2年後に高輪ゲートウェイシティ(仮称)に導入予定の、“どこでも乗れて、どこでも降りられる”自動走行モビリティ。今回はそのプロトタイプモデル「iino type-S712」に試乗した。
レポート:スマートモビリティJP編集部
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2023年4月11日に公開されたものを一部編集し転載しています。
画像: ▶▶▶2023年4月にサイトオープン、次世代モビリティの情報は「スマモビ」で! smart-mobility.jp

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メーカーとモビリティの概要

「ゲキダンイイノ」は2017年に自動走行モビリティの企画構想を開始し、2020年に発足した大阪を拠点とする日本のスタートアップ企業だ。

今回の実証実験に使用されたのは、メーカーHPの製品ラインナップにまだ反映されていないプロトタイプモデル「iino type-S712」。

画像: 「iino type-S712」は3人乗りモビリティ。あえて木製にすることで、風景に馴染むデザインにしているそうだ。

「iino type-S712」は3人乗りモビリティ。あえて木製にすることで、風景に馴染むデザインにしているそうだ。

712という数字は、2023年4月に自動運転に関する条項が改正される道路交通法の規格の一つ、全幅70cm以下・全長120cm以下・全高120cm以下を満たした仕様であることに由来する。

乗車人数は最大3人で最高速度は5km/h。周囲にいる歩行者の状況に合わせて速度は変化し、降りる際はモビリティの端2箇所にある出っ張りのセンサー部分に手をかざして停止させる。

立ち乗り型モビリティという独自性

乗り込んでまず感じたのは、意外とスリリングだということ。一般的な自動走行モビリティは安全確保のため、座席に腰を下ろしてシートベルトを着用しないと走行が開始されない仕組みになっているが、このモビリティは乗り込んだらシートベルト等の安全装置を装着することなく出発する。

しかも進行方向に対して横向きに立つので新鮮な感覚を楽しむことができる。イメージとしては、自動で走行するキックボードに飛び乗った、そんな感じである。

画像: ハンドスピナーのようなユニークな形状をしている。端の出っ張りにセンサーがあり、降りる際はそこに手をかざして停車させる。

ハンドスピナーのようなユニークな形状をしている。端の出っ張りにセンサーがあり、降りる際はそこに手をかざして停車させる。

ただ、慣れてしまえば速度自体は最大5km/hであることもあり、春の海辺の風を浴びながら気持ちよく進んでいける。

また、立ち乗りなので自分の身長+モビリティの床面高と普段よりも高い目線から景色を楽しめる。これは、着席型のモビリティでは味わえない「iino type-S712」ならではの醍醐味と言えるだろう。

移動体験は思い出に残る絶好の宣伝ツール

また、今回の実証実験では、自動走行モビリティが歩行者と安全に共存できるかに加えて、利用者の観光行動の変化を促す移動体験を提供することを検証している。

つまり、単なる移動手段としての自動走行モビリティとしてだけでなく、周辺施設と連動したパッケージツアーのような観光体験を提供することで、行動範囲と消費行動を拡大させ、地域全体で経済を活性化させるツールとなることを目指しているのである。

今回のトライアルにおける“移動体験”は、肩掛けスピーカーによる音声案内で、アトレ竹芝の店舗情報や商品情報というCM要素に加え、竹芝という立地に合わせた「水辺空間の魅力」のコーナーがあった。

画像: 肩掛けスピーカーはソニー製。音質が良いため移動+エンタメ体験というのが斬新で面白かった。

肩掛けスピーカーはソニー製。音質が良いため移動+エンタメ体験というのが斬新で面白かった。

これはまるで、川下りで船頭に観光名所を説明してもらっているような感覚であり、スピーカーのBGMがヒーリング系でアナウンス音声もラジオDJであることも相まって、とても気分良く耳に情報が入ってくる。

要所要所で減速して景色についての解説が入るので、移動がライド型のアトラクションとして進化したような印象を受けた。ここにVR技術なども取り入れられれば、もはや目的地に移動する手段としてのモビリティから、そのモビリティに乗ること自体が観光の目的になる時代が来るかもしれない。

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