文:横田和彦、オートバイ編集部/写真:関野 温
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カンナム「スパイダーRT SEA-TO-SKY」インプレ(横田和彦)

Can-Am
SPYDER RTSEA-TO-SKY
2025年モデル
総排気量:1330cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:755mm
乾燥重量:464kg
税込価格:469万3600円〜
クルマでもバイクでもない独特の操縦感覚!
雪上車やATV、水上オートバイなどを製造するカナダのモビリティメーカー・BRP。その中で3輪モデルを製造しているブランドがCan-Am(以下カンナム)だ。ちなみにカンナムとはカナダとアメリカの略である。
実車を目の前にすると迫力に圧倒される。試乗したのはスパイダーRT(ロードスター・ツーリングの意)の最上位モデルSEA-TO-SKY。SEA-TO-SKYとはカナダを横断するルート99のことを指すそうで、そこを優雅に走り抜けることをイメージしたグランドツアラーといえる。
カンナムの3輪モデルは普通免許で運転することができるが、ポジションはバイク。ヘルメットを被り(義務ではないが装着を強く勧められている)シートにまたがるが、大柄な車体は傾くことなく安定。すでに不思議な感覚だ。

それに輪をかけるのがハンドルにレバーがないこと。ミッションがセミオートマチックなので、クラッチレバーがないのはわかる。しかしブレーキがフットブレーキだけというのがバイク乗り的にはやや心許ない。
エンジンを始動し左グリップの横にあるボタンでギアを入れる。そしてアクセルを開ければ走り出す。シフトアップ/ダウンはグリップ横のボタン操作で行うが、ダウンに関しては速度が落ちると自動的にしてくれる。基本操作は実にシンプルである。
だが挙動は独特。曲がるときは体重移動ではなくハンドルを使うのだが、操作に対する車体の反応はダイレクトかつクイック。わずかに動かしただけでグンッと瞬時に向きが変わるさまはカートのようだ。ブレーキペダルを踏み込むと3輪にあるブレーキが同時に働き、安定しながら強力に減速。そのストッピングパワーを活かすとコーナー進入時のブレーキングポイントを深くできる。
コーナーリング中、車体はバンクすることなく外側の前輪で荷重を受けながら曲がっていく。そのときに感じる横Gはバイクでは得られない新鮮なもの。接地感が確実に伝わってくるので、慣れてくるとコーナーリングスピードを高めていけるのだが、ニーグリップなどを駆使して身体をホールドさせる必要がある。

その際に路面のギャップを拾って跳ねるように感じられるシーンもあったが、挙動が大きく乱れることはなくラインをトレース。トラクションコントロールや横滑り防止装置といったセーフティシステムが搭載されているという安心感もあり不安になることはなかった。
大柄な車体を制御している感覚が強く得られる操縦フィーリングはカンナムでしか得られないもの。乗ってみてはじめて楽しんでいる人の気持ちが理解できた。車体を見ただけでは絶対にわからない特性は、一度は体験してみる価値があると感じた。
Can-Am最新車種2台も試乗!
▶カンナム「スパイダー・F3リミテッド・スペシャルシリーズ」

Can-Am
SPYDER F3 LTD SPECIAL SERIES
2025年モデル
税込価格:451万8900円〜
スパイダー・F3リミテッド・スペシャルシリーズは、RTと同じ排気量の直列3気筒エンジンを搭載。ハンドルが大きく手前に引かれているため、よりリラックスできるポジションになっている。走ると車重がRTより20kgほど軽いためか回頭性が軽い印象だった。
▶カンナム「ライカー・ラリー」

Can-Am
RYKER RALLY
2024年モデル
税込価格:265万3600円〜
軽さを感じるフォルムのライカー・ラリーは、排気量900ccの直列3気筒エンジンを搭載。トランスミッションはCVTなのでアクセルの開閉だけで速度をコントロールする。スパイダーと異なりパワステがないので、ダイレクトでスポーティなハンドリングが味わえる