文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年12月27日に公開されたものを転載しています。
ヤマハの電動スクーター「E01」の国内実証実験が行われました!
3月3日、欧州ヤマハ=ヤマハモーターヨーロッパ社長兼CEOのエリック・デ・セインヌは、同社の電動パーソナルモビリティの世界への参入・・・「Yamaha Motor Switches ON」を発表しました。そのヴィジョンとともに発表されたのが、ICE(内燃機関)50cc相当の「NEO'S」と同125cc相当の「E01」という2機種の電動スクーターなどでした。
NEO'Sのほうは欧州向け・・・ということで、とりあえず日本での展開はスタートしませんでしたが、E01については欧州、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア同様に、日本でも実証実験が7月から行われることになり、なんと25倍を超える応募が殺到して話題となりました!!
日本でのE01実証実験への反響の高さを受けて、ヤマハは2023年2月より「第2弾」の実証実験を行うことを決定しました(応募期間は11月18〜27日)。海外の2輪EVメーカーの多くが、じゃんじゃん市場へ製品投入している様に比べると、世界各国・各地域での実証実験をしっかりやってから製品投入・・・というヤマハの姿勢は、じれったくもありますが? 世界的大メーカーの責任感みたいなものを感じさせますね。製品版のE01が、フツーに購入できる日がくるのを、楽しみに待ちたいです!
北米のBRPの"Can-Am"ブランドが"電動"で復活!!
かつて1970年代から・・・傘下のCan-Am(カンナム)ブランドでオフロードバイクを中心に2輪車の製造販売を行っていたカナダのBRP(ボンバルディア・レクリエーション・プロダクツ)は、3月25日に新型2輪EVを開発して2024年半ばから2輪業界に復帰することを発表しました!
スノーモービルやPWC(パーソナルウォータークラフト)、そして近年では3輪のスパイダーなど、パワースポーツの分野でさまざまな製品を製造販売するBRPが、2輪業界にカムバックするニュースは世界を驚かせましたが、2019年2月にBRPはアメリカの2輪EVメーカーだったアルタ・モータースの持つ特許や資産の一部を取得しており、事情通? の間ではBRPの2輪業界再進出は、ある意味予想されていた流れでもありました。
そして8月には、オフロード向けの「Cam-Amオリジン」とオンロード向けの「Cam-Amパルス」という2輪EVの姿を公開しました。なおBRPはCam-Amブランド50周年を祝うのに間に合うよう、2023年8月に両機種の完全なスペックを公表する予定なので、来夏には両機種の実力を推測するに十分な情報をゲットすることができるでしょう!
国内の交換式バッテリー式サービス、Gachaco(ガチャコ)がついに始動!
2019年4月に、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの4社は国内の2EV普及を目的とした「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を創設しましたが、この「国内コンソーシアム(共同体)」にエネルギー業界大手のENEOSホールディングスが手を結ぶかたちで、交換式バッテリーのシェアリングサービス提供と、シェアリングサービスのためのインフラ整備を目的とする「株式会社Gachaco(ガチャコ)」が4月1日に設立されました!
そして10月25日からは、Gachacoの2輪EVを利用する事業者を対象とするバッテリーシェアリングサービスがいよいよ開始されました。Gachacoの使用バッテリーはホンダ製の「Honda Mobile Power Pack e:」であり、交換機もホンダ製「Honda Power Pack Exchanger e:」をベースにしたものです。
Honda Mobile Power Pack e:を使用できるホンダ製2輪EVは今のところ、法人リース向け製品だけなので、私たち市井のユーザーが気軽にGachacoのサービスを体験できるわけではないのです。しかし、秋の伊EICMA2022ではホンダが欧州で初めて販売する2輪EVでもある「EM1 e:」に、Honda Mobile Power Pack e:が搭載されることが明らかになりました。
もしも「EM1 e:」のようなモデルが国内で販売されれば・・・一般のユーザーもGachacoのサービスを存分に体験することが可能になります。2021年4月の三部敏宏社長の会見によると、ホンダは「2024年までにパーソナル領域で原付一種・原付二種クラスに3機種の電動2輪車を、さらにFUN領域でも商品を投入」する計画を立てているそうですので、「その日」が来るのはそんなに遠いことではないでしょう。
日本市場向けのガラパゴス商品化しちゃって久しい50ccの原付一種スクーターですが、国内第四次排ガス規制(2025年11月)に対応するのが難しいので125ccモデルを50cc並みの4kW程度の出力に抑えて原付一種とする・・・という提案が、11月に話題となったのは記憶に新しいですが、いっそ今後生み出される原付一種のスクーターはすべてGachaco対応の電動モデルにしちゃった方が、いろいろな意味でスッキリするような気がします(貿易障害という問題を解消する必要ありますが)。
ともあれ、この分野の先進国である台湾に遅れること7年、いよいよ日本でも本格的なバッテリーシェアリングサービスとしてスタートしたGachacoの今後の発展を期待したいですね。
トライアルの分野で、ICE搭載車と電動車の「ガチ勝負」が実現!
2輪のMotoEや4輪のフォーミュラEなど、近年は電動車を使ったモータースポーツがいろいろ発展中ですが、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が統括するトライアルの"世界選手権"、トライアルGPでは2022年シーズンからICE搭載車と電動車を、同じ舞台で競わせることをスタートさせました!
つまり2021年限りでFIMは電動車によって競われる「トライアルE」を発展的解消し、電動車のトライアルGP各クラスへの参戦を認めることにしたのです。このFIMの意欲的な取り組みに呼応したのは、電動トライアル車のトップブランドであるフランスのEM=エレクトリックモーションと、日本のヤマハでした。
残念ながら第5戦フランス・カオールのトライアル2にスポット参戦した、ヤマハTY-E 2.0に乗る黒山健一選手は2ラップ目第7セクションでマシントラブルが発生! 残りセクションをエスケープすることでなんとか完走し、減点88点で36台中31位という成績に終わりました。
一方、エースのG.シャタヌをフル参戦させたEMは、最高峰トライアルGPを目指す優秀な若手ライダーがしのぎを削る激戦区トライアル2で、見事年間10位の座をゲットしました。G.シャタヌは今年の5月には伝統のSSDT=スコティッシュ6日間トライアルにEMに参加し、総合19位で200ccクラス以下のベストパフォーマンス賞を受賞し、電動車の歴史に新たな1ページを書き加えました。
2023年のトライアルGP暫定カレンダーの、全7ラウンドのなかには4年ぶりの開催となる日本GP(5月20〜21日、モビリティリゾートもてぎ)もしっかり記されています。久々の日本GP開催自体が楽しみなのは言うまでもありませんが、EMやヤマハなどの電動車の走りっぷりも、ぜひとも観戦したいコンテンツです。静かながらも激しく熱い戦いを期待しましょう!
排ガス規制の影響により、ホンダCB400SFも廃盤になりました
4月28日、ホンダは「令和2年排出ガス規制」の適用により6機種の生産を終了(2022年10月まで)することを発表しました。その6機種のなかでも、1992年以来のロングセラーであるネイキッドモデル、CB400 SUPER FOUR/SUPER BOL D’ORの廃盤は、大きな話題となり注目されました。
日本で施行されている最新の環境規制は「令和2年排出ガス規制」であり、2019(令和元)年10月3日に交付・施行されました。2020年からの2輪EURO5と同等の令和2年規制は、新型車には2020年12月から、継続生産車には2022年11月から(原付一種のみ2025年11月より)適用されています。
4輪EURO(EU圏内共通排気ガス規制)に遅れること7年、1999年にまず最初の「EURO1」からスタートした2輪EUROですが、国内の2輪車の排ガス規制は現在、2輪EUROに歩調を合わせるようになっています。2輪EURO5に続く2輪EURO6の内容はまだ決まっていませんが、2輪EURO規制が先行する4輪EURO規制の後追いをしてきた歴史を見る限り、PN規制(パーティキュレート・ナンバー、PM粒子数の規制)などが入ると予想されています。
ただし2輪EURO6の内容が決まるには、まだまだ時間があると思われます。2輪EURO5の次の制限としては、OBD-II(自己診断機能)排ガス監視を導入した2輪EURO5+(2024年以降の新型車と、2025年以降の継続生産車が対象)が予定されています。2輪EURO6が策定されるのは2020年代の最後のころになるかもしれません。
4輪EURO7は、2035年に欧州ですべてのICE車が禁止される前の、最後の規制になると言われています。果たして2輪EURO6はどうなるか・・・? ちなみにEUを離脱した英国では2030年までにL1カテゴリーなどの軽量車を、そして2035年までにすべての2輪車を、ゼロエミッション化する案を政府が検討しています(なおその案では、e-フューエルや水素エンジンは、NOx=窒素酸化物を出すのでゼロエミッションと認めていません)。
2030〜2035年ころには、2輪EURO6対応モデルが巷を走り回ることになるのでしょうが、規制対策のコストアップやインフレにより、ICE搭載新型車の価格が今の水準よりかなり高くなっているかもしれません。
来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、そんな先の話をしていると閻魔様に爆笑されてしまうでしょうね(苦笑)。ともあれ規制強化にめげることなく、今後もメーカー各社には頑張っていただき、魅力あるICE搭載車を開発していただきたいです・・・。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)