車両メーカーと同等の認定用試験もクリアした完成車

’80年代の国内バイク市場の主力は2ストローク車だった。公害や騒音の対策で1970年代末には各社とも4ストロークへの主力切り替えを行い、2ストが下火になっていたのにだ。火付け役はヤマハRZ250で、軽く速いというバイクの魅力を引き出した先にレーサーレプリカの時代が到来し、息を吹き返した。強まる規制の影響で1999年をもってその生産はレーサー以外ほぼなくなったが、未だ2ストロークの魅力に惹かれるライダーは多い。

そんな2スト愛好者から支持を集めたのがオリジナルコンプリートカスタム“TZR500V4”(TZR250[3MA]のフレームにRZV500Rエンジンを搭載。11台を製作し2000年に生産終了)やVFR400R[NC30]のシャシーにNS400RのV3エンジンをドッキングした“NC431V”(ホンダ400ccで3気筒+1本スイングアームからの命名)の製作、前後スイングアーム式の電動バイクZecOO(ジクー)生産で知られるオートスタッフ末広だ。

画像1: 車両メーカーと同等の認定用試験もクリアした完成車

この車両はそんな同店のひとつの“究極”作にして、TZR500V4やNC431Vにつながるモデルでもある。メイン部をスチールパイプ、スイングアームピボットをアルミとして構成したフレームは、同店・中村正樹さん(故人)がイチから製作したオリジナル。ハイブリッド化したのは、多彩なエンジンをそれぞれにてきしたディメンションで詰めるようにという考えから。

そしてあくまでも合法で車両を製作するという理念から国土交通省(当時運輸省)の認定を取るべく強度や剛性も吟味し、ブレーキングやコーナリング時に必要な接地感を得るディメンションも煮詰め、車両メーカー同様の多くのテストを個人で行い、組み立て車としての認証を得たのだ。1995(平成6)年のことだ。車両メーカー以外の認定車が誕生したのは、当時の日本では初めてだった。この国内初認可フレーム(中村さんはHPに「組立500」と紹介)に打刻されたフレーム番号が、「ASS-TY001」だった。

画像2: 車両メーカーと同等の認定用試験もクリアした完成車

中村さんは組立車の要件として後に加わるブレーキ試験も取得。高温や雨天も想定した膨大な試験内容があり、測定器も二輪用を試行錯誤しての上でだ。この時の経験から、測定器メーカーにフレーム応力計測器を作ってもらうなどもした。

ASS-TY001はいわゆるカスタム車と言うよりも、オートスタッフ末広という“メーカー”が手がけたコンプリートマシンだった。フレームはオリジナル。そこに組み合わさった足まわりパーツの多くはCBR900RRやGSX-R1100からの流用で、一部にはスクーター用パーツも使われている。それでも完成車に雑多なものを集めて作ったような違和感がないのは、長年純正流用カスタムを、それぞれのパーツの性質や性能も知った上で手がけてきた同店ならでは。そういった要素も含めてこのマシン、ASS-TY001は同店のノウハウが結集された成果だった。パーツのひとつひとつを知り、そのパーツが正しく動くためのベースを作る。カスタムマシンの目指すべき方向性が、この車両からは感じ取れるはずだ。

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オートスタッフ末広は'90年代以降のGP500レーサーを彷彿させるレプリカ外装も多く手がけてきたが、この車両ではワインディングを重視したライトウェイトスーパースポーツというイメージを追求した。燃料タンクやハーフカウル/シートカウルは同店ワンオフ品。メーターはヘッドライトとともにTRX850純正でハンドルはセパレートタイプ。フロントマスターシリンダーは純正流用、クラッチ側はRZV500Rのワイヤ式を使う。公道走行車両として保安部品もしっかりと機能させるような配置を採る。テールライトはホンダスクーターのDio用だ。

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独自に製作したフレームの右メインパイプ中央部には、“ASS-TY001”の型式認定と車体ナンバーの打刻を持つプレートが張られる。

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φ56.4×50mm、499ccの2ストV型4気筒エンジンとミクニVM26SSキャブレターはRZV500Rの純正だが、エアクリーナーボックス(写真ではカバーとともに外されている)はオートスタッフ末広のワンオフ品だ。あえてハイブリッド構造として搭載エンジンの可能性を広げつつ、車両の挙動に応じた正しい接地感のフィードバックにも配慮したレイアウトのアルミピボット+スチールパイプフレームの構造もよく分かる。

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φ45mmインナーチューブのフロントフォークは'92〜'99年型CBR900RR純正品。3.50-17/4.50-18サイズのホイールはGSX-R750用純正品。フロントキャリパーはブレンボ4ピストンでGSX-R750純正ディスクに組み合わされる。こうした純正パーツの組み合わせは同店の得意分野だ。

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リブ入りのアルミ角型スイングアームと4本の排気チャンバーもオートスタッフ末広オリジナルワンオフ品。リヤショックユニットにはZXR400純正品をチョイスした。

取材協力:オートスタッフ末広

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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