2023年3月2日、ヤマハ発動機株式会社はアルミニウム地金の調達先と「グリーンアルミニウム原材料の調達に関する契約」に合意。すでに先月より、2輪用アルミ部品の原材料として「グリーンアルミニウム」の採用を開始しており、順次その適用範囲を拡大していく・・・とのことです。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2023年3月2日に公開されたものを一部編集し転載しています。

「グリーンアルミニウム」と他のアルミの違い

そもそもグリーンアルミニウムとは、どんなアルミ合金なのでしょうか? 2015年パリ協定では温室効果ガス削減に向けて190か国超の国々が参加の意欲を示して、日本は「2030年までに2013年比26%」という大きな目標を掲げたのは周知のとおりです。

目標の実現のために、乗り物の動力源として電気や水素を活用しようという機運が高まって今に至るのも同様に周知の話ではありますが、日本政府が2020年に打ち出した「2050年カーボンニュートラル宣言」の理念を現実のものとするには、ICE(内燃機関)搭載車のテールパイプから出る排気の問題をどうにかするだけでクリアするのは難しいでしょう。

2050カーボンニュートラル実現のためには企業の経済活動全般から、温室効果ガスであるCO₂を減らしていく取り組みが重要になります。2輪メーカーとしては乗り物造りの原材料も、できるだけCO₂を排出しないで作っていくことが大事です。そしてその観点から生み出された原材料のひとつが、グリーンアルミニウムなのです。

簡単にいえばグリーンアルミニウムは、他のアルミニウムに比べると地球に優しいエコなアルミであり、アルミの生産に必須な大量の電力を太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーでまかなっている・・・というのがその定義になります。ちなみに再生可能エネルギー以外の電力で作られたアルミと、製品の品質には違いはありません。あくまで電力の由来の違い、というわけです。

画像: これからのヤマハ車の、グリーンアルミニウムの適用部品となるのは図示のとおりです。型を使って製造される鋳造材や、圧延加工で作られる展伸材の2種になります。 global.yamaha-motor.com

これからのヤマハ車の、グリーンアルミニウムの適用部品となるのは図示のとおりです。型を使って製造される鋳造材や、圧延加工で作られる展伸材の2種になります。

global.yamaha-motor.com

「グリーンアルミニウム」が採用されている身近なもの

ヤマハのグリーンアルミニウム採用は国内2輪業界初※とのことですが、グリーンアルミニウムは他の分野ではすでにプロダクトとしての普及が進んでおります。私たちの暮らしに身近で親しみがあるものをあげるとすると、アップル社のスマートフォンであるiPhoneやノートPCであるMacBookなどの製品は、数年前からグリーンアルミニウムをすでに採用しています。

※ヤマハ発動機調べ

画像: 2019年の16インチMacBook Proの生産から、アップル社は温室効果ガスを排出しないアルミ合金を、産業規模では初めて採用しました。それ以前よりアップル社は再生アルミニウム材や、水力発電により製錬されたアルミニウム材の使用に切り替えており、アルミニウムに関する炭素排出量は2015年以降70%近く減少しているとのことです。 www.apple.com

2019年の16インチMacBook Proの生産から、アップル社は温室効果ガスを排出しないアルミ合金を、産業規模では初めて採用しました。それ以前よりアップル社は再生アルミニウム材や、水力発電により製錬されたアルミニウム材の使用に切り替えており、アルミニウムに関する炭素排出量は2015年以降70%近く減少しているとのことです。

www.apple.com

ヤマハの説明では、2輪車は重量の約12〜31%(2022年、ヤマハ発動機調べ)をアルミ部品で構成しているとのことです。それらアルミ合金の何割かをグリーンアルミニウムに置き換えていくことは、原材料製造時のCO₂排出量に低減には効果大でしょう。

なおヤマハはすでに再生アルミニウム材の活用を積極的に進めており、その比率は約8割(2022年、国内外主要工場の原材料使用量より算出)にも達しているそうです!! グリーンアルミニウムは、それら再生アルミニウム材では置換できないアルミ製品として、採用されることになります。またグリーンアルミニウムのコストや供給量の観点から、まずは大型2輪量産車や競技用モデルの一部から採用が開始され、順次適用モデルと拡大していく計画とのことです。

ICEの排出ガスの問題を帳消しにするくらい、生産技術の向上により製品生産時のCO₂排出量が大幅に減少できる時代が到来すると嬉しいですけど、それは難しいでしょうね(苦笑)。もっとも、愛すべき2輪車たちが、地球に優しい生産方法で生み出されることは嬉しいことであり、歓迎すべきことに他なりません。今後のヤマハのカーボンニュートラルへの挑戦を、応援しましょう!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

This article is a sponsored article by
''.