文:宮﨑健太郎
フェアリングの登場で劇的に進化した空力
英語圏ではフェアリングと呼ばれるパーツは、日本ではなぜかカウル(カウリング)という呼び方が定着して久しい。1950年代からロードレースでの採用が一般化したフェアリングだが、1970年代初頭のビッグバイクブームとともに、海外メーカーのいくつかは市販車へのフェアリングの標準装備化を進めていくことになった。
1976年にはBMWから量産公道車としてはフルフェアリング初採用となるR100RS(/7=スラッシュセブン)がデビュー。風洞実験と人間工学に基づいてまとめ上げられた同車のフルフェアリングは、後年のフォロワーモデル群に多大な影響を与えた。
業界の要請に応え、日本市場でフェアリングが行政に認可されたのは1982年のこと。同年7月以降はホンダCBX400Fインテグラを皮切りに、続々と各社がフェアリング装着車を登場させていくこととなる。機能面の効果のほか、市販車の場合ロードレーサーをイメージさせるファッション的な効果もあるフェアリングは、1980年代のレーサーレプリカブームを生み出す要因にもなった。
最高速アップ、省燃費化、ウインドプロテクション向上など様々なメリットを持つフェアリングだが、あえてデメリットをあげるとすると、高価格化をまねくことになったことだろうか? 1980年代はリアモノショック、水冷機構、アルミフレームなどの技術が公道量産車に続々採用され、その結果として車両価格の高騰が加速していくことになった。フェアリングも、その一役を担ったことは否めない。
近年はMotoGPなどの影響で、フェアリングへのウイングレット装着が流行しているのは周知のとおりだ。公道車への採用から半世紀以上の時を経たフェアリングだが、この分野の進化の伸び代は、まだまだ大きいといえるのだろう。
文:宮﨑健太郎