度開通予定の環状4号線含む4つの環状道路がありますが、今回の政令は最も内側の旧市街を囲む環状1号線(全長約7.2km)における、ICE搭載2輪車運行を全面禁止にするという大胆なものでした!

画像: 図の1番内側、赤い線で示されるのが環状1号線です。 www.viet-jo.com

図の1番内側、赤い線で示されるのが環状1号線です。

www.viet-jo.com

さらに行政は、2028年1月1日にはICE搭載2&4輪の環状1号線および環状2号線内の利用制限実施を予定しており、2030年までに制限区域を環状3号線まで拡大する方針を打ち出しています。2024年12月にはハノイ市人民評議会が低排出ゾーン設立を可決しており、2025年7〜9月の間にその運用計画が公表されるスケジュールが組まれています。

近年、ベトナムは大気汚染、渋滞、そして事故の対策として様々な2輪車台数削減策を打ち出しています。その一方、テールパイプからのCO2排出ゼロの2輪EVを優遇することで、2輪EVの普及促進を促してもいます。

2輪EV優遇は、自国産業を後押しするねらいもあるのかも?

ハノイ市内で運行されている2輪車の台数は、現在約690万台ほどといわれています。また市外から来て定期的に市内で走行している2輪車は約150万台で、これらの最大70%は環境性能の低い古い車両であると、ハノイ建設局は公表しています。これら2輪車はハノイの大気汚染の、大きな原因となっているというのが行政の主張です。

画像: ベトナムに、2万台のホンダ スーパーカブが最初に輸入されたのは1967年のこと。一時はベトナムで使用されるすべての2輪車の90%近くをスーパーカブ系が占めることがあるくらい、彼の地で愛されるモデルになりました。写真はスーパーカブ70カスタムで、小学校教師のオーナー氏は20年同車を愛用し続けているとのことです。 global.honda

ベトナムに、2万台のホンダ スーパーカブが最初に輸入されたのは1967年のこと。一時はベトナムで使用されるすべての2輪車の90%近くをスーパーカブ系が占めることがあるくらい、彼の地で愛されるモデルになりました。写真はスーパーカブ70カスタムで、小学校教師のオーナー氏は20年同車を愛用し続けているとのことです。

global.honda

現存する多くの台数のICE搭載2輪車を、一気に2輪EVに転換するのはとても難しいことのように思えます。ハノイ市人民評議会の議長はメディアに対し、メーカーと協力して低排出ゾーンでのICE搭載2輪車削減プログラムを実施し、2輪EVの購入支援策などを打ち出すプランを明かしています。2030年まで続くこの計画の成否は、政府の思惑にどれだけハノイ市内および近郊の2輪ユーザーが、理解を示すかにかかっているのでしょう。

なお現在ベトナムの2輪EV業界は、2017年に設立された地元メーカー、「ビンファスト」の急成長ぶりが話題となっています。2輪市場全体では、2024年は販売台数290万台(4.9%増)と好調に推移。ホンダとヤマハがベトナム市場の1-2位の座にありますが、ビンファストは売り上げを501%も増加させ、2輪EV部門のリーダーかつ、ベトナム市場3位の地位まで伸長しています。

画像: ビンファストの電動スクーター、ヴェント ネオ。最高速度は78km/hで、最大航続距離は194kmと公称しております。 shop.vinfastauto.com

ビンファストの電動スクーター、ヴェント ネオ。最高速度は78km/hで、最大航続距離は194kmと公称しております。

shop.vinfastauto.com

ICE搭載車からEVへの転換促進策ともいえるハノイ市の低排出ゾーン計画ですが、この政策にはビンファストのような自国のEV専業メーカーの成長を、加速させる意図ももしかしたら含まれているのかもしれません? そのとおり、という仮定が前提の話ですが、環境対策と経済政策の一石二鳥がうまくいくのかどうか、ベトナムの行政のお手並み拝見・・・といったところですね。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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