今でも草レースに出られるような好コンディション
「最初に入ってきた時から長いこと見てきた車両で、入庫時には既に1045cc仕様になってました。それでJD-STERドラッグレースを走るようになったんです」
ストリート車両からTOTなど草レース、ドラッグレースまでと、多くのZをサポートしてきたZAPレーシングサービスの長谷川さんはこのZについて言う。

「ほかの仕様はカムがAPE410だったりキャブがVM33、マフラーがウチのZAPオリジナルメガホンだったりします。車体はピボットとネックあたりに補強を入れてリヤサスはレイダウン。
この仕様で120~124、5PSあたり出ていました。それでももっと(パワーを)出したいねって1260cc仕様のエンジンを別に作ってから載せ替えて、これが155PSくらい出してて、ET(SS0→1/4マイル[約402.1m]のタイム)10.1秒まで詰めることができた。ならば10秒フラットいこう! ってなったんですけど、シャシー側で行き詰まりを感じたこともあって、その1260ccエンジンはローダウンのドラッグレース専用シャシーに載せ替えたんです。
そして、積み替え時に残していた1045ccエンジンをもう1度元のフレームに戻して、街乗り仕様で仕立て直したんです」。
それが今のこのZの姿、というわけだ。エンジン右に見えるMRE製クラッチカバーはドラッグ時代の名残とも取れる。

「フロントフォークはかつてのモリワキカヤバでノーマルに同じφ36mm、これをセッティング。リヤはS&W(Zが活躍していた時代のAMAスーパーバイクでも多用されていた)で入庫当時から付いているんですけど、これがよく動くんです。周回レースもイケるんじゃないかってくらい(笑)」。
フレームへの加工や芯になるエンジンは前述の通りで、オーナー・林さんも長く親しんだ上に全力も引き出してきたから、この車両のおいしさは十分知っている。それにZAPレーシングサービス/長谷川さんのサポートもある。こんなオールラウンド&好ポテンシャル+好バックグラウンドのZこそ、理想の姿なのかもしれない。
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Detailed Description 詳細説明

ステムなどはノーマルでハンドルバーはZパーツ。メーターは純正ベースにエンジン回転計のケースにSTACKクラブマンST200を埋め込んでいる。

ロッズデザインでカスタムペイントされた外装は見ていくほどに深いテクニックが見て取れる。タンク前半のオレンジ部にはさらに別のパターンが入り、KAWASAKIロゴも最後のIにフレアが入るなど、つい見入ってしまう。

シートは加工してサイドカバーレス、シート下パーツも移設した仕様だ。

丸穴肉抜きレバー&可倒式バーのステップは「モリワキモンスター風のオリジナル」と長谷川さん。ドライブチェーンはD.I.DのZVMX530を使う。

ラバーバンド止めのオイルクーラーなど歴戦のZらしい印象も見えるエンジンはΦ71mmのワイセコ鍛造ピストンでの1045cc仕様でカムはAPE410、ヘッドも面研はじめZAPレーシングサービスのノウハウがしっかり投入されるもの。

キャブレターはミクニVM33でピンゲル燃料コックも燃料タンク左右にレイアウトされている。

フロントフォークはモリワキカヤバΦ36mmで、ブレーキはAP・CP2696キャリパーをZAP製キャリパーサポートでリーディングマウントした。

リヤサスは純正丸鉄スイングアームの下側にパイプ補強を追加し、S&Wショックをレイダウンマウントして組み合わせる。ホイールはマグネシウム鍛造のMAGTAN JB1でサイズは2.75-18/4.50-18を履く。