SUZUKI 薔薇/蘭(1983年)
「小柄な女性にも乗り降りしやすい“誰でも安心”スクーター」

1980年代前半に入ると、オートバイを趣味として楽しむライダー以外にも、街乗りや買い物などのちょっとした移動に便利な小排気量のバイクやスクーターが人々の生活の脚として定着していきました。
特に手頃な価格と気軽に乗れる大きさの小排気量スクーターは、それまでのバイク好きとは異なるユーザーにまで人気となり、買い物などで日常的に使う女性ユーザーにも受け入れられました。
そしてスズキは更なるファン層の拡大のために女性をターゲットにした50ccの原付一種スクーターを1983年にリリースします。その2台のキュートなスクーターが今回紹介する「薔薇」と「蘭」です。

SUZUKI 蘭(1983年)
1983年1月に誕生した「蘭(らん)」は、50ccの空冷2ストローク単気筒を搭載し、680mmの低いシート高と、乾燥重量が44kgという極めて軽い車体で、小柄な女性でも扱いやすい入門スクーターとして登場。
ギアチェンジやクラッチ操作を不要とし、スロットルを回すだけで走るCVTのオートマチック機構を搭載。左側ブレーキレバーを握らないとエンジンが始動できないスズキ独自の「あんしんスタート機構」も備えていました。

当時の二輪車としては珍しかった日本語の漢字名「蘭」を車名とし、鮮やかな赤色とキュートなデザインで登場。その車名にあやかって、着物を着た元キャンディーズの伊藤蘭さんをCMプロモーションに起用したことでも話題となりました。
大きな座面のシートは座り心地が快適なうえ小柄な女性にも乗り降りしやすく、50cc原付一種スクーターはクルマの免許があれば乗ることができたので、幅広い世代の女性に受け入れられました。

SUZUKI 薔薇(1983年)
そしてこちらが同年1983年の10月にリリースされた「薔薇(ばら)」。
女性向けスクーターとした蘭のコンセプトはそのままに、よりスリムでコンパクトなデザインとし、フルカバードボディに外観樹脂パーツを綺麗に塗装した車体の乾燥重量は蘭より3kg軽い41kgで登場しました。
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基本的なスペックは蘭と同様ですが、メンテナンスフリーの点火方式「PEI」を採用し、キック始動で操作の手間を省いたオートコック式を採用しています。
日本語の花の名前をつけた2台のスクーターは、女性ライダーをターゲットとしたスズキの狙い通りに人気モデルとなりました。
現行車に例えるならどんな車種?
さて、ここからはあくまでもスズキのバイク編集部 岩瀬の個人的な主観で「現在のバイク」に置き換えてみる妄想企画です。
今回はスズキ現行モデルの125ccスクーターにラインアップされている、レトロスタイルのデザインにリニューアルされた「アドレス125」と比較してみたいと思います。

アドレス125(マットボルドーレッドメタリック)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)
スズキ・スクーターの代名詞として、30年以上もファンから愛され続けているアドレスシリーズは、2022年10月にレトロモダンなスタイルに生まれ変わって登場しました。
スクーター然としていたこれまでのスタイルを一新し、ヨーロピアンテイスト溢れるデザインを取り入れ、街乗りや普段使いに便利な機能性も盛り込んだ125ccスクーターは、全体のスタイリングこそ違えど、蘭や薔薇に通じる“オシャレ感”があるように思えます。

アドレス125(ダークグリーニッシュブルーメタリック)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)

アドレス125(パールミラージュホワイト)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)

アドレス125(マットブラックメタリックNo.2)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)
新型アドレス125は、スタイリッシュな「ダークグリニッシュブルーメタリック」とシックなワインレッドの「マットボルドーレッドメタリック」「パールミラージュホワイト」「マットブラックメタリック」がラインアップされ、4色展開になっています。
デザイン性よりも利便性や快適性などが優先されやすい傾向にあるスクーターですが、機能性を損なうことなく見た目も美しいスタイリングに仕上がっているところも、当時のおしゃれスクーター「薔薇と蘭」に通じるスズキの美学を感じますね!