快走&便利さをゼファーに取り込むオリジナルパーツや、整備&カスタムメニューを多彩に用意するバグースモーターサイクル。単に供給するだけでなく、ゼファーの持ち味を知るからこその弱点対策や楽しみ方も提案する内容を、車両とともに見てみよう。
※本企画はHeritage&Legends 2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

新作ピストンも組んだ扱いやすい1100の例

ZRXシリーズやGPZ900Rなどのカワサキ水冷、そしてカワサキ空冷のゼファーシリーズを多く扱うバグースモーターサイクル。以下で紹介するゼファーは同店・土屋さんが自分で普段乗るために組んだという1100だ。どう作られているのだろうかを聞いた。

画像: ▲バグースモーターサイクルの代表の土屋雅史さん。自らもTOTでゼファーを走らせ、多くのパーツも開発している。

▲バグースモーターサイクルの代表の土屋雅史さん。自らもTOTでゼファーを走らせ、多くのパーツも開発している。

「“とにかく軽く、扱いやすいゼファーを作る”を目標にしてみました。以前も1100に乗っていたんですけど、車庫から出す時に重さを感じて乗るのが面倒になったりしたこともあって。そこを解消するのと、自分用だから軽くしてみようと。だからタンクもアルミで外装もカーボンにしています」

アルミ鍛造ホイールにオリジナルチタンマフラー、フェンダーレスキットなども、今では当然に思えるけれどその一環。ウインカーも超小型LEDに換装されている。端部を中心に軽量化が進められ、確かに押しても750ccクラス以上と思えるくらい軽い。ここはオリジナルのステアリングステムで17インチホイールに対応している分も関わっている。テールもすっと後ろに伸びて、取り付きやすい感じで仕立てられている。

画像: ▲Bagus! ZEPHYR1100。乗る前からの軽量化と街乗りでの利便性への提案を盛り込んだ見本車だ。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

▲Bagus! ZEPHYR1100。乗る前からの軽量化と街乗りでの利便性への提案を盛り込んだ見本車だ。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

「扱いやすさに振る意味でこうしています。テールアップにした方が格好良くて走りやすいんですけど、街中だと走りっぱなしでなく停まることも多いですから、その時の足つきなど考えて安心感も持たせてます」

この軽さと動かしやすさ、安心感は普段使いに良さそうだ。それだけでなくこの車両には、オリジナルパーツの新作も装着されている。フロントブレーキディスクは「BAGUS! オリジナルワークスエキスパンドフロントディスクローターΦ320」。本来はラジアルマウントキャリパー用のサンスター・ワークスエキスパンドを、アキシャルキャリパー用にパッド幅を合わせて使えるようにしたもの。これはまさにその装着例だ。

見えないところではエンジン内部。既に750用で1mmオーバーサイズのφ67mm、810ccとなるφ69mm、さらに上の850ccとなるφ70.5mmを展開するバグース×オメガ鍛造ピストン。これに新たに1100用が加わり、この車両にも組み込まれている。

画像: ▲新たにラインナップに加わったゼファー1100用オメガピストン。

▲新たにラインナップに加わったゼファー1100用オメガピストン。

「ボーリングのみで組めるφ76mm(1135cc)です。φ80mmも加わります。1100ではトップ形状を極力フラットにして、少し低くてカーボンの溜まりやすい肩の部分を純正よりも上げて燃えやすくしています。圧縮比も少し上げてあって、それもきれいに燃える形です」

新しいパーツはそのままゼファーの環境を良くする。このゼファー1100は土屋さんが少し乗ったところで買い手が付いたとのことで、それだけ魅力があったのだと考えていい。

画像: ▲Bagus! ZEPHYR750。長年重ねたスープアップの上に静粛性目的でのFI化を果たした車両だ。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

▲Bagus! ZEPHYR750。長年重ねたスープアップの上に静粛性目的でのFI化を果たした車両だ。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

一方でもう一台のゼファー750は、もう十数年乗るオーナーの依頼でフューエルインジェクション(FI)化したもの。多くのカスタムを受け、仕様も変え、日常から走行会まで使う中での要望だ。

「目的は静かにするためでした。周辺のこともあって、と。FI以前はFCRキャブでしたが、その作動音も含めて抑える。排気系はいろいろやれますけど、吸気は……というわけでFIに」

土屋さんは軽く説明してくれるが、専用品はないからあれこれ探して形にしていった。スロットルボディやアダプターに燃料ポンプ、各種センサにコンピュータ。セッティングも不可欠だ。それらをこなした実際の走行音は、少しの排気音が聞こえる程度で他の音はない。現代のミドルモデルよりも静かかもしれない。

1100にも750にも共通する、パーツや手法を探して形にする力。それがゼファーに向けられているから、バグースの作業やパーツに安心感と、次に何が来るかの期待が持てる。

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多くのゼファーファンに使いやすさも考えていく

先のオメガピストンは1100にも750にも有効だ。オーバーホールにもスープアップにも、目的に応じて柔軟に使える設定がされている。そのオーバーホール、土屋さんの用意するメニューはこちらも柔軟で、“ひと味違う”。

ヘッドまわりはバルブ/ガイドまわりの確認や修正、最適仕様化は当然として、燃焼室も必要な仕様を作る。850cc仕様では。、ツインプラグ化(点火キットも用意される)して燃焼室容積を揃え、大径ピストンのショルダーに合わせつつデトネーション(異常燃焼)防止用に拡大/スキッシュ加工を施す。

画像: ▲ゼファー750用に850cc仕様に応じたて加工されたシリンダーヘッド。

▲ゼファー750用に850cc仕様に応じたて加工されたシリンダーヘッド。

バルブは大径化した上でフェイスは大径の吸気側をフラットに、小径の排気側を凹型にして圧縮比を高める。こうして求めるスペックに応じ最適な加工を行っていく。

シリンダー内壁にはスプラッシュホーニングとよばれる加工も用意する。粗さを抑え必要なクロスハッチ(X字様の斜め交差筋)を入れつつ、さらに水平方向にも筋を加えた感じをイメージすると分かりやすいだろう。

クランクシャフトにも工夫がある。下写真で鏡面のような光り感がわかるだろう。

「マイクロポリッシュです。簡単に言えば微粒子によるブラスト加工のイメージ。クランクシャフト全体に施せます。表面の微細な凹凸がなくなり、ジャーナル部では線当たりしていた部分が本来そうあるように面当たりになります。ウエブ部ではオイル落ちが早くなって抵抗も減ります。これはミッションにも施工できます。

画像: ▲表面の光沢さがよくわかる、マイクロポリッシュ加工されたクランクシャフト。

▲表面の光沢さがよくわかる、マイクロポリッシュ加工されたクランクシャフト。

クランクバランスも取ります。もっと上を目指したいのなら、予算と時間はかかりますけど“ゼロバランス”があります。1/100台でバランスし、数値化もする。

ひとつひとつはほんのちょっとした利点ですけど、それを組み合わせることで全体としてのスムーズ化や、長く乗れるなど、メリットも大きくなると思いますよ」

オメガピストンもそんなひとつ。鍛造の製法形状だけでなく、ピストンピンへのオイル穴など潤滑性など多様な要求に応える仕様を持つことにも注目できる。

ここまでパーツや加工が揃えばゼファーの環境は万端かとも思うが、まだ先もあるようだ。

「1100だとクランクメタル。もうないので、高荷重で使えるものを探しています。ミッションも2速や5速を交換することが多いですが、1速も純正部品が出ない。いずれはメインシャフトもなくなるでしょうから、純正レシオのオリジナルASSYでも出せるとそんな個別分にも対応できるかなとは考えます。ほかにもありますけど、何とかしていきたいですね」

こう言う土屋さん。オメガピストンも、なくなるパーツを補完し、かつ多くの人の使い方に合うよう考えて作った。その思想でさらにパーツが増えるなら、ゼファーにはまた新しい世界が開けるはずだ。

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“ひと味違う”オーバーホールメニューと作業の汎用性もにらんだパーツ群

バグースモーターサイクルではゼファーの特性を掴んだ上で、ひと味違うオーバーホールメニューを用意する。スムーズで長く乗れること。そのためにエンジン内部にもオリジナルパーツを用意する。それらは車体パーツ同様、できるだけ多くの人に普通に使えるという狙いも持っている。

●750にほしいパワーと耐久性を満たすヘッド加工

画像1: ●750にほしいパワーと耐久性を満たすヘッド加工
画像2: ●750にほしいパワーと耐久性を満たすヘッド加工

画像1: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
バグースではゼファー750用に810cc化や850cc化のスープアップメニューを用意しているが、写真は850cc仕様に応じたシリンダーヘッドの加工例。ピストンが大径化するのに合わせてピストンショルダーがヘッドに干渉するのを防ぐべく燃焼室周部を拡大、ツインプラグ加工している。バルブは吸気側フェイスを平らにし(その分の重量をステム細径化でバランス)圧縮を高め、排気側は凹型で燃焼室容積を稼ぐ。耐久性とのバランスも取っている。

●クランクは“ゼロバランス”や低抵抗化に有利なマイクロポリッシュもある

画像: ●クランクは“ゼロバランス”や低抵抗化に有利なマイクロポリッシュもある

画像2: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
クランクシャフトのバランス取りも基本メニューのひとつとなっているが、費用と時間に余裕があれば1/100台で数値化したバランスを取るゼロバランスも行える。その上で写真のクランクシャフトのように、マイクロポリッシュ加工も行える。ジャーナル(軸受け)部は面でメタルに触れるように平滑化でき、ウエブのオイル落ちも早くなる。右上写真のようにギヤ部もなめらかで当たりも良くなり、穴開け部のエッジも取れる。スムーズ化と長寿化が図れるメニューだ。

●バグース×オメガ鍛造ピストンは1100用も登場

【1100用ピストン】

画像1: ●バグース×オメガ鍛造ピストンは1100用も登場
画像2: ●バグース×オメガ鍛造ピストンは1100用も登場

画像3: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
750用3タイプに続いて加わった1100用のBAGUS! OMEGAピストン。イギリス製鍛造で、ボーリングのみで使えるφ76(写真、1135cc)とスリーブ入れ替え/ケースボーリングが必要なφ80mm(1260cc)を設定。トップ形状は純正に準じたフラットでヒートスポットを避ける。中写真は純正(右側)とピストンピンでつないでショルダーを比較したもの。全体的にショルダーを1.5mmほど高めて圧縮比を高めるとともに燃焼しにくい部分を排した。裏面にはBAGUS! とOMEGAのダブルネームが入る。価格は15万1800円。

【750用ピストン】

画像4: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
750用のオメガピストン。φ70.5mmで850cc仕様。これとφ69mm(810cc仕様)は要スリーブ入れ替え/クランクケースボーリング。ベースガスケットやトップ加工で狙う圧縮比設定ができるようになっているのも特徴だ。

画像5: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
右はコンロッド/シリンダーを組んだ状態で載せた上で、センターにピストンを入れられるアダプター。これでピン下までピストンを送り、ピンを入れたところで左のピストンピンクリップセッターにピンクリップを入れて押し出せばパチッとクリップが入る。内燃機屋さんと製作したもので作業時間を短縮しつつ確実さも増し、誰にも使えるので市販も視野に入れる。

画像6: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
ツインプラグヘッド加工を行った際に必要になる点火ユニットも用意(写真はユニット本体[ASウオタニ製ツインプラグ専用品]とコイル/コイルマウント。配線類も同梱)。コイルマウントプレートはオリジナルでブラックを用意して装着時の統一感も生む。詳細は問い合わせを。

●オリジナルステムの利便性を高めるパーツも追加

画像1: ●オリジナルステムの利便性を高めるパーツも追加
画像2: ●オリジナルステムの利便性を高めるパーツも追加

画像7: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
オフセット30mmのバグース・オフセットステムキット(16万7200円、上は1100用)。経年や個体差などベース車の状態によりフォークとタンクなどに干渉が出ることがあるが、下のプレート=「アディショナルハンドルストッパー Bagus!ステムキット専用」(2200円、1100/750用別)をストッパー下に入れて干渉を抑制できる。

●次の変化も楽しめるオリジナルディスク登場

画像8: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
既にサンスターディスクを使い、次の換装時に変化を楽しみたい向きにと作られた「BAGUS! オリジナルワークスエキスパンドフロントディスクローターφ320」。ラジアルマウントキャリパー適合でパッド幅の合わないワークスエキスパンドディスクをアキシャルキャリパー用に製作。15万1800円。標準はブラックピンでカラー指定は7920~1万3200円プラス。

画像9: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
2004年型以降のゼファー750ではホーン取付がステム下になり、前記のステム換装時に行き場がなくなる。それを解消する「ホーンステー」(1650円)はエンジン右前への移設を可能にする。

画像10: いつでもゼファーに長く乗れることに注目した、パーツ供給と車両作りに迫る|バグースモーターサイクル【Heritage&Legends】
これも近作でピストンとコンロッドをモチーフにした「Bagus! ピストン型ヘルメットホルダー」(1650円/1個)。ブラックアルマイト+レーザー刻印で、工夫して多彩に使ってもらっているとのことだ。

取材協力:バグースモーターサイクル

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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