自転車と比べると、オートバイにはクラッチレバーやシフトペダルが備わっていて、運転操作が難しいと考える人もいるでしょう。この記事では、オートバイに備わる「走る」「止まる」ための機構を装備ごとに解説していきます。
画像: バイクの教習所に行く前に知っておきたい8つのこと|オートバイを動かすための基本操作と装備の役割を簡単に解説

マニュアルトランスミッションの一般的なオートバイは両手・両足を使って操作します。初めてオートバイに跨ると、どのパーツが何の役割を果たしているか、さっぱり分からないかもしれません。

この記事では、これから二輪免許を取得するために自動車学校(教習所)に入校するという方へ向けて、オートバイに備わる基本的な8つの装置について紹介します。

イグニッション

画像: イグニッション

オートバイの電源を入れるための装置

オートバイを動かすためにまず必要なのがイグニッションキーです。キーシリンダーの中にキーを挿し込み、回すことで電源が入ります。

クルマと異なりオートバイは、キーを回すだけではエンジンはかかりません。エンジンをかけるには、キーを回したのち、次の項目で紹介するセルスターターを押す必要があります。

また多くの車種では、キーシリンダーにハンドルロック機構が備わっています。一般的に右に回すと電源(イグニッション)オン。ハンドルを左に切った状態で、左に回すと停車時に盗難防止のために使うハンドルロックの状態となります。

画像: ▲近年は小排気量車でもスマートキーシステムを採用する車種が増えてきています。スマートキーの場合はクルマと同じくキーを挿し込む必要なく、キーフォブを携行していれば、電源を入れることができます。写真はホンダ「スーパーカブC125」。

▲近年は小排気量車でもスマートキーシステムを採用する車種が増えてきています。スマートキーの場合はクルマと同じくキーを挿し込む必要なく、キーフォブを携行していれば、電源を入れることができます。写真はホンダ「スーパーカブC125」。

セルスターター

画像: セルスターター

エンジンをかけるためのボタン

「セルスターター」は、“セルフ・スターター”の略称です。車載バッテリーの電気を使ってエンジン付近に搭載されているセルモーターを回すための機構になります。

イグニッションをオンにした後、このボタンを押すことで、キュルキュルッ……とセルモーターが回り始めてエンジンがかかる仕組みになっています。スクーターなど車種によってはブレーキを握った状態でないと、エンジンがかからない場合があります。

昔のオートバイは、足でキックペダルを押し下げて、エンジンをかける「キックスターター」が備わっていることもありましたが、現在は一部の原付バイクなどにのみ採用されています。キックスターターが備わった車種はバッテリーが弱っていてもエンジンをかけることができましたが、セルスターターのみの車種はバッテリーが始動のための肝心要となります。

画像: ▲ヤマハ「SR400」は、2021年に発売された最終型まであえてキックスターターだけを備え、セルスターターは装備されませんでした。キック始動のかっこよさはありますが、やはり便利さではセルスターターが上回ります。

▲ヤマハ「SR400」は、2021年に発売された最終型まであえてキックスターターだけを備え、セルスターターは装備されませんでした。キック始動のかっこよさはありますが、やはり便利さではセルスターターが上回ります。

キルスイッチ

画像: キルスイッチ

エンジンを強制的に停止させるボタン

オートバイのハンドルの右側に備わっている“赤いボタン”が「キルスイッチ」です。このボタンはエンジンを緊急停止させるためのスイッチとなっています。

主にオートバイを倒してしまったときなど緊急時に使うものです。ただ、このキルスイッチを押すことで、エンジンがいつでも停止させられるということは覚えておきましょう。

ちなみに、なぜかエンジンがかからなくなってしまった場合は、まずこのキルスイッチが押されていないかを確認するといいでしょう。触れやすい場所なので、うっかり押してしまうことがままあります。キルスイッチが押されている状態では、セルスターターをプッシュしてもエンジンはうんともすんともいいません。

スロットル(アクセル)

画像: スロットル(アクセル)

回すことで加速する

オートバイの運転における象徴ともいえるのがスロットル操作。スロットル(アクセル)を回すことで、オートバイが加速するというのは、乗ったことない人でもご存じの方が多いでしょう。

手順として、イグニッションをオンにする→セルモーターを押してエンジンをかける→クラッチレバーを握りギアをニュートラルから1速に入れる→半クラッチ操作をしながら、このスロットルをひねることで、オートバイは進みだします。

スロットルを開けることで、エンジン内にガソリンと空気の混合気が送り込まれます。その量によって、エンジンの回転数が変わり、加速度も変わるという仕組みです。

ブレーキレバー(フロントブレーキ)

画像: ブレーキレバー(フロントブレーキ)

前輪のブレーキをかけるためのレバー

一般的なオートバイは、右手で操作するレバーがフロントブレーキをつかさどるレバーになります。この点は自転車と同じですね。

ただ自転車よりも、制動時における前輪ブレーキの重要性が高くなっています。よくいわれるのは、前輪7:後輪3というブレーキ入力比率の目安。オートバイは前輪でしっかり制動させ、後輪でバランスを整える、という乗り方をしている人が多いイメージです。

オートバイは右手で、スロットル(加速)とブレーキ(減速)を交通状況に合わせて選択しながら走って止まる乗り物です。これはマニュアルミッション車もスクーターなどのオートマ車も共通となっています。

クラッチレバー

画像: クラッチレバー

マニュアルトランスミッション車のクラッチ操作を行なうためのレバー

一般的なマニュアルミッション車の左ハンドルには、「クラッチレバー」が備わっています。

“クラッチ”はいいかえると「動力伝達装置」。エンジンで発生した動力をミッション(ギア)に伝えたり、切り離したりするための機構です。クラッチレバーを握ることでクラッチが切れ、動力を遮断することができ、離すと動力を伝えることができます。

発進時や超低速走行をするには「半クラッチ」操作が必要となります。半クラッチとは、その名の通り半分クラッチが繋がった状態のこと。エンジンの動力をすべて伝えるのではなく、レバーを操作することで、伝達量を変えることができます。

オートバイの運転で最初に難しいと感じるのは、この半クラッチ操作だという人は多いと思います。クラッチレバーを握りこんだ状態から少しずつ放していく動作は、感覚がつかめるまで緊張するものです。

しかしこのクラッチレバー操作こそマニュアルミッション車の醍醐味。シフトチェンジをする際にクラッチレバーを握って、シフトペダルを上げる一連の動作は、オートバイを運転している気分が高まる瞬間でもあります。

シフトペダル

画像: シフトペダル

ギアチェンジを行なうためのペダル

マニュアルミッション車の左足を置くステップの前に備わっているペダルが「シフトペダル」(チェンジペダル)です。

シフトペダルはギアチェンジをする際に使う装置です。一般的なマニュアルミッション車は4〜6速までギアの段数があり、クラッチレバーを連動させながら操作します。

多くのオートバイでは、ニュートラル(N)の状態から、ペダルを踏み込むと1速に入り、2速以上はペダルを蹴り上げることでギアチェンジさせていく「リターン式」が採用されています。

ニュートラルを起点とし、「1速←N→2速→3速→4速→5速→6速」という具合にシフトチェンジが可能になっています。

ブレーキペダル(リアブレーキ)

画像: ブレーキペダル(リアブレーキ)

後輪のブレーキをかけるためのペダル

マニュアルミッションのオートバイの場合、右足ではリアブレーキを操作します。ステップの前に備わっているのがブレーキペダルです。このブレーキペダルを踏むことで、リアブレーキを利かせることができます。

制動時は右手のフロントブレーキレバーと一緒に使うことが多いですが、オートバイを停止させるだけでなく、リアブレーキには車速・車体のコントロールにも多用します。

また、坂道発進などフロントブレーキレバーが握りにくい状態で、スロットルを回さなければならないときにも活用します。Uターンなど低速時は、リアブレーキと半クラッチを組み合わせることで安定した旋回がしやすくなります。

画像: ▲クラッチレバーを持たない、一般的なスクーター(オートマチックトランスミッション車)は、左ハンドルのレバーがリアブレーキをつかさどっています。

▲クラッチレバーを持たない、一般的なスクーター(オートマチックトランスミッション車)は、左ハンドルのレバーがリアブレーキをつかさどっています。

まとめ

画像: まとめ

今回はオートバイの「走る」「止まる」に必要な基本的な装備とその役割を8つ紹介しました。

教習所で使用されるマニュアルトランスミッションのオートバイには、今回紹介した8つの装備が必ず備わっています。教習所でもていねいに教えてもらえますが、あらかじめ何となくでも仕組みを知っておけば、少し安心できるはずです。

両手・両足を使って運転するマニュアルトランスミッション車は、慣れてしまえば非常に面白いもの。ぜひ楽しんでくださいね。

まとめ:岩瀬孝昌

This article is a sponsored article by
''.