レポート:黒石研仁(スマートモビリティJP編集部)
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2025年5月17日に公開されたものを一部編集し転載しています。
EVとしては控えめな加速感。扱いやすいスロットル操作が特徴
車両の起動はプッシュ式ではなく、いまどき珍しくなった「メカニカルキーをキーシリンダーに差し込む」形式を採用。起動後の運転操作は、バーハンドルにある物理レバーと物理ボタンでできるため、一度ボタン配置を覚えれば簡単に扱える。

ハンドルの右にキー差込口、ワイパー起動スイッチ、デフロスタースイッチを備えている。
運転を開始すると、「モーター制御がマイルドである」という印象を受けた。停止状態からスロットルをいきなり最大までひねってもレスポンスはゆったりしており、どちらかといえば穏やかに加速していくといったイメージだ。
これは決してモーターパワーが足りないという意味ではなく、急発進防止を目的とした「車両制御」として実装されているのかもしれない。
というのも、ブレーキ使用時にはモーターへの電力供給がカットされる制御システムを採用している一方、成人男性が2名乗車した状態で、東京都内の有名な急坂「行人坂(平均勾配15.6%)」を坂道発進しても楽々登坂できたため、モーターのトルク不足を感じることはなかった。
また、AT車のクリープ現象が再現されず、前進・後進いずれの場合でもスロットルを回す必要があるタイプであることを考えると、こうしたモーター特性は安心機能のひとつとして設計されていると言えるだろう。
運転感覚もクルマとバイクの中間。視界や小回り性能は良好で、バック走行もできる
操舵装置はバイクと同じ「バーハンドル」であるものの、旋回時はクルマと同様に車体もハンドルも傾かない構造になっている。
つまりハンドル操作はバイクや自転車ライクで、運転挙動は3輪のクルマという少し特殊な運転感覚なので、はじめて運転するとき、旋回するときに注意が必要だ。車両の全幅に対して全高が高く、しかも前1輪/後2輪の3輪車であるため、カーブを曲がる際に減速と旋回を同時に行おうとすると、斜め前方に荷重が移動して不安定な挙動を示す。
教習所で教わった「運転の基礎」を思い出し、カーブを曲がる前にあらかじめ減速しきること、再加速するのはカーブを曲がり終わってからという運転を心がけると、安定した走行をできそうだ。

センターシートレイアウトの運転席と後部座席(2人乗り)を備える。
ブレーキは、自転車と同じくハンドル左右にあるレバーを引いて行うシステムであり、右が前輪/左が後輪というシステムも含めて違和感なく操作できるはずだ。また運転席からの視界は、「運転席側面が開放されている」という特長により非常に良好。

バイクのようなバーハンドルで操作系統もEVバイクそのもの。ただし、車体が傾かないというクルマ要素もあるため、新鮮な運転感覚を体験できる。
ちなみに、ギア選択をリバースに入れると後進可能で、バックカメラも標準装備しているため、コンパクトで小回りがよく効く車体と合わせ、安全に駐車できるだろう。

メーター画面はわかりやすいデジタル表示。ギアをリバースに入れると自動でバックカメラが起動し、メータ画面に表示される。
さらに、風雨をしのげるファスナータイプのサイドカバーを標準装備しており、雨の日でも濡れずに運転可能なほか、寒いときには風よけとして用いることで快適に移動できるのも嬉しいポイント。
普段は折りたたまれており、使う際にはおろして利用するため、乗り降りの際に邪魔になることはない。また、車体に固定している留め具を外せば簡単に取り外しが行え、新品パーツもオプション品として販売されているので、カバーが劣化しても自分で交換可能だ。

「eNEO」シリーズでは、サイドドアの代わりにサイドカバーを標準装備することで風雨をしのげるようになっている。
EVでもっとも重要な(気にする人が多い)航続距離については、カタログスペックで100kmを謳っている。
今回の試乗取材では、合計35kmを走行し、取材終了時のバッテリー残量は55%であった。これをもとに単純計算すると、航続距離の実測値は約78km、カタログ値達成率は78%となる。
ただ、今回の試乗ルートや条件はやや厳しいものだった。
①成人男性2名が乗車(合計約150kg)
②途中で急坂を経由
③幹線道路ではフルスロットルでしっかりと加速し、最高速度50km/hで巡航
と、航続可能距離を短くする条件が揃った。これだけハードなシチュエーションで利用しても80kmほど走行できるのは、十分実用的と言えるだろう。
充電については家庭用電源(100V)での充電に対応。充電口の形状がEV普通充電器と同じ「J1772」であるため、家庭用コンセントだけでなく街中のEV充電スポット(200V)でも充電できるのは嬉しいポイントである。
100Vでは6~7時間、200Vでは3~4時間で満充電になる。同車両は高速道路を走行できないことを考慮すると、利用後の充電を習慣化すれば充電残量で困るシチュエーションは少ないだろう。

家庭用電源、EV普通充電スポットの両方で充電可能なので、出先で充電することもできる。
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