現在は2ストロークモデルを楽しむのは難しい時代だが、バイクの歴史を振り返るとその存在はとても大きい。輝かしい歴史を持つヤマハ製2ストロークにスポットを当ててみよう。この記事では、「YDS-1」を紹介する。

ヤマハが求めたのはレースで勝てる市販車

画像: YAMAHA YDS-1 1959 総排気量:246cc エンジン形式:空冷2スト・ピストンバルブ並列2気筒 車両重量:138kg

YAMAHA YDS-1 1959
総排気量:246cc
エンジン形式:空冷2スト・ピストンバルブ並列2気筒
車両重量:138kg

スポーツと言ってもただのスポーティモデルではない。何しろレースに出場して勝てる市販車を作るという意気込みがそのまま企画となった車両。即ち、レーサーレプリカそのものだったということだったのだ。そのルーツは1957年に開催された浅間火山レースに参戦。ウルトラライト級の表彰台を独占した伝説のレーサー、YDレーサーにまで遡る。

このYDレーサーに市販車としての性能を与え、さらにキットパーツを装着すればロードレーサーにも、スクランブラーにも変身し、上位を狙うのに十分な戦闘力も備えたモデルとしてYDS-1は登場したのである。

YDS-1の割り切りは後のバイクブーム真っ只中のレーサーレプリカよりも激しいものだったかもしれない。エアクリーナーのカバー、バッテリーカバーすら装着されず、64点にも及ぶエンジン、車体回りのキットパーツが用意され、モータースポーツユーザーを支えていったことからも、YDS-1に対しヤマハがどれほどのエネルギーを注いでいたのかが、よく分かるだろう。その甲斐あって、YDS-1がデビューした翌1960年の第3回全日本クラブマンレースでは、これらのキットパーツを装着したYDS-1が優勝を飾った。

戦闘力の高さが印象深いYDS-1だが、ツーリングマシンとしての素性も非常に高く、ゼロリターンが可能なトリップメーター、視認性の高いメーターレイアウト、スポーティで余裕のあるエンジンとハンドリングは、公道でスポーツを楽しむ一般ユーザーにも大いに受け入れられるものだった。

画像: 空冷2スト・ピストンバルブ2気筒エンジンは、56×50mmのショートストロークを採用。トランスミッションは5速と当時は例のないものだった。

空冷2スト・ピストンバルブ2気筒エンジンは、56×50mmのショートストロークを採用。トランスミッションは5速と当時は例のないものだった。

画像: 黒いタンクが当たり前のような時代に、2色に塗り分けられたカラフルなタンクを採用。この時代から「ヤマハは美しい」をデザインで表現していた。

黒いタンクが当たり前のような時代に、2色に塗り分けられたカラフルなタンクを採用。この時代から「ヤマハは美しい」をデザインで表現していた。

ヤマハ「YDS-1」主なスペック

全長×全幅×全高1990×615×925mm
ホイールベース1285mm
車両重量138kg(乾燥)
エンジン形式空冷2スト・ピストンバルブ並列2気筒
総排気量246cc
ボア×ストローク56.0×50.0mm
圧縮比8.0
最高出力14.7kW(20.0PS)/7500rpm
最大トルク18.6N・m(1.9kgf・m)/6000rpm
燃料供給方式キャブレター(VM20)
燃料タンク容量15.5L
変速機形式常噛5速リターン
タイヤサイズ(前・後)3.00-18・3.00-18
ブレーキ形式(前・後)ドラム・ドラム
当時価格18万5000円
画像: 【動画】2020 歴車両走行会 YDS-1 www.youtube.com

【動画】2020 歴車両走行会 YDS-1

www.youtube.com
画像: 【動画】EXHAUST SOUNDS "YDS-1" 1959 www.youtube.com

【動画】EXHAUST SOUNDS "YDS-1" 1959

www.youtube.com

※この記事は月刊『オートバイ』2021年9月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:濱矢文夫、深澤誠人、宮崎健太郎/写真:小平寛、関野温、盛長幸夫、山口真利

This article is a sponsored article by
''.