エンジンがかからない⁉ はじめにチェックしてほしい5つのポイント

ツーリングの途中、ちょこっとバイクを停めてコンビニへ。ひと休みして、再び走り出そうとしたら「なぜか突然エンジンがかからなくなった!」なんて経験、ありませんか?
エンジンがかからなくなる原因として考えられるのは、大きく分けて3つ。①バッテリーの問題、②ECUやその他の故障、③うっかりミス、です。
古いモデルや、長らく放置していた車体の場合は①②の可能性も考えられますが、「さっきまで快調だったのに……」という場合には、③に挙げた“ライダーのうっかりミス”による一時的な不動状態であることが多いのです。
ということでひとまず、エンジンが突然かからなくなった時、真っ先に確認してほしい箇所を5つご紹介します。
チェック1.キルスイッチ

キルスイッチとは、ハンドルの右側についている赤いスイッチのこと。エンジンを点火する装置への電力供給を遮断するスイッチで、これをONにするとメインキーを回さずともエンジンを停止させることができます。
基本的に125cc以上のマニュアル車には搭載されており、万一転倒した時などに速やかにエンジンを停止させて二次被害を防げるほか、信号待ちなどで一時的にエンジンを止めておきたいときに役立ちます。

しかし、問題はこのスイッチの位置。ご覧の通り、ライダーが触れやすい場所についていることから、「気がつかないうちにキルスイッチを押してしまっていた」ということが起こり得ます。
このスイッチがONになっていると、どんなにセルを回してもエンジンがかかりませんから、まずはキルスイッチの状態を確認しましょう。
チェック2.ギア

次にチェックしたいのが、ギアがN(ニュートラル)になっているかどうかです。
昨今のバイクは誤発進を防ぐため、ギアがNに入っていないとエンジンがかからない、あるいは、ギアが入っている場合はクラッチレバーを握らないとエンジンがかからないような仕組みとなっています。

ですから、まずはギアをNに入れるorクラッチレバーをしっかり握って、セルモーターを回してみましょう。
(スクーターなんかの場合は、ブレーキを握っていないとエンジンが始動しないパターンが多いですよ!)
チェック3.サイドスタンド

ギアと同じく、サイドスタンドの確認も忘れずに。サイドスタンドを畳んでいないと、キルスイッチとクラッチが正しく切れていても、エンジンがかからないような仕組みとなっています。
これは、サイドスタンドをしまい忘れて転倒してしまったりしないよう搭載されている安全装置が働くためです。

チェック4.ブレーキもしくはクラッチ


先ほどギアがN、もしくはクラッチが切れていないとエンジンがかからないモデルがあると紹介しましたが、同様にブレーキレバーを握っていないとエンジンがかからない場合があります。
これは、サイドスタンドと同じく、誤発進を防ぐための安全機構によるもので、特にオートマチックのスクーターモデルに多い仕組みです。
先に紹介した3点をチェックした上で、セルボタンをまわしてみてください。
チェック5.燃料の残量

ここまでチェックしたのにエンジンがかからない! という方。燃料は充分に入っていますか?
近年のモデルはガソリン残量がメーターに表示されるものが多いので、主電源を入れたらまずはガソリンの残量を確認しましょう。燃料計がないモデルは、タンクキャップを開けたり、車体を揺らすことで、燃料の有無が確認できますよ。

ひと昔前のキャブレターモデルに乗っている方は、あわせて燃料コックも確認しましょう。こちらがオフになっていると、そもそも燃料が噴射されませんから、エンジンがかからないのも当然です。
また、エンジンが温まっていない場合や寒い時期なんかは始動時に、チョークを引いてガソリンの噴射量を調節する必要がある場合も多いですから、そちらも調整しつつ、セルを回してみてください。
“うっかりミス”じゃなかった! 考えられるバイク側の問題を紹介
先に紹介した1~5を確認したけれど、やっぱりエンジンがかからない……という場合は、車体の方に問題があると考えて良いでしょう。以下では、バイクに表れる症状と、考えられる問題を紹介します。
①セルは回るけれどエンジンがかからない
→バッテリーが弱っている

セルモーターは回るけれど、エンジンがかからない場合は、バッテリーが弱っているということが考えられます。この場合は無理にセルを回し続けず、速やかに本体を充電してあげましょう。
充電方法は簡単で、バイク専用の充電器を車体のバッテリーに繋ぐだけでOKです。クリップはそれぞれ同じ極の端子に、プラス→マイナスの順番で繋ぎましょう。(外すときはマイナス→プラスの順です。)
自宅に充電器がなかったり、自分で行うのに不安を感じる方は、お近くのバイクショップやガソリンスタンドなどに相談するのがおすすめです。

知識があるなら「ジャンプスタート」もアリ!

バッテリーが単に弱っているだけであれば、エンジンをかけるための電力さえ得られれば、走り出すことが可能です。
セルモーターを回すだけの電力を得たい場合に行うのが「ジャンプスタート」で、電力供給側と需給側の電圧が同じであることを条件として行える対処法です。供給側と需給側、双方のバッテリーを「ジャンプコード」で繋いで供給側のエンジンをかけ、しばらく放置した後で電力を受け取る側のセルモーターを回すことでエンジンを始動させることができます。
手順はいたってシンプルですが、端子を繋ぐ順番を間違えたり、バッテリーに接続したクリップのもう片方をボディにぶつけるなどしてショートさせてしまう危険性もあるため、整備に不慣れな方にはあまり推奨できる方法ではありません。
「ジャンプスタート」は、“知識がある人の最終手段”として考え、一般的には、ロードサービスに任せるのが良さそうです。
②電源そのものが入らない
→バッテリー切れ、ヒューズが切れている、蓄電装置の問題

セルモーターを回す以前に、メインキーを回しても電源が入らない場合は、完全にバッテリーが切れている状態、もしくは電気系統の異常が考えられます。
バッテリー切れだった場合は①で紹介したのと同じく、本体を充電することで元通りに電源が入ります。ただし、バッテリー切れが頻発する場合には、本体そのものが劣化している可能性がありますから、新品への交換も検討してみてください。

バッテリーそのものに問題がない場合は、過電流などによってヒューズが切れてしまっている可能性も考えられます。その場合は、あらかじめ車体に備わっていることの多いスペアのヒューズと、切れているものとを交換して対処しましょう。

バッテリーやヒューズを交換しても症状が治らない場合は、ジェネレーターやレギュレーターの問題も考えられます。ジェネレーターはエンジンの動力を利用して電気を生み出す装置で、その電圧を一定値に調節してバッテリーに送るのがレギュレーターの役割です。
ジェネレーターが故障するとバッテリーへの蓄電が疎かになるため、バッテリー上がりが頻発したり、走行中にエンジンが停止したりします。レギュレーターの故障では、電力不足によってバッテリー不足に陥るのはもちろんですが、過充電によってバッテリーそのものがパンパンに膨れ上がってしまうなんて恐ろしいケースも……。
この2カ所に問題がある場合は基本的に新品への交換が必要ですから、先に紹介したヒューズとあわせて、バイクショップやメンテナンスショップなどに相談しましょう。

レギュレーターの故障によって膨張したGPz750Fのバッテリー。
インジェクションモデルに押しがけはNG!

バッテリーが切れ、セルモーターでのエンジン始動が不可能な場合によく使われていた手法が「押しがけ」です。
バイクを押してクランクシャフトをまわし、ある程度の動力が備わった状態のままクラッチを繋ぎ、それと同時にアクセルを開けることでエンジンを無理やり始動させる方法になりますが、これが使えるのは基本的にキャブレターモデルのみとなります。
インジェクションモデルは、キャブレター車と燃料供給のシステムが異なり、すべてECU(コンピューター)の電子制御で燃料を噴射するので、そもそもバッテリーが切れている状態ではエンジンを始動させることができないのです。
仮に、わずかに電力が残っていたとしても、ある一定以上の回転数が得られないとECUが反応せず燃料を噴射してくれませんし、ECUそのものの負担になることから、やめておいた方が良いと言われています。
③電源は入るし電気系統もオールクリアなのにエンジンだけ✕
→ECUやコンピューターシステムそのものに不具合

先に紹介したすべての箇所をチェックしたにもかかわらず、なぜかエンジンがかからないという場合は、ECUそのものに問題があるかもしれません。
上の写真の赤い矢印が指すマークが点灯している場合は、ECUに何らかの異常があるというサインです。コンピュータを解析できるスタッフでのみ、解決できる問題になりますから、速やかにバイクショップに相談しましょう。
(異常検知マークは、特にECUに問題のないバイクでも誤作動で点灯する場合があります。バイクそのものにエンジンがかからないなどといった異常がなく、走り出したら消えるようであれば特に問題はありません)

また、ガソリン燃焼のために火花を飛ばすスパークプラグにすすが付着して、正常に火花が飛ばなくなる「プラグかぶり」なども考えられます。
電子制御でガソリンの噴射量を最適化するインジェクションモデルでは、滅多に起こることではありませんが、こういった場合はプラグを引き抜いて乾かし、清掃するか、新しいものに交換しなくてはなりません。
プラグレンチなどといった工具類が必要になりますから、その場で対処するのは難しいでしょう。

ここまでいくつかの症例と問題の箇所、その対処法などをまとめてみましたが、基本的に出先でエンジンの始動ができなくなってしまった場合は、ロードサービスに頼りましょう。
無理にセルモーターを押し続けても事態が好転することはありませんし、目と鼻の先にバイクショップがある場合は別ですが、押し歩いて家まで帰ろう、なんて無謀ですから、やめましょう。
また、自身で加入している任意保険にロードサービスが付帯している場合がありますから、これを機に、今一度保険の補償内容を確認してみてくださいね!
まとめ:岩瀬孝昌